今回は「銀の供給国・地域」に注目
今回は、貴金属の一つ「銀」について、供給国・地域に注目します。
銀は金(ゴールド)のように宝飾品やコイン(お金)として、古くから世界中で使われてきました。時には投機の対象になり市場が混乱するなど、値動きの面でも話題を振りまく銘柄です。
「メダルラッシュに沸く冬季オリンピックをコモディティの視点で眺めると…」で書いたとおり、オリンピックの各種メダルにも銀が用いられています。銀メダルは銀製、金メダルは銀製のメダルに金のメッキを施したものです(平昌オリンピックの金メダル1個586グラム中、金はおよそ6グラム、銀はおよそ580グラムでした)。
さまざまなところで活躍する銀ですが、どこで、どのように生産されているのでしょうか? 鉱山生産、スクラップからの供給、その他の3つのカテゴリに分けて確認したいと思います。
銀の供給は3つのカテゴリに分かれています。その割合は以下のとおり、「鉱山生産」「スクラップ」「その他」となっています。
図:世界の銀供給の内訳(2017年)
2017年時点で、世界の銀供給の8割以上は鉱山生産です。また、以下は3つのカテゴリの2008年以降の推移です。
図:世界の銀供給の推移 単位:トン
「その他」カテゴリには、各国の政府が放出した銀や、鉱山会社のヘッジ外しによる供給が含まれています。鉱山会社のヘッジ外しについては「コモディティ☆クイズ【18】「金(ゴールド)の供給国・地域(地図付)」に挑戦してみよう!」の、「鉱山生産とスクラップからの供給」をご覧ください。
銀供給の合計はこのおよそ10年間、30,000トン前後でほぼ横ばいです。鉱山生産からの供給は2015年を機に頭打ち感が出始めています。スクラップは2012年から微減が続いています。鉱山生産とスクラップからの供給の減少が本格化すれば、銀の需給バランスは供給不足に陥りやすくなるとみられます。
それでは、以下より、銀の供給について、国・地域別のランキングをクイズ形式で確認していきたいと思います。
銀供給クイズ☆全2問
銀の市場環境を知る上で、2大供給元である「鉱山生産」「スクラップ」の2つのカテゴリについて、供給元の関連国・地域を把握しておくことが重要です。国旗や地図上の位置、マスの大きさ(国名の文字数)をヒントに、各問の上位3カ国・地域を考えてみましょう。
問1:「鉱山生産」 供給国、(2017年)上位3位は?
問2:「スクラップ」供給国、(2017年)上位3位は?
銀供給クイズ☆解答と解説
答え1:「鉱山生産」 (2017年)供給国、上位3位の正解は…
[解説]
1位:メキシコ(23.0%)
2位:ペルー(17.3%)
3位:中国(13.2%)
でした。
地域別にすると、中南米が31.9%、北米(メキシコ、米国、カナダ)が28.5%、アジアが20.9%、欧州(ロシア含む)が12.6%、オセアニアが4.5%、アフリカが1.8%となります。
ランキング10位以内に、北米諸国が2カ国、中南米諸国が4カ国入っています。国別に見てみると、プラチナやパラジウムのように生産国が極端に偏っているわけではありませんが、地域別にみてみると、中南米・北米に生産国が偏っているといえます。広義のアメリカ大陸(北中南米)のシェアは60%を超えています。
また、以下は2008年と2017年の各国の鉱山生産量の変化です。
図:銀の鉱山生産量の増減(2008年と2017年を比較) 単位:トン
2008年から2017年にかけて、メキシコの鉱山生産量が大きく増加しています。この間のメキシコの鉱山生産量の増加幅は+2,872トンですが、これは、3,236トン(2008年)から6,108(2017年)に増加したことの結果です。
メキシコの鉱山生産量は2008年のから2017年にかけて2倍以上になったことが分かります。
メキシコにおける銀生産の歴史は古く、大航海時代、航海技術が目まぐるしく進みヨーロッパ列強がアメリカ大陸に進出した際、スペインがメキシコで大規模な銀鉱山を発見し、開発が進みました。
メキシコで生産された銀は、香辛料等を求めて拡大したアジア諸国との貿易における決済手段として「メキシコ銀」と呼ばれる銀貨となり、流通しました。近代以降もメキシコにおいては、銀は外貨を獲得するための重要な品目です。
また、地理的にメキシコに比較的近く、銅やレアメタルなどの鉱業が盛んな中南米地区でも、多くの銀が生産されています。近年、メキシコとペルーの生産量は逆転する動きが見られます。
図:メキシコとペルーの銀の鉱山生産量の推移 単位:トン
このような、主要生産国での動向の変化は、鉱山生産量全体を増減させる重要な要素といえます。
答え2:「スクラップ」 (2017年)供給国、上位3位の正解は…
[解説]
1位:米国(24.0%)
2位:日本(11.3%)
3位:ドイツ(11.2%)
戦後の世界経済をけん引した欧米・アジア諸国が名を連ねています。
銀は「メダルラッシュに沸く冬季オリンピックをコモディティの視点で眺めると…」で述べたとおり、産業用金属としてさまざまな場面で用いられています。使用例としては、電気機器・電子部品、太陽電池関連機器、ろう材・はんだ、写真のフィルムなどです。特にデジタルカメラが普及する前までは、銀は写真のフィルムに用いられる重要な貴金属でした。
過去の経済発展で大量に発生した銀の消費が、現在はスクラップからの供給として跳ね返ってきていると考えられます。
また、国・地域別の供給量の変化は以下のとおりです。
図:銀のスクラップからの供給量の増減(2008年と2017年を比較) 単位:トン
供給全体でみれば先述の「世界の銀供給の内訳」のとおりスクラップからの供給13.9%であり、かつ近年は微減となっています。今のところスクラップからの供給が銀全体の供給量を大きく増減させる要因にはなりにくいと考えられます。
銀の鉱山生産量において近年、主要国のランキングに変化が生じていることが分かります。このような変化が後に鉱山生産量、銀全体の供給量、引いては銀の需給バランス(総供給-総消費)を変化させ、銀価格の動向に影響を与える材料になる可能性があります。
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