インド株式の優勢が示す「高成長期待」

 今週の内外株式は、米中貿易戦争やNAFTA(北米自由貿易協定)を巡る不安に新興国市場の軟調が加わり、上値の重い動きとなっています。

 今回はインド株式の相対的な堅調と、インドで事業拡大に取り組む日本の関連銘柄に注目したいと思います。

 図表1は、インド株式(SENSEX指数)、日本株式(TOPIX)、中国株式(上海総合指数)の推移について2016年初を起点として比較したものです。

 SENSEX指数は8月も史上最高値を更新し、年初来では+11.8%、1年前比で+20.3%と堅調です(9月6日)。「チャイナリスク」を巡る不安と中国株安を受け、グローバル投資家がアジア地域の投資配分を見直すなか、インド株式へのエクスポージャー(配分)を増やしてきたとみられます。

 インド市場も、8月の「トルコショック」に端を発する新興国市場の波乱からの影響を免れませんでしたが、インドの成長エンジンが内需(個人消費や投資)中心で米国が仕掛ける貿易戦争や中国の景気減速から受ける影響が他市場と比較して小さく、モディ政権下の構造改革が徐々に進んでいるとみられています。

 実際、インドの実質成長率(4-6月期実質GDPの前年同期比)は8%台に高まっており、先進国の成長率はもちろん他の主要新興国の成長率を大きく凌いでいることが確認されています。

図表1:インド株式の優勢が鮮明に

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年9月6日)

 

インドの成長率が高まっている理由

 図表2でみるとおり、インド政府が8月31日に発表した2018年4-6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比+8.2%と高い成長を記録しました。事前の市場予想平均(+7.6%)や前期(1-3月期)の成長率実績(+7.7%)を上回り、「アジアの成長を牽引する国はインド」との印象をあらためて内外の投資家や経済界に与えました。

 インドの実質成長率が8%台となるのは約2年ぶりで、中国の最近の実質成長率(+6.7%)を上回っています。また、成長のけん引役が、個人消費、投資、農業など「内需」が中心であることが注目されています。

 モディ政権下の構造改革がもたらした「痛み」で、成長率は2016年から2017年にかけて一時的に鈍化しましたが、「幅広い分野で回復しており、国内需要と投資が復調していることがはっきりした」(インド商工会議所連盟)とみられています。

図表2:インドの実質成長率が中国を上回った

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2018年6月まで)

 そもそも、インド経済の長期的な成長エンジンは、「人口動態(総人口の増勢)」と言われています。総人口(約13.4億人)は中国に次ぐ世界第2位ですが、合計特殊出生率は約2.5 人と高く、15 歳以上65 歳未満の労働(生産年齢)人口は2040 年まで増加し続ける見通しです。

 図表3は、国連の人口調査・予想をベースに、各国別の総人口の実績と予想を比較したものです。日本の総人口が減少傾向を辿っている一方、インドの総人口は2025年前後に中国の総人口を上回っていくと予想されています。今後も内需拡大が見込める背景です。

 長期的な投資戦略を考えるにあたっては、日本だけでなく高い成長が見込めるインド株式や「インドで事業を拡大している企業」に投資することも検討したいと思います。

図表3:インドの総人口は中国をしのぐ見通し

出所:国連の調査・予想より楽天証券経済研究所作成

 

インドでビジネス拡大を目指す関連銘柄に注目

 総人口が増加していることに加え、インドでは1人当たりGDPも増加傾向にあり、内需(インフラ、自動車・家電などの耐久消費財、食料・日用品などの消費財やサービス需要)が拡大しています。

 7月時点のIMF(国際通貨基金)の経済見通しによると、インドの実質成長率は2017年に+6.7%、2018年は+7.3%、2019年は+7.5%と成長ペースが高まっていくと予想されています。中国の成長率が2017年の+6.9%、2018年は+6.6%、2019年は+6.4%と減速が見込まれている状況と比較し、インドの成長率加速が注目されています。

 こうした成長期待は、直接投資(企業進出)や間接投資(証券投資)の面で投資魅力を高めやすいと考えられます。総人口と1人当たり所得の増勢に伴う内需拡大に加え、インドは英語ができるビジネスマンや技術者が多く、政治は「自由民主主義」、経済が「資本主義」であることが海外企業にとっては、進出する魅力とされます。

 とはいえ、複雑な税制や「内向き」と呼ばれる構造問題を抱え、海外企業が進出しにくい参入障壁が存在していました。

 2014年に誕生したモディ政権は、海外からの投資を促す「モディノミクス」と呼ばれる規制緩和や税制改革を実施。構造改革が徐々に進展しています。日本企業を含む多くの海外企業がインドに進出し、ビジネス機会を拡大させています。インドでのビジネス拡大を収益に取り込もうとする「インド関連銘柄」への投資も検討する価値があると考えています(図表4)。

図表4:注目したいインド関連銘柄

注:上記は参考情報であり、特定の銘柄を推奨するものではありません
注:予想PERはBloomberg集計による市場予想平均に基づく
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(9月6日)

 

 

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