底流する論争「過去の常識」vs「現在の常識」

「過去の常識」は、比較的変動要因を把握しやすかった時代に生まれたと考えるのが妥当でしょう。こうした時代は、変動要因(原因)と価格変動(結果)の関係が非常にシンプルだったため、変動要因を点で見ても、比較的、値動きを把握することが可能でした。

「現在の常識」は、少し複雑な上、体系的な分析が必要で、状況を俯瞰(ふかん)的に見ることや、経済学と社会学(人に関わる分野を網羅する学問)によるアプローチが必要です。実は、「過去の常識」だけで分析できなくなっているのは、コモディティ市場だけではないと、筆者は感じています。株式も通貨も、金利も不動産も、暗号資産も、です。

「現在の常識」を深く理解する方法

「現在の常識」を深く理解するためには、「過去の常識」をある程度、否定することが有効だと考えます。

図:「現在の常識」と理解の深め方

出所:筆者作成

 現在の市場を正しく分析するためには、「材料の俯瞰(ふかん)と影響力の足し引き」は欠かせません(後編で詳細を述べます)。そしてそれを求めるためには、「過去の常識」をある程度否定し、「現在の常識」への理解を深めることが欠かせません。

「過去の常識」の特徴であった、「物事を点でみる」を、「俯瞰(ふかん)する」に、「五感で感じられる(具体)」を「抽象度を高める」などに置き換えることで、「現在の常識」への理解を深めることができるでしょう。

 後編の次回は、今回述べた「材料を俯瞰(ふかん)すること」や、「抽象度を高めること」が具体的にどのようなことなのかを示した上で、金(ゴールド)と原油の「材料の足し引き」の事例を挙げ、2つの「素朴な問い」に回答し、最後に、金(ゴールド)と原油市場のテーマと今後の見通しについて述べます。