昨年、鉄鋼株に強気判断のレポートを最初に書いたのは4月25日でした。以後、8回にわたり「鉄鋼株に強気」の意見を、本欄でお伝えしてきました。その後、株価は上昇しましたが、なお割安で、さらなる上昇が見込めると判断しています。

これまでは、JFE HLDG(5411)が最も魅力的と判断していましたが、現時点では株価の出遅れ感が大きい、新日鐵住金(5401)の相対的魅力が高まっていると考えています。

(1)新日鐵住金(5401)の株価上昇率がもっとも低い

投資参考銘柄として挙げてきた大手鉄鋼株5社の、昨年4月25日以降の株価上昇率

(金額単位:円)

77.1% 903.0 510.0 東京製鐵 5423
5413 日新製鋼 1,102.0 1,643.0 49.1%
5411 JFE HLDG 1,913.0 3,037.5 58.8%
5406 神戸製鋼所 130.0 236.0 81.5%
5401 新日鐵住金 270.0 320.6 18.7%
コード 銘柄名 ①株価:昨年4月25日 ②株価:2月26日 株価上昇率①→②
 

今来期と業績の大幅な改善が見込まれることが、鉄鋼各社の株価上昇につながりました。私は昨年、企業取材は、鉄鋼セクターを特に重点的に行いました。今期に続き来期も、鉄鋼セクターの業績拡大が続く確度が高いと考えています。

詳しくは、2015年2月3日の「3分でわかる!今日の投資戦略:鉄鋼株に強気判断を継続」をご参照ください。

(2)新日鐵住金(5401)の株価上昇率が低い理由

メタル・スプレッド(原料価格と製品価格のスプレッド)拡大が鉄鋼各社の業績拡大に貢献しました。昨年は、原油だけでなく、鉄鋼石・石炭など、資源価格は軒並み大きく下がりました。原料が下がると同時に製品価格が下がる産業は、原料安メリットを受けられません。鉄鋼は、円安のおかげで安値品が海外から入りにくくなっているために、製品価格の値もちがよく、メタル・スプレッド拡大を、鉄鋼各社はそろって受けています。

それでは、その中で、新日鐵住金(5401)の株価上昇率が低いのは、なぜでしょう。シェールガス・オイルや原油開発に使用されるシームレス鋼管事業を抱えることが、今期の業績拡大を抑える要因となったことが嫌気されました。10-12月決算発表時に、今期経常利益(会社予想)を4,000億円から4,100億円に増額しましたが、純利益(会社予想)は2,500億円から1,800億円に減額しました。ブラジルのシームレスパイプの関連会社減損損失686億円を計上したからです。

ただし、シームレス鋼管事業の不振は、既に株価に織り込み済みと考えられます。自動車鋼板など鉄鋼事業全体での利益拡大が大きいので、来期の増益率は高くなると判断しています。鉄鋼セクターの中で株価が出遅れており、投資魅力は大きいと考えます。

JFE HLDG(5411)は、鋼管売上は連結売上高の5%程度しかないと推定されます。油井管の売上比率はさらに低く、原油開発減少の逆風はあまり受けないと考えられます。それが、新日鐵住金(5401)よりも、株価のパフォーマンスが良かった理由です。

(参考)鉄鋼セクターについて書いた過去のレポート

2014年4月25日 大手鉄鋼株は割安 買い場が近いと判断
2014年6月3日 鉄鋼株に強気の投資判断を継続
2014年6月5日 鉄鋼株の買いタイミング到来
2014年7月23日 鉄鋼株に引き続き強気
2014年10月29日 JFEはポジティブ・サプライズ、鉄鋼株に強気確認
2014年11月7日 日経平均は波乱含み 鉄鋼株の押し目狙い
2014年12月4日 鉄鋼株に強気継続
2015年2月3日 鉄鋼株に強気判断を継続