世界株式復調の中でナスダックの強さが目立つ

 10月下旬以降に米長期金利がピークアウトを見せたことを契機に11月の世界株式は復調に転じました。

 図表1の一覧では、世界株式(MSCIワールド)の11月初来騰落率が+7.5%であることが分かります。米国市場ではS&P500種指数の11月初来騰落率は+7.4%、ナスダック総合指数が同+9.7%と世界株式をリードしています(15日)。

 中でも、ナスダックやS&P500で時価総額ウエートが高いGAFAM(米テック大手5社)は第3Q(7-9月期)決算発表でそろって増益を確保し株価も堅調です。クラウドコンピューティングなどのIT需要拡大に加え、ネット広告収入の回復、EC(電子商取引)の拡大、昨年来の人員削減を中心とするコスト低減などが寄与しました。

 売上高が前年同期比で減収を余儀なくされたアップルを除く4社が「増収増益」となりました。

 今後はIT需要の起爆剤として期待されている生成AI(人工知能)の収益化が注目されています。14日に発表された10月の米CPI(消費者物価指数)、15日に発表された10月の米PPI(生産者物価指数)の伸びはともに市場予想を下回り、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の追加利上げ観測は後退。

 長期金利(10年国債利回り)が4.5%前後に低下したことを手掛かりに、株式買いが先行しました。警戒されていた「つなぎ予算」の期限(17日)に向け、14日に新たなつなぎ予算案が議会下院で可決され、政府機関閉鎖が回避される見通しとなったことも市場参加者の安ど感につながりました。その後、15日に上院でも予算案は可決されました。

<図表1>11月の世界株式は復調スタート

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年11月15日)

ナスダック100指数の年初来リターンは+44.6%に向上

 10月下旬から米長期金利が落ち着きを見せて以降、ナスダック相場の反発が米国株式の復調をけん引しています。中でもナスダック100指数は、年初来高値をつけた7月18日から10月26日までの下げ幅の98.6%を埋め戻しました(年初来上昇率は+44.6%)。

 ナスダック100指数は、時価総額加重平均指数(金融を除くナスダック上場100社で構成される)で、時価総額が大きいビッグテック銘柄の値動から大きな影響を受けます。

 図表2は、ナスダック100指数を構成する時価総額上位10社の年初来騰落率を比較したものです。

 特にGAFAM(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ)にエヌビディアとテスラを加えたビッグテック銘柄は「The Magnificent Seven」(壮大な7銘柄)と呼ばれ、各銘柄の年初来上昇率はS&P500はもちろんナスダック100指数の年初来上昇率を上回っています。

 これらビッグテック銘柄の株価が堅調である背景としては、AIの進歩を中心とするイノベーション(技術革新)のエンジン役を担うプラットフォーマーとしての役割が期待されていることや、財務基盤やキャッシュフローが盤石で金利上昇への耐性が見込まれていることが挙げられます。

 こうした中、前週と今週はマイクロソフトの株価が上場来高値を更新したことが注目されました。同社のAIへの積極的な取り組みや第3Q(2023年7-9月期)決算発表で明らかとなったクラウド事業の好調が評価されています。市場では早くも「近い将来マイクロソフトの時価総額が(現在1位の)アップルを抜く可能性がある」との見方も浮上しています。

 今週はエヌビディアも上場来高値を更新しました。ナスダック100指数は2024年以降の利益成長を織り込みながら優勢を続けると見込んでいます。

<図表2>ナスダックの復調をけん引するビッグテック銘柄

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年11月15日)

ナスダック100連動型ETFのリターンは日経平均をしのぐ

 今年の東京株式市場では、日経平均株価(225種)が7月3日に33年ぶりの高値を付けて日本株の復調を印象付けました。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が4月に来日したのを契機に高まった日本株の割安感、物価上昇に伴うデフレ脱却期待、東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正要請を受けた経営改革期待、業績の増益基調などが株高要因となりました。

 一方、東証に上場されている米ナスダック100指数に連動を目指す円建てETF(上場投信/東証コード:1545)の取引価格も堅調に推移しています。1545の取引価格は前週と今週に過去最高値を更新しました。こうした中、1545の長期パフォーマンスが日経平均を大きくしのいできた趨勢(すうせい)に注目したいと思います(図表3)。

 約10年前(2013年初)を起点とすると、日経平均は約3.2倍となってきましたが、1545は同期間に約10.6倍となってきたことが分かります。このナスダック100指数連動型ETFは、原則として為替ヘッジをしないインデックスファンドであることで、ナスダック100指数の相対的堅調に加え、ドル高・円安がもたらす「為替差益」も好パフォーマンスに寄与してきました。

 米国市場では、ビッグテック銘柄を中心にナスダック相場が復調を取り戻し、為替のドル/円相場は円安傾向を維持しています。今年に限って比較しても1545の年初来上昇率は約64.6%に達し、日経平均の年初来上昇率(+28.5%)の約2.3倍となっています(15日)。

 なお、1545は新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠対象商品です。世界のイノベーションや米国株式をリードするナスダック相場の堅調を資産形成に取り込んでいく国際分散投資に活用したいと思います。

<図表3>ナスダック100連動型ETFの長期リターンは日経平均をしのいできた

*上記ETFは新NISAの成長投資枠対象商品です。
(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2013年初~2023年11月15日)

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