日米金利差に反応して、円高・円安に大きくふれるドル/円
ドル/円為替レートが激しく乱高下しています。昨年10月21日(日本時間)に一時1ドル151円台をつけたところから円高に反転し、1月13日には一時1ドル127円台をつけました。ところが、円安に反転し、6月20日には一時142円台をつけています。
なぜ、このように乱高下するのでしょう?
<ドル/円為替レートと、米2年・10年金利の動き:2022年7月1日~2023年6月20日>
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ドル/円を動かす最大の要因は、ドル金利です。
【1】ドル金利が上がる時、ドルが買われ円安(ドル高)になりました。
【2】ドル金利が下がる時、ドルが売られて円高(ドル安)になりました。
厳密に言うと、ドル/円を動かす最大の要因は、日米金利差です。日本の金利がこれまでほぼゼロ近辺に固定されていたので、ドル金利がほぼ日米金利差でした。
ところが、最近、ほんの少しだけ日本の10年金利が上昇しています。昨年までゼロ近辺に固定されていたのが、最近は0.5%まで上昇しています。円金利の動きも、少しずつドル/円為替レートに影響を及ぼすようになりました。
【3】円金利が上がる時、円が買われ、円高(ドル安)になる傾向があります。
【4】円金利が下がる時、円が売られ、円安(ドル高)になる傾向があります。
ドル/円を動かす要因は、たくさんあってわかりにくいですが、金利に注目すればシンプルです。日米金利差が開く時は、円安(ドル高)。日米金利差が縮小する時は、円高(ドル安)と考えていれば、だいたいその通りに動いています。
もちろん、ドル/円が、それ以外の要因で動くこともあります。短期的に金利差と異なる方向に動くこともあります。それでも、長期の目線で見れば、金利差が為替の動きの背景にあることがわかります。
日米2年金利差がドル/円の長期変動を決める最重要ファクター
ドル/円為替の長期的な動きは、ほとんど日米金利差で説明できます。もっともよく動きを説明できるのは、2年金利差です。2年金利差というのは、米国と日本の2年国債利回りの差です。以下でわかる通り、日本の金利は長年ほぼゼロ近辺に固定されていたので、米国金利が、ほぼそのまま日米金利差でした。
<米国・日本の2年金利、および2年金利差の推移:2008年1月~2023年6月(20日)>
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ドル/円為替レートの長期の動きをもっともよく説明できるのは、日米の2年金利差です。
<ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2023年3月(13日)>
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2008年以降の動きを見ると、おおむね日米2年金利差と、ドル/円は連動していることがわかります。
大きなトレンドがわかるように、上のグラフに赤矢印と筆者説明を加えたのが以下のチャートです。
<再掲:ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2023年6月(20日)>
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【1】2008~2012年
日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。
【2】2013~2014年
日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安(ドル高)が進みました。2年金利の差では説明できないほどの円安でした。日本銀行が異次元緩和を実施する中、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めに動いていたことが、急な円安を招きました。今と似た環境です。今も、FRBが急激な利上げを進める中、日銀は頑として緩和維持を表明しています。
【3】2015~2018年
日米金利差が拡大する中で、円高が進みました。2013~2014年の行き過ぎた円安に修正が起こったと見ることができます。2016年に、米大統領選キャンペーンで共和党候補だったドナルド・トランプ氏(前大統領)と民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことも円高材料となりました。
トランプ前大統領が当選した後も、日本の対米黒字を問題視し続けたため、円高圧力が続きました。
【4】2019~2020年
日米金利差が縮小するにしたがって、円高が進みました。
【5】2021~2022年
日米金利差が拡大するにしたがって、急激な円安が進みました。
【6】2023年
2022年末より、円高が進んでいます。米金利上昇が終盤に入っていると見られていること、日本の金利にも上昇圧力が働いていることが、影響しています。
ただし、6月からまた円安が進み、20日には一時1ドル142円台をつけました。FRBがさらなる利上げもあり得ると示唆していること、日銀が大規模緩和を続ける意向を示していることが、ドル高(円安)圧力として働いています。
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