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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
バフェット効果で日本株に見直し買い。5月は米利上げ無し?

米景気不安あっても日本株は堅調

 先週(4月10~14日)の日経平均株価は、週末14日(金)の終値は2万8,493円となりました。前週末終値(2万7,518円)と比較すると、1,000円近く値を伸ばしています。米景気への不安で米国株の上値が重い中、日経平均の強さが目立ちました。

日経平均とナスダック総合指数の動き比較:2021年末~2023年4月14日

出所:2021年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 米景気悪化の不安、米利上げが続く不安から米国株の上値が重くなっていますが、日本の経済環境は、米国とは異なります。

 日本はインフレが米国ほど深刻でないこと、日本は大規模金融緩和が続いていること、リオープン(経済再開)による消費回復が期待できることから、外国人投資家が相対的に日本株を選好する可能性があります。

 先週は米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が来日し、日本株に強気で日本株を買い増しする方針を語ったことも、日本株に追い風になりました。バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイを通じて、日本の五大商社株の、発行済み株式の7%を買っていることがわかっており、さらなる買いに期待が高まりました。

3月FOMC議事要旨公開、5月利上げはなし?

 0.25%の利上げを決めた3月21~22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が、4月12日に公開されました。0.25%の利上げを決めたものの、シリコンバレー銀行・シグネチャー銀行破綻から始まる銀行不安を受けて、FOMCメンバーのうちの一部が利上げ停止を検討したと記述されています。

 また、銀行不安が経済に与える影響を踏まえ、年内に緩やかな景気後退が始まることを懸念する声もありました。この議事要旨を受けて、5月2~3日のFOMCは「利上げなし」と予想する見方も出ています。

 ただし、タカ派スタンスを変えていないFOMCメンバーも多いことから、5月3日にはさらに0.25%の利上げがあるとの見方もあります。5月3日に0.25%利上げして、それで利上げは終了という見方も増えています。

 金融市場では、2年・10年金利が低下し始めていて、2年金利とFF金利の逆転も起こっており、利上げが最終局面であることを、織り込みつつあります。

米長短金利(10年・2年・FF金利)推移:2021年1月4日~2023年4月14日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

議論分かれる3月CPIの見方

 米労働省が12日に発表した、3月の米CPI(消費者物価指数)は見方が分かれます。3月の総合インフレ率(CPI総合指数の前年同月比上昇率)は5.0%へ低下しました。2月時点の6%から一気に1.0ポイントも低下しました。これで、米インフレ沈静化がはっきりしてきたとの見方が出ました。

米インフレ率(CPI総合・コア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2023年3月

出所:米労働省より作成

 ただし、中身を見ると、さほど評価できるものではないという見方もあります。総合インフレ率は5.0%まで低下しましたが、コア・インフレ率(CPIコア指数の前年同月比上昇率)は5.6%と高止まっているからです。

 総合インフレ率が大きく低下したのは、ちょうど1年前の2022年4月にエネルギー価格が大きく上昇した反動にすぎません。エネルギー要因を除くと、米国内にしぶとくインフレ要因が残っていることが、コア指数の高止まりから、わかります。

日本は米国よりも景況が良好

 米国株の上値はまだ重いままと思われます。3月の米ISM(米サプライマネジメント協会)景況指数で、米景気の冷え込みが懸念された影響も残ります。

ISM景況指数:2018年1月~2023年3月

出所:米ISM供給公社より楽天証券経済研究所が作成

 一方、日本は相対的に景況が良好です。日本銀行が3日に発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の景況感を表すDI(業況判断指数)が+1と大きく低下しましたが、まだマイナスにはなっていません。大企業・非製造業DIは+20と高水準です。製造業が低く、非製造業が高いのは米国と同じですが、ともに、米国よりも景況は高い水準です。

日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2023年3月

出所:日本銀行「短期経済観測」より楽天証券経済研究所が作成

日本株の投資判断

 日本株の投資判断は変わりません。日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えていると考えています。

 ただし、米景気減速への不安、米利上げが続く不安は残っていることから、一本調子の上昇は見込めないと考えています。時間分散しながら割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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