金融環境指数の改善で米国株は底堅い

 米国市場では、S&P500種指数が昨年12月初旬以来となる4,000ポイント台を回復する底堅い動きとなっています。

 インフレが減速基調をみせる中、来週開催が予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ幅を縮小する(+0.50%→+0.25%)との見方が広まったことや、景気の先行きを巡る悲観的な見方がやや後退したことが好材料となりました。

 イエレン米財務長官は23日、「インフレ動向を前向きに感じている」と述べ、「米国の労働市場が堅調を維持しながらも世界各地でエネルギー価格とサプライチェーンの問題が緩和しつつある」と指摘。米国経済のソフトランディング(軟着陸)期待が広まりました。

 また、次回FOMCでFRBが「今春の利上げ停止を検討する可能性がある」との観測報道も好材料となりました。実際に債券市場では長期債金利も短期債金利もピークアウト感をみせています。

 図表1は、シカゴ連邦準備銀行が算出している「金融環境指数」(Financial Conditions Index)と株価(S&P500種指数)の推移を示したものです。金融環境指数は、米国全体を取り巻く金融環境の引き締まり度合いを示します。

 インフレ減速を受けた債券金利のピークアウト感、社債市場の信用スプレッド縮小などを反映し、金融環境指数は昨年10月中旬から低下(金融環境は改善)しており、株式市場の底入れを下支えしているようにみえます。目先的には、10-12月期決算発表とその影響が警戒されます。

<図表1>金融環境の改善で米国株は持ち直しの動き

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2023年1月25日)

もうひとつの米国株投資戦略:クオリティ高配当指数に注目

 不透明な相場環境が当面も続く可能性がある中、長期投資の対象として「クオリティ高配当指数」(S&P500 Quality High Dividend Index)に注目したいと思います。

 同指数はS&Pダウジョーンズ社が、S&P500種指数を構成する銘柄群の中から、クオリティスコア(収益の創出力、収益の質、財務の健全性など)の高い上位200銘柄と配当利回りの高い上位200銘柄の共通銘柄群を選別して投資対象としています。いわば「優良な経営と高配当の両方の特性を兼ね備えた銘柄群」と言えます(現在は77銘柄:毎年6月と12月にリバランス)。

 こうした銘柄選別により、高配当株投資における「減配リスク」を可能な限り排除し、配当の持続性や増配の可能性を反映する安定したパフォーマンスを期待することができます。

 図表2は、過去約30年(1994年末=100)のクオリティ高配当指数、配当貴族指数、S&P500指数のトータルリターン指数(配当込み総収益指数)のパフォーマンスを比較したものです。

<図表2>クオリティ高配当指数の総収益推移を検証する

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1994年末~2023年12月末)

 図表2が示すとおり、クオリティ高配当指数のトータルリターンが配当貴族指数やS&P500指数を大きく上回ってきたことがわかります。特に、クオリティ高配当指数は、ITバブル崩壊やリーマンショックなど相場が大きく下落した局面で「下値抵抗力」や「反発力」で秀でた実績をみせてきました。

 例えば、リーマンショック(2008年)を例に取ってみても、下落を抑制しつつ、その後は株価回復力を発揮してアウトパフォームしました。

 最近のクオリティ高配当指数の上位構成銘柄をみると、S&P500と比較してハイテク(情報技術)の比率は低く、生活必需品、エネルギー、資本財・サービスなどの比率が高いことが特徴となっています(2022年末時点)。平均配当利回りは約3.3%、予想PER(株価収益率)は約13.0倍となっています(25日時点)。

「クオリティ×高配当」で3,000%超の総収益実績に注目

 クオリティ高配当指数、配当貴族指数、高配当株指数、S&P500種指数の1994年末以降のトータルリターンを図表3で比較してみました。過去約30年におけるクオリティ高配当指数のトータルリターンは+3,182%に及んでおり、S&P500指数の+1,387%を大きく上回ってきたことがわかります(25日時点)。

 相場の下落局面での下値抵抗力、相場反発局面での相対的堅調、高配当利回りによる再投資効果が総合的に力を発揮してきたことを示しています。

 このように、米国の市場平均(S&P500)よりも長期パフォーマンスが良好であった株価指数の存在にあらためて注目し、投資対象としての意義を考えたいと思います。

<図表3>約30年で3,000%超のトータルリターンに注目

*上記は過去の市場実績を示したものであり、将来の投資成果を保証するものではありません。
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1994年末~2023年1月25日) 

 今後も米国市場では不透明な相場環境が続く可能性もあり、投資を続けるべきか、投資するタイミングはいつか、など多くのことに悩まされる局面があると思います。ただ、資産形成においては、短期的なブレに一喜一憂せず「長期目線」(長期投資)を維持することが大切であると考えています。

 そして、新たな投資先を検討する際も、クオリティ高配当指数のように長期的に高いパフォーマンスを積み上げてきた株価指数に連動を目指す投資商品に注目したいと考えます。

 そこで本稿では、1月12日に設定された追加型投資信託である「eMAXIS S&P500クオリティ高配当インデックス」をご紹介したいと思います。

 同インデックスファンドはクオリティ高配当指数を構成する77銘柄に分散投資をしており、運用経費率(信託報酬率)は0.3%と抑制的となっています(設定・運用は三菱UFJ国際投信)。S&P500種指数連動型ファンドから資産形成の幅を広げたいのであれば、こうした新たなインデックスファンドへの投資を検討したいと思います。

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