「資産形成を始めたいけど何をしたら良いかわからない」という質問を読者の方からよく受けます。そういう投資初心者の方のために、資産形成のイロハを解説しています(木曜日掲載)。今日は、第8回高配当利回り株の選び方をお届けします。

第1回~第7回のまとめ

 まず、これまで解説したことを簡単におさらいします。以下が、これまでのまとめです。

 投資を始める前にまず家計のバランスシートを作りましょう。保有している全ての金融資産(現預金を含む)と金融負債の残高(時価ベース)を書き出しましょう。

 投資成果のほとんどはアセット・アロケーション(資産配分)で決まります。まずアセット・アロケーションを決めましょう。

 世界最大級の年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオは、以下の通り:国内株式25%、外国株式25%、外国債券25%、国内債券25%。

 アセット・アロケーションで一番大切なのは、リスク資産(国内株式+外国株式+外国債券)と安全資産(国内債券:銀行預金+個人向け国債)の比率決定です。近い将来使う予定のお金は、安全資産に入れましょう。

 日本株に投資したいがそのためにいろいろ調べる時間の無い人は、投資信託で日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動することを目指すインデックスファンドから投資したら良いでしょう。

 国内REIT(リート:上場不動産投資信託)に一定比率投資することは長期的なリターンを安定させる効果があります。

 円建ての債券投資で高い利回りを求めると、高いリスクを負うことになります。信用リスクの高い債券には投資すべきでありません。

 外国債券へ投資する際、年金基金では、為替ヘッジは原則しません。為替ヘッジのコストで外国債券の高利回りメリットが失われるからです。

 詳細は、以下よりお読みいただくことができます。

2022年9月29日資産形成のイロハ【1】まず家計のバランスシートを作る
2022年10月6日資産形成のイロハ【2】アセット・アロケーションを決める
2022年10月13日資産形成のイロハ【3】ポートフォリオの組み方
2022年10月20日資産形成のイロハ【4】日本株の選び方:投信と個別株、どっちが良い?
2022年10月27日資産形成のイロハ【5】J-REITに投資した方が良い?
2022年11月17日資産形成のイロハ【6】利回りに強くなる
2022年11月24日資産形成のイロハ【7】外債投資、為替ヘッジすべき?

株式投資で利回りを稼ぐ

  それでは、ここから日本株で「高配当利回り株」に投資する場合の、銘柄の選び方について解説します。

 日本株に投資する方法として、日経平均株価やTOPIXに連動することを目指している投資信託を購入するのが一番シンプルです。

 ただし、個別銘柄について勉強する時間のある方は、個別株投資に挑戦するのも良いと思います。日本株の個別株投資では、最初に「高配当利回り株」から投資していくのが良いと思います。以下、投資銘柄の選び方、考え方を解説します。

 株式投資というと、「値上がり益狙い」と思い込んでいる人が多いですが、少し発想を転換していただきたいと思います。

 今の日本株には、値上がりはあまり期待できないが、安定的に高い配当利回りが期待できる銘柄が増えているからです。

東証一部の平均配当利回りと長期金利(10年国債利回り)推移:1993年5月~2022年11月)

出所:QUICK、ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成、2022年3月までは東証一部平均、2022年4月以降は東証プライム平均

 昔の日本株は、確かに、配当ではなく、値上がりを狙って買うものでした。1993年ころ、東証一部の平均配当利回りは1%もありませんでした。

 当時、長期金利(新発10年国債利回り)が5%近くあったことを考えると、株の利回りは低すぎて、話になりませんでした。

 ところが、その後、長期金利が下がり続ける中で、日本株の利回りは上昇し続けました。【1】株価が下落したことと、【2】日本企業が株主への利益配分を増やすようになったことが、利回り上昇の要因です。

 今、長期国債の利回りがあまりにも低くなってしまったため、国債に投資する魅力はほとんど無くなりました。そこで注目されるのが、日本株の予想配当利回りの高さです。

 配当利回りから日本株を見直していい時代に入ってきました。東証プライムの平均配当利回りは11月30日時点で約2.5%です。

 なお、個別銘柄で見ると、日本を代表する大型株で配当利回り4%を超える銘柄が多数あります。大型高配当利回り株から投資していったら良いと思います。

 ただし、一つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。

 銘柄選択にあたっては、単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

予想配当利回りの高すぎる銘柄は要注意:減配リスクを見分けるための5条件

 全ての上場銘柄から予想配当利回りが高い銘柄を抽出すると、上位には、予想配当利回り7%以上の銘柄もあります。一見魅力的ですが、ここは注意が必要です。予想配当利回りが高すぎる銘柄には、減配リスクの高いものが多いからです。

 減配リスクが低い高配当の有望銘柄は、予想配当利回りで4~6%の辺りにたくさんあります。

 それでは、予想配当利回りの高い銘柄から、減配リスクの低い銘柄を選ぶ方法を解説します。条件を具体的に見てみましょう。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。

【1】時価総額が大きい
【2】収益力が良好(経常利益率が高い)
【3】財務が良好(借金が少ない)
【4】景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
【5】経営者が株主への利益配分に積極的

 5条件全てを満たす必要はありません。また、上記の条件を全てチェックするのは大変すぎます。

 実際に投資銘柄を選ぶときは、上の条件のうち最上位の条件【1】だけ満たす銘柄を選べば、投資候補として十分です。

 以下、覚えておいてください。

<高配当利回り株の選び方>
時価総額1兆円以上から選ぶだけでも良い

 予想配当利回りの高い銘柄から、減配リスクの低い銘柄を絞り込む時、時価総額が大きい(例えば1兆円超)という条件だけ満たすものを選んでも、まあまあ良い銘柄を選んでいると言えます。

 時価総額が1兆円以上の銘柄には、収益力が安定的で財務が良好な銘柄がたくさんあるからです。

 つまり、【1】だけ満たす(時価総額が大きい)銘柄を選べば、自動的に【2】収益力や、【3】財務でも、まあまあ良い銘柄を選んでいることになります。

【4】と【5】は必須条件ではありません。【4】や【5】にも該当すれば理想的というだけです。

「不況の影響を受けにくい業種から選ぶ」が、条件【4】です。情報通信・医薬品・食品などです。

一つのバスケットに全ての卵を入れるな

 高配当利回り銘柄への投資では、特定銘柄に集中投資すべきではありません。どんな銘柄にも、固有のリスクがあり、減配リスクが低く見えても、減配になって株価が下がることはあり得ます。

 1銘柄に集中投資するのは避けた方が良く、また同じ業種の銘柄ばかり買うのも望ましくありません。

 減配になりにくい性質を持った銘柄で、なるべくたくさんの銘柄・業種に分散投資すべきです。

 具体的な投資銘柄の候補については、以下、「著者おすすめのバックナンバー」をご参照ください。

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