配当貴族指数の長期パフォーマンスは優勢
本稿では、米国の「配当貴族指数」(S&P500 Dividend Aristocrats Index)の長期的視野に立った優勢に注目したいと思います。配当貴族指数とは、S&P500種指数採用銘柄(大手企業)のうち「25年以上連続して配当を増やし続けてきた優良銘柄」(現在は64銘柄:S&Pグローバルが選定)で構成されています。
図表1は、2000年初を100として配当貴族指数、S&P500(米国市場平均)、TOPIX(日本市場平均)それぞれの総収益指数(配当込みトータルリターンインデックス)の推移を比較したものです。
配当貴族指数の総収益指数は、今世紀以降で約10倍に迫る成長を実現し、S&P500やTOPIXの総収益指数に対し優勢を鮮明にしてきました。この間には、米国経済が停滞に陥(おちい)ったことが幾度かありました。2000年のITバブル崩壊後、2008年の金融危機、2020年のパンデミック危機で景気後退入りを余儀なくされたことがあります。
ただ、経営環境が一時的に悪化しても毎年(毎期)着実に配当を増やし続けてきた企業群(配当貴族指数)を、投資家が相対的に評価してきたことが示されています。配当を切れ目なく増やし続けてきた企業は、「株主還元を重視した経営を実践している企業」として、今後も市場で評価され続けると考えられます。
<図表1:配当貴族指数の長期パフォーマンスに注目>
「配当貴族」や「配当王」の具体的な銘柄を知る
参考情報として、S&P500配当貴族指数の主要構成銘柄(時価総額上位10銘柄)を図表2で一覧にしてみました。長期連続増配銘柄には、高いブランド力で知られている安定成長業種に属する企業が多いことがわかります。
特に、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、プロクター&ギャンブル(PG)、アッヴィ(ABBV)、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)、アボットラボラトリーズ(ABT)は、50年以上連続して配当を増やし続けてきた銘柄として、「配当王」(Dividend Kings)の称号も与えられています。
日本の東証上場銘柄で「配当貴族」(25年以上の連続増配企業)の名に値する銘柄は、32期連続で増配してきた花王(東証コード:4452)1社のみとなっています。株式市場全体が下落し、景気の悪化傾向が懸念されている環境でこそ、「いかなる経営環境に陥っても、配当を毎年(毎期)着実に増やし続けてきた実績」を持つ企業群は、引き続き物色されていくと思われます。
<図表2>配当貴族指数の主力銘柄をチェックする
配当貴族指数に連動を目指す具体的な投資戦略は?
前ページの図表2で示した、連続増配で実績のある銘柄に個別で投資する方法以外にも、配当貴族指数に連動したパフォーマンスを目指すインデックスファンドを買い付けて分散投資を実践することが可能です。
「Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)」(運用:日興アセットマネジメント)は、円換算のS&P500配当貴族指数に連動を目指す追加型公募投信として注目したいと思います。
同ファンドの経費率(信託報酬率)は年0.1155%と低く抑えられており、類似ファンドと比較してコスト面で魅力があると考えています。配当貴族指数の長期パフォーマンスに連動を目指していく投資ツールとして資産形成に取り入れることを検討したいと思います。
一方、「米国の、より幅広い連続増配銘柄に分散投資するETF(上場投資信託)」を買い付ける方法もあります。
例えば、米国籍ETFの「SPDR S&P 米国高配当株式ETF」(SDY)は、米国市場に上場されている大型株と中小型株で構成されている「S&P 1500指数」の構成銘柄の中から、20年以上連続して増配しており比較的高い配当利回りを維持する銘柄群で構成されているベンチマーク「S&P高配当貴族指数」(S&P High Yield Dividend Aristocrats Index)に連動するように運用されているETFです(図表3)。
同ETF(以下SDY)は、四半期ごとに(各銘柄の配当金を集約した)分配金を受益者に支払う「実績分配型ファンド」となっています。SDYを買い付けることで「連続増配の期待が高く、比較的高い配当利回りも期待できるポートフォリオ」を資産形成に取り込むことができます。
参考までに、SDYの平均分配金利回りは約2.6%、運用総額は約241億ドル(約3.3兆円)、経費率は年0.35%となっています。S&P500の年初来騰落率が-15.5%であるのに対し、SDYの取引価格の年初来騰落率は+3.1%とすでにプラス圏に浮上しており、相対的に堅調である点に注目したいと思います(23日時点)。
<図表3>高配当利回りの連続増配銘柄に分散投資する米国ETFもある
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