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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
利回り4.4%・5.1%/三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続​

三菱UFJFG・三井住友FGとも中間決算は好調

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)三井住友フィナンシャルグループ(8316)は14日、2022年4-9月期決算(2023年3月期の中間決算)を発表しました。その内容を踏まえた上で、両銘柄の買い判断を継続する理由を説明します。

三菱UFJFG、三井住友FGの2022年4-9月期決算

出所:両社決算資料。▲はマイナス。

 中間決算(6カ月間)の評価ですが、結論から言うと、2社とも好調です。三菱UFJFGは会計上の一時的な損失が出た影響で純利益が前年比70%減の2,310億円と見かけが良くないですが、銀行業の本業のもうけを示す業務純益は前期比40%増の8,952億円と好調です。

 三井住友FGは、中間純利益が前年同期比15%増、業務純益は同23%増と、見ての通り好調です。業務純益は中間期として過去最高で、今期の配当金を10円増やして230円とする増配も発表しました。

 好調な上期決算を受け、両社は以下の通り、通期の見通しを修正しました。

三菱UFJFG・三井住友FGの2023年3月期業績予想

出所:両社決算資料、通期目標はそれぞれ通期(2023年3月期)の会社予想または目標。進捗率は通期目標に対する第1四半期(4-6月)の進捗率

 三菱UFJFGは、通期の純利益目標を1兆円で据え置きました。最高益だった前期との比較で12%減益ですが、高水準の利益を維持する見通しで好調と評価できます。通期の業務純益目標は期初目標よりも2,000億円増やし、前期比23%増の1兆5,000億円としました。

 同社は、上半期の純利益が2,310億円しか出ていませんが、通期目標1兆円に対して上期は順調に推移していると判断できます。

 同社説明によると、上期の純利益が低いのはMUB株式譲渡に伴う会計上の損失が発生したためです。当該損失のうち、4,481億円は下半期に特別利益として戻入になる予定なので、通期目標1兆円に対して上期は順調に推移していると評価できます。

 三井住友FGは、通期純利益予想を400億円増やして、前期比9%増の7,700億円としました。業務純益の見通しも300億円増額しており、好調です。

2社ともディープ・バリュー株

 2社とも、11月15日時点でPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)が低く、予想配当利回りが高く、株価指標から見て極めて割安なディープ・バリュー株と評価できます。

2社の株価バリュエーション:2022年11月15日時点

銘柄名 株価
:円
配当
利回り
PER
:倍
PBR
:倍
三菱UFJ FG 722.5 4.4% 8.8 0.52
三井住友 FG 4,468.0 5.1% 7.7 0.48
出所:両社決算資料より楽天証券経済研究所が作成。配当利回りは2023年3月期1株当たり年間配当金(会社予想)を11月14日株価で割って算出。1株当たり配当金は、三菱UFJFG32円、三井住友FG230円。PERは、11月14日株価を2023年3月期1株当たり利益(会社予想または会社目標)で割って算出

金利が下がる都度、売られてきた銀行株

 三菱UFJFG、三井住友FGとも、高水準の利益をあげてきたにもかかわらず、株価は長期にわたり低迷してきたため、株価指標で見て割安となっています。両社の株価が過去どう推移してきたかご覧ください。

日経平均株価および三菱UFJFG・三井住友FG株の値動き比較:2007年1月~2022年11月(15日)

出所:2007年1月末の値を100として指数化、QUICKより作成

 両社とも2008年以降、金利低下とともに売られてきました。金利が低下している間は、日経平均を大幅に下回るパフォーマンスとなっていました。

 株式市場で「金利低下→銀行(金融業)の収益悪化」というイメージが定着しているので、金利が低下する都度、世界中で銀行株を始めとして金融株が売り込まれました。

日米の長期金利(10年国債利回り)推移:2007年1月~2022年11月(15日)

出所:QUICKより作成

 三菱UFJFG、三井住友FGとも、2020年まで日本の長期金利が低下する過程で売られ、さらに、ドルの長期金利低下を嫌気して売られました。

 ところが、2021年以降、ドルの長期金利が上昇し始めると、世界的に金融株が上昇し、日本のメガ銀行株も上昇しました。世界の株式投資家は、今でも相変わらず、日本のメガ銀行株を、金利連動株として扱っています。

 米国の金利上昇は、預貸金利ザヤの拡大を通じて、銀行業の収益にプラスに働きます。ただし、最近は米国の長期金利があまりに急ピッチで上昇したことに伴い、マイナスの影響も受けています。外債の含み損拡大(後述)がそうです。

 プラスマイナス合わせると、プラスの方が大きいので、金利上昇でメガ銀行の株価が見直されるのは妥当と判断しています。

金利低下でも高水準の収益を維持

 三菱UFJFG、三井住友FGとも、金利低下期でも安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージとは、異なります。

三菱UFJFG、三井住友FGの連結純利益:2014年3月期実績~2023年3月期(会社予想)

出所:各社決算資料。2023年3月期は会社予想。三菱UFJFGは会社目標

 上の表をご覧いただくと、「金利が下がるとメガ銀行の利益が出なくなる」という株式市場の思い込みが誤りであることがわかります。両社の連結純利益は、2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高水準を保っています。

 両社とも、海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などの多角化)によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルができあがっていると考えられます。

 2020年3月期・2021年3月期はコロナ禍で信用コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって、利益水準がやや下がりましたが、それでも高水準の利益を維持していたと評価できます。

 2022年3月期(前期)、三菱UFJFGと三井住友FGはコロナ前の水準に利益が戻りました。想定されたほど貸倒れが発生しなかったことから、貸倒引当金の戻入益が大きくなったことが貢献しました。

 ただし、前期の第4四半期にはロシア関連などで引当金や減損が発生して、利益水準が低くなりました。それでも前期、三菱UFJFGは最高益でした。低金利でも稼ぐメガ銀行の姿がよく表れています。

 前期でロシア関連の引当金は十分に積んでいるので、今期以降、ロシア関連で大きな損失が発生することはないと予想されます。

三菱UFJFGと三井住友FGは、前期に続き今期も増配

 両社とも株主への利益配分に積極的と評価できます。以下の通り、両社とも、コロナ禍で配当を据え置いた2021年3月期を除けば、安定的に増配を続けています。

 三井住友FGは、今期の配当金予想を期初220円としていましたが、11月14日の決算発表時に230円に引き上げました。前期(210円)比で20円の増配としました。

2メガ銀行の1株当たり配当金:2017年3月期実績~2023年3月期(会社予想)

出所:各社決算資料より作成

自社株買いも発表

 両社とも継続的に自社株買いも実施していますが、三菱UFJFGの方がより積極的に自社株買いを実施していると評価できます。

 三菱UFJFGは11月14日、上限1,500億円(発行済総株式数の2.4%)の自社株買いを決議したと発表しました。取得期間は12月2日から来年3月31日までです。上限まで買えば、株価の理論価格が2.4%上昇します。

 上限まで自社株買いを実行すると、発行済み株式数が2.4%減ります。すると、純利益の総額は変わらなくても、1株当たり利益が約2.4%増えます。PER評価が変わらなければ、株価は理論上2.4%上昇することになります。

 1株当たり利益が増えれば、それだけ将来の増配余地が高まるとも言えます。予想配当利回り4.4%に加え、2.4%の自社株買いが全て実行されれば、とても魅力的な株主への利益還元となります。

 三井住友FGは11月14日、昨年11月に決議した自社株買いをやらないまま取得期間が終了したと発表しました。未公表の重要事実を有していると判断される可能性のある期間に取得を見合わせたことが、その理由としています。

 その代わり、新たに上限2,000億円(発行済総株式数の4.4%)の自社株買いを決議したと発表しました。取得期間は11月15日から来年5月31日までです。上限まで買えば、株価の理論価格が4.4%上昇します。予想配当利回り5.1%と合わせて、とても魅力的な株主還元になる可能性があります。

2社とも保有する国内株式に巨額の含み益を有するが外債には巨額の含み損

 三菱UFJFG、三井住友FGはこのように安定的に高収益を稼ぎ、不良債権比率は低水準にとどまり、財務良好です。それにもかかわらず、株価は長期にわたり低迷してきた結果、株価指標で見て極めて低い水準にあります。

 どちらもPBRが約0.5倍と、解散価値の1倍を大きく割れているのは特筆できます。2022年9月末で三菱UFJFGは保有する有価証券に約7,600億円、三井住友FGは約1.3兆円の含み益(純額)があることを考えると、ここまで株式市場で低評価なのは「売られ過ぎ」と判断しています。

 両社とも保有する国内株式に巨額の含み益がありますが、保有する外国債券には巨額の含み損があります。ドル金利の上昇によって保有する外国債券の含み損が拡大しています。

 2022年9月末時点で、外国債券の含み損は、三菱UFJFGで約1.8兆億円、三井住友FGで約1兆500億円に達しているもようです(ヘッジなど勘案しない金額)。

 ただし、両社とも外債についてはヘッジ取引を行っており、ヘッジを勘案すると外債含み損の金額はそこまで大きくないと考えられます。

 外債の含み損拡大は両社にとってネガティブですが、株の含み益を合わせた純額で、巨額の含み益を有することに変わりなく、強固な財務基盤を有しているとの評価は変わりません。

 最後に告知事項です。筆者は過去に三井住友銀行に勤務したことがあり、三井住友FG株を9,000株保有しています。

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