長期投資を想定した内外の市場実績を知る
本稿では、「貯めながら増やしていく着実な資産形成法」として注目されている「積立投資(定時定額投資)」の意義と効果について解説します。
積立投資は、「投資は大きな金額が必要ではないか」や「投資はタイミングが難しいのではないか」といった初心者の不安を和らげる面があります。
積立投資は、投資信託やETF(上場投資信託)を定期的(例えば毎月末)に一定額ずつ買い足していく方法で、同じ金額で投資を積み増していくので、市場が下落する局面では比較的多くの数量(口数)を購入できる一方、市場が上昇している局面では比較的少ない数量しか購入できません。
これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる方法です。米国では広く一般投資家の資産形成に役立っていて、日本でも普及が進んでいます。
「上がる」「下がる」といった相場観に応じて売買をするのではなく、少額でも定額を投資し続けるため、長期的に値上がりが期待できる投資対象の場合、「安いときに多くの口数が買えた効果」が功を奏し、投資手法として合理的であるといわれています。
まずは図表1で、日本株式と世界株式のパフォーマンスを振り返りたいと思います。21世紀に入ってのパフォーマンスを振り返ると、米国株式や世界株式のトータルリターン(円換算)が日本株式(TOPIX)よりも優勢であったという市場実績に注目です。
<図表1>内外株式の長期パフォーマンスを比較した
「世界株式に積立投資した場合」を検証してみる
それでは、21世紀初頭(2000年初)から3万円を世界株式(※)に投資し、その後も毎月末に3万円を継続的に投資してきた場合を考えましょう。
(※)MSCIワールド(世界株式)ネットトータルリターン指数(円換算)
世界株式に連動するインデックス投信やETFの活用をイメージしたシミュレーションです。
2000年1月から2022年6月まで270回の定時定額投資を実践すると、累計投資額は簿価ベースで810万円(=3万円×270回)でした。ドルコスト平均法と複利運用(雪だるま)効果で、投資元本の時価評価額は6月時点で約2,474万円に膨らんできました。
もちろん、この過程ではITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)に伴う景気後退や株価の大幅下落を挟んできました。
長期投資を実践する間において、投資環境の変化に応じて株価や為替が下落するケースは少なくありません。ただ、米国株式を中心に世界株式のリターンが日本株のリターンを大きく上回ったことで、資産を増やすことができたことを示しています(図表2)。
2000年初に100万円を世界株式に投資した場合でも、時価評価額は増えてきましたが、そのような多額の投資を最初からできるか否かは、投資家の資金繰りや、まとまった金額を一度に投資することに伴うリスクをどう考えるかという「リスク許容度」によることになります。
今回のシミュレーションは、定額(3万円)を着実に投資し続ける定時定額投資を検証しています。
<図表2>世界株式の積立投資効果を検証してみる
長期的視野で「貯めながら増やす意義」を再確認
図表1で示した日本株式と世界株式の長期パフォーマンスの格差は、日本と外国の経済成長や利益成長を巡る「期待の差」を反映した市場実績と考えられます。
今後についても、長期的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)や成長期待を資産形成に取り込もうとするなら、日本株式だけでなく外国株式も積立投資の対象として検討していくほうが合理的と考えます。
積立投資は、1回(定額)に必要とされる投資資金が比較的少額なことが多く、一度に多額の投資をするよりも、心の負担は小さいと考えられます。
また、投資タイミング(買い時)を時間分散することで、市場の「マーケットリスク」(タイミングリスク)も分散できることになります。
米国を中心に世界株式は2022年前半に約2割下落しました。7月に入り底打ちの兆候もみられますが、インフレ動向、金融引き締め、景気後退不安などを巡る不透明感はいまだ払拭(ふっしょく)されておらず、当面も株式市場の変動については予断を許しません。
一方、株価が下落した場面で着実に「押し目買い」や「積み増し買い」を自動的に実践できる積立投資を実践するにあたっては、市場の変動に対し「ストレス」を感じる必要はありません。
株式市場が下がっていれば、「安く買い増すことができる」くらいに思える冷静な姿勢が肝要となります。
初心者だからこそ取り組みやすい資産形成方法として、積立投資(定時定額投資)を活用して貯めながら増やしていく意義と極意にあらためて注目いただきたいと思います。
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