米国株投資家・たりたり社長さん×2022年の2大注目銘柄

▼たりたり社長さんプロフィール

 元株式アナリスト、元ファンドマネージャーという経歴を持つサラリーマン投資家。note投資メディア、ツイッターで、銘柄の選び方や分析方法などを解説。とくに米国株投資に詳しい。ツイッターのフォロワーは7万人を数える。2020年8月、初の著書『今だからこそ始める!本気で稼ぐ株式投資の教科書』を刊行。初心者向けのわかりやすい投資本として話題を呼んだ。

今年はどんな年だった?

Q:2021年を振り返って、どんな年でしたか?

A:インフレ関連の予想外の動きに反省

 この1年の株式市場を振り返ると、全体的には予想通り、メインシナリオ通りだったかなという印象です。ただし、個人的には1つ、誤算がありました。インフレ関連の部分が予想を大きく外れる動きを見せたことです。その意味では、自分の実力不足を思い知らされた1年になりました。

 今回のインフレの背景を探ると、人件費の高騰と、原油などコモディティ価格の上昇という2つの要因に行き着きます。そのうち前者については予想できましたが、後者は想定外でした。原油価格が上がるにせよ、70ドル付近が天井と考えていました。しかし、実際には85ドル付近まで上昇し、まだまだ上がりそうな気配を見せています。そのため、原油価格の動向が重要なファクターとなるセクター、例えばエネルギー関連銘柄などに関して予想を大きく外す結果となりました。

 株や債券から出た資金が原油などのオルタナティブ資産に流れるという動きは2008年にもありました。ですから、早い時期にそのことに気づき、当時のデータを精査していれば、エネルギー関連銘柄が高騰することを多少なりとも予測できたでしょう。その点は大いに反省しています。

来年はどうなる?

Q:2022年はこんな年になる!という予測を教えてください

A:米国株の好調は続く!本格化する業績相場には追い風

 米国株は好調が続くと見ています。その根拠の1つが、この11月に発表された各社の決算内容です。通常は好景気でもガイダンスを上方修正したり、市場予想を上回ったりするのは全体の半分程度ですが、今回は8割近い企業が好決算を出しています。利益・CF(キャッシュフロー) をしっかり出している企業が多いというのが、米国株を強気に見る理由です。

 ただ、インフレの高止まりや、人件費の高騰などによるマージン悪化などの懸念材料が存在していることには留意すべきかとも思います。

 また、この利益は2022年に本格化するといわれる業績相場にとっては追い風となると考えることができます。新型コロナウイルス再拡大やインフレ率の高止まりなど懸念事項もありますが、それでも企業の好調な決算とその好調な業績を反映させやすい相場トレンドは米国株にとって追い風となるのではないでしょうか。コストアップなどの利益率悪化要因となるものを値上げなどの企業の力によってどこかに転嫁できる企業が利益を伸ばせる市場になると思っています。

2022年の2大注目銘柄その1:自身の最注目銘柄は!?

Q:2022年に最も注目している銘柄を1つ教えてください

A:ビザ(V)

 米国株には期待できる銘柄が数多くありますが、私が最も注目しているのは、世界中でクレジットカード決済サービスを提供しているビザ(V)です。実は今現在、ビザは決して好調とはいえません。消費の冷え込みと、新型コロナによる海外旅行需要の減少から収益性の高いクロスボーダー取引が落ち込んでいて、株価は年初来▲3%、米国の株式指数であるS&P500との比較では20%ほどパフォーマンスが劣ります。

 しかし、2022年は消費が上向きになるのは間違いないでしょう。旅行需要については、新型コロナが収束して完全に回復するのは2023年になりそうですが、2022年もその兆しが見られるはずです。

 それらを見込んで投資家が買いに入ると思われますから、旅行需要の動向を注視する必要はありますが、要注目銘柄といっていいでしょう。どこかでリバーサルの動きがみられる可能性が高い銘柄だと思いますので、タイミングに注意して投資を検討してみるのがよろしいのではないでしょうか?

2022年の2大注目銘柄その2:投資初心者におすすめする銘柄は!?

Q:2022年から投資を始める初心者に向けて、おすすめの銘柄を1つ教えてください

A:コストコ・ホールセール(COST)

 投資初心者向けということなら、有料会員制の大手小売店、コストコ・ホールセール(COST)を勧めます。なぜなら抜群の安定性を誇る企業だからです。

 その理由はビジネスモデルにあります。コストコの特徴は、年会費(5,000円程度)を払う代わりに、原価に近い価格で買い物ができるという点にあります。定額で、原価に近い値段で購入できる権利を得るという意味ではサブスク企業ともいえます。

 同社にとって会費は大きな収入の柱ですが、それでも売上全体からすると、3%程度に過ぎません。しかし、利益ベースで見ると、全体の7割を占めます。年会費だけで利益の大半を確保できるわけです。

 したがって、現在のようなインフレ環境下では大きな強みを発揮します。一般の小売店はインフレ下では値上げをせざるをえませんが、コストコは従来通り、原価に近い値段で販売できます。つまり、経済環境がどうであれ、安定した集客を見込めるのです。

 コストコは、米国の消費動向を映し出す鏡のような企業でもあります。米国の消費が盛り上げると、コストコの株価が上がる傾向にあります。そういう意味で投資ビギナーにとっては、経済と株価の関係を身をもって体験できるというよさがあります。また、優れたビジネスモデルとは何かを知る機会にもなるでしょう。

初心者投資家へアドバイス!

Q:これから投資を始める人や初心者に向けて、投資方法や心構えのアドバイスを教えてください

A:相場の悪化に向けた備えを忘れずに、投資に必要な力を養う勉強を!

 2020年、2021年と米国株は絶好調でした。もしかしたら2022年も同じ状況が続くかもしれません。しかし、何かの出来事をキッカケにまったく逆の局面に突入する可能性もゼロではありません。

 相場がいいときはトレンドに乗っていれば、そこそこ利益を得られるものです。しかし、相場が悪くなると、人気銘柄を追い掛けるだけでは行き詰まってしまいます。

 ですから、今年、米国株でいい思いをした人なども、それに浮かれず、冬の時代への備えを疎かにしないことが大事です。もう一度、ゼロから勉強し直すなどして、相場を読む力や企業を見る目を養ってほしいと思います。

 2020年、2021年と良い成績を残せたということは、リスクを恐れずに投資をできているということです。恐れているだけではいい成績は残せません。自分の力を高めていき、その分析に身を任せられることが相場で大きなリターンを得る際に必要なことだと思います。

 もし初心者の方で、『今もうかっているのは、相場が良すぎたから』という意見も耳にしたとしても、それはその流れにしっかりと乗れたからです。今後いずれは流れが変わるタイミングも来るでしょうが、その時にもこの成功経験を忘れずに勉強していってもらえるといいかと思います。

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