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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日経平均どうなる?恒大ショック・米債務上限問題への不安続く
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日経平均が再び急落、再び3万円割れ

 先週(9月27日~10月1日)の日経平均株価は1週間で1,477円下がり、2万8,771円となりました。国内経済正常化への期待が高まったことで上昇してきた日経平均でしたが、中国・米国の不安が高まったことを受けて、再び大幅安となりました。

 緊急事態宣言の全面解除、岸田文雄・自民党新総裁が「年内に数十兆円の経済対策をまとめる」と表明していることへの期待が出ている一方、中国・米国の不安から世界的に株が下がり、外国人投資家と見られる売りで日経平均も大きく下がりました。

 中国「恒大集団」の信用不安、そして中国不動産バブル崩壊の不安が、世界経済にどのような影響を与えるかについて不安が広がっています。米国経由ではインフレ懸念、年内のテーパリング(金融緩和縮小)開始、債務上限問題から一時米長期金利が上昇し米国株が調整したことも、日経平均が売られる要因となりました。

日経平均週足:2020年1月6日~2021年10月1日

出所:楽天証券MSⅡより楽天証券経済研究所が作成

 簡単に、昨年来の日経平均の動きを振り返ります。

【1】2020年1~3月:世界株安

コロナショックで急落。

【2】2020年4~6月:世界株高

 世界的に株が急反発。日経平均も急反発。戦後最悪の景気落ち込みが続いたが、先行きの景気回復の織り込みが開始

【3】2020年7月~2021年2月:世界株高

 世界的に株の上昇加速。日経平均も上昇。世界景気・企業業績回復を好感。

【4】 2021年3~8月中旬:日本株だけ独歩安

 欧米株の上昇が続く中、日経平均は下落。政局への不安(菅首相のもとで自民党が衆院選大敗して政権が弱体化する不安)・経済への不安(ワクチン接種遅れから緊急事態宣言がいつまでも解除できない不安)から、外国人が日本株を売り。

【5】2021年8月中旬~9月17日:日本株だけ大きく上昇

 欧米株が調整する中で、日経平均が急反発。日本の政局への期待(後述)、ワクチン接種率上昇から内需回復への期待を受けて、外国人が日本株を買い。

【6】2021年9月21日~10月1日:中国・米国の不安で日経平均下落

 恒大ショック収まらず。9月のドル債利払いが実施されず、30日間のデフォルト猶予期間に入っている。また、米債務上限問題がこじれていることに不安もあり、日経平均急落。

米国の不安は一時的と予想

 9月21日以降の日経平均急落は、米国の不安と中国の不安によるものです。私は、米国の不安は一時的で先行き改善に向かうと見ています。ただし、中国の不安は根が深く、世界経済と世界の株式市場へのマイナス影響が長期化するリスクを警戒すべきです。

 日本株は割安で長期投資で買い場、日経平均は4年(景気1サイクル)以内に史上最高値(1989年12月の38,915円)を更新すると予想しています。ただし、短期的には中国リスク顕在化を受けてさらに下落するリスクが払しょくできません。

【1】米長期金利はいったん反落

 以下3つの要因が重なって、一時、米長期金利が上昇し、ハイテク株比率の高い米ナスダック総合指数が調整しました。

●天然ガス市況の高騰を受けて、米インフレ長期化が警戒されたこと。
●米債務上限問題が長びくことで、米国債の不安が高まったこと。
●FRBが11月にテーパリング(金融緩和縮小)開始を示唆していること。

米長期(10年)金利の動き:2020年1月2日~2021年10月1日

出所:QUICKより作成

 私は、米インフレ率が低下するのにしばらく時間がかかると思います。一方、米景気はリベンジ消費が一巡しつつあることから減速が見込まれています。米景気が減速する中でも、米インフレが鎮静化しないことに、不安が高まりました。

 ただし、私は来年にかけて米インフレが低下する見通しは変わりません。米景気は減速するものの、景気後退や失速には至らず、巡航速度での成長(GDPで2%台半ばの成長)が来年も続くと予想しています。米国株はしばらくスピード調整が必要ですが、来年、再び上昇トレンドを取り戻すと予想しています。

【2】製造業の景況好調

 10月1日に発表された9月の米ISM製造業景況指数が改善したことは、米景気が好調であることを再確認する内容で、同日の米国株反発に寄与しました。

米ISM景況指数:2018年1月~2021年9月(非製造業は8月まで)

出所:米ISM供給公社

中国の不安は長期化する可能性も

 恒大の破綻リスクは依然高いと考えられること、恒大以外の中国不動産大手も財務面で問題をかかえていることから、中国の不安は長期化の可能性があります。習近平政権が。「共同富裕」を前面に打ち出し、IT大手・教育産業に加え、不動産業の締め付けを強化しつつある影響が、中国経済の成長を抑制する可能性があります。

国内消費は回復へ

 ワクチン接種率の上昇、経口治療薬の開発、感染減少、緊急事態宣言の全面解除を受けて、これから日本でも消費回復が顕著になると予想しています。

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