※本記事は2020年11月27日に公開したものです。

億り人に聞く1億円達成の道!

 投資の世界では、運用で1億円以上を達成した人たちを、いつしか尊敬の念を込めて「億り人(おくりびと)」と呼ぶようになった。その中でも、投資スタート時は普通の会社員、つまり働いて得た給与を主な元手に運用し、「億り人」となった人たちは何をやってきたのか。

 そこでトウシルでは、主に株式投資を中心に資産を築き、会社員として一般企業に勤務後、現在は専業投資家となった、まつのすけ氏に、1億円達成までの軌跡、投資手法をインタビュー。ゼロから投資で1億円を目指す方法を探る。

社会人になった年、40万円を元手に投資スタート

 まつのすけ氏の現在の資産は「1億円超」。社会人になった2005年に全財産の40万円を元手に投資スタート。勝ったり負けたり一進一退を繰り返していた。しかし、2011年に「イベント投資」を始めてからは収益が安定し、12年目の2017年に資産1億円を達成、現在は会社員を辞めて専業投資家となった。そのかたわら、人気投資ブログ「The Goal」の管理人として、そして、トウシルでも人気連載「まつのすけの、ポイント投資で目指せ100万円!」を執筆。投資をはじめ、キャッシュレス決済、クレジットカード、経済全般について情報発信もしている。

まつのすけ氏の「イベント投資」とは?

まつのすけ氏の資産推移
1年目 40万円
2年目 200万円
3年目 300万円
4年目 400万円
5年目 500万円
6年目 650万円
7年目 800万円
8年目 1,200万円
9年目 2,000万円
10年目 4,000万円
11年目 7,000万円
12年目 1億円

資産形成に重要な3つのこと

 たった12年目で資産1億円を達成、最近では毎年3,000万円を超える利益を上げているというまつのすけ氏。億り人はやはり最初から1億円を目指すものなのだろうか。

「特に具体的な目標はありませんでしたが、1億円・ミリオネアはやはり世界的に一つの大台でしたので、意識はしていました。また、不測の事態があっても、生涯問題ない資産は築きたいと考えていました」(まつのすけ氏)

 そのためには、やるべきこと、重要なことはあるのだろうか。

資産形成 =
(収入 - 支出) × 運用利回り

 まつのすけ氏は上記の計算式を提示し、「この計算式によって、資産形成はなされます。これを念頭に置くと、資産形成に重要なことは、次の3つの点に集約されます」と語る。

■ 収入を増やす
■ 支出を減らす
■ 運用利回りを上げる

「ただし、収入を増やすのは容易ではありませんし、過度に支出をカットすると人生の楽しみが減ってしまう。無理のない範囲で意味のない支出を削減し、浮いたお金を投資に回すのが王道だと思います」(まつのすけ氏)

 とりあえず、家計の見直しとして意味のない支出の削減に取り組みたいが、どう行動したらいいのだろう。

「すぐできることとして、例えば、電気は電気料金が安い新電力、スマホは通信速度に問題がないという評判・口コミを調べた上でMVNO(仮想移動体通信事業者=いわゆる格安SIM)に切り替えるなどが挙げられます。そして、支払いはできる限りキャッシュレス決済にしましょう。年200万円支払いが生じるとして、1%のポイント還元が受けられれば2万円、1.5%なら3万円が浮きます。キャッシュレス決済以外にも、ポイント、キャンペーンなど、リスクなく確実なリターンを得られるものは、活用するのがおすすめです。年数万~十数万円といったリターンは多くの方にとって現実的なものです。30年やれば数百万円といった金額になります」(まつのすけ氏)

 普段の支払いも利回りを生み出すことに気づいた。

1億円を目指す株式投資、はじめの一歩は?

 次に「運用利回りを上げる」とは、どんな銘柄に目を付けて投資すればいいのだろうか。まつのすけ氏は、こちらのはやる気持ちを抑えるように、銘柄選びではなく「最初は少額で始め、多様な投資手法に触れることが重要」だと話す。

 まつのすけ氏はバリュー、グロース、モメンタム、システム、インデックスなど多くの投資手法・スタイルを挙げつつ、この方法はダメだ、あの方法が優れているといった対立が投資家の間で議論されることがあることについて、「そういった対立軸もありますが、どれがいいのかは人それぞれで答えはありません。例えるなら犬を飼うのと猫を飼うのはどちらが正しいのかを議論するようなもの。その上で、大切なことは自分に適した投資手法・投資スタイルを磨いて、大きく勝てるポイントを増やすことです」と話す。

「自分は長期投資派だと考えていても、意外にも短期的なトレーディングが向いていたということは多々あります。もちろん逆もまたしかりです。私も最初はウォーレン・バフェットに憧れて、成長する企業に割安な株価で投資するというスタイルで、逆張りを選好していました。しかし、あまり大きなリターンを獲得できずに損失が出ることも多かった。それが短期売買で順張りを意識するようになってから、安定的に勝てるようになったのです」(まつのすけ氏)

 自身の経験を踏まえ、「適正がある投資手法を選択せずに、なんとなく良いと思った投資方法を続けることで、生涯にわたるリターンが数千万円、数億円違っていた、となるともったいない」と話し、だからこそ、「初心者のうちはできる限り幅広い投資手法に触れること」をまつのすけ氏はすすめているのだ。

資産1億円へのターニングポイント

 ところで、株式投資をはじめてから一進一退を繰り返していたまつのすけ氏が軌道に乗ったのは、ひらめきだけで突っ走らずに、必ず検証して裏付けを取ったことによる。

「ひらめいた投資アイデアは必ず過去データを収集して、表計算ソフトで検証して、期待値(その投資法を繰り返した場合に期待できる収益)とリスクを把握することを続けたら、利益が出るようになりました」(まつのすけ氏)

 まつのすけ氏のやり方をまねるなら、すぐにできる方法として「株式を買おうと思ったり、あるいは空売りしようと思ったりした場合、誰でも必ず何らかの理由があるはずです。そして、その理由で過去に投資を行った場合、パフォーマンスが良かったのか否か、データで確認してみてください。何となく売買して損失を出してしまう事態を回避できます」とアドバイスする。

 では具体的な手順を追ってみよう。

1:買おうと思った理由を明確にする

2:その上で過去に同じ理由が該当する銘柄に投資していた場合、トータルでは利益が出ているのか否かを検証する

3:これを繰り返すうち、次のような引き出しを増やすことが可能になる
「Aという属性を持つ銘柄は株価が上がりやすい(下がりやすい)」
「Bという事象が起こったらXの株価が上昇する傾向(下落する傾向)」
「Cという経済状況においては、Yの株価が強い可能性(弱い可能性)」

 まつのすけ氏は「データ分析をすると、一定の条件を充足すると勝率が高いというパターンがいろいろと出てきます。その中で自分がしっくりきて実践できることを選定して、独自のストラテジー(戦略)を構築していくと大きな武器となり、クールに期待値が高い銘柄を淡々と売買していくことが可能になります」と言う。

 さらに、まつのすけ氏は、「数年に一度訪れる可能性があるバブルに乗る、株価が大きく上昇する局面でうまく買いを入れられたら、一気に1億円といった状況になれます。でもバブルはそうは訪れない。だから、データ分析で統計的に勝率が高いエッジを見つけることが重要で、それができればバブル期ではなくても着実なリターンを上げて、相場動向に大きく左右されずに収益を得られるようになります」とこの方法の有用性に自信を見せる。

 ところで、まつのすけ氏が毎日データを収集してエントリーポイントが生じていないか確認作業を行う上でオススメするのが、楽天証券のRSS(更新情報を配信するための技術)だと言う。一気に多数の銘柄のデータを日々収集できて便利ということだ。

資産1億円を達成できる人の条件

 まつのすけ氏の現在の資産ポートフォリオは次の通り(2020年9月現在)。

 主に株式で運用しながら、他の運用方法も取り入れ、バランスしている。

 ではいろいろな投資手法を試しながら、投資初心者が今日から資産1億円を目指す場合、まず、どんな商品を検討すればいいのだろう。まつのすけ氏がいま初心者ならNASDAQに連動したETF(上場投資信託)や投資信託を選択するという。

「グロース投資の観点で魅力的と考え、ETFではNEXT FUNDS NASDAQ-100連動型上場投信(1545)や投資信託ではiFreeNEXT NASDAQ100インデックスに投資すると思います。ただ、現在はバブル的相場になりつつあるので、バイ&ホールド(長期保有)ではなく、バブル崩壊気味になったら利益確定すると思います」(まつのすけ氏)

 これまで、ゼロから資産1億円達成を目指す投資手法を説明してもらったまつのすけ氏に、1億円を達成できる人の条件について伺うと、次の3つを挙げてもらった。

1:収入が高い

2:投資リターンが高い

3:勝てる局面で大きく張る(ここぞという時に大勝負して勝つ)

「3について補足すると、投資だけで億り人になった方々の場合、大勝負にトライして勝利し、+100%や+200%といった収益を上げた方が多いと感じます。ただ初心者の方は、冒頭で説明したように、家計の見直しをして基盤を確固としたものにした上で、運用利回りを上げるために投資に取り組むことが重要です」(まつのすけ氏)

 最後に、1億円達成が人生にとってどんな意味があったかとまつのすけ氏に聞くと、穏やかなほほえみを浮かべてこう語った。

「金銭面で不安を感じるのは嫌だったので、その点を解消して人生を楽しみたいというのが資産形成のモチベーションでした。今は幸いその状態になり、外食や日々の食事であまり値段を気にせずに好きなものを食べられて、行きたい場所へどこにでも旅行に行けるのが、すごくよかったと感じます。コロナ禍で旅行に出られないことが今は切ないのですが…」(まつのすけ氏)

「収入を増やす」努力をして、家計を点検して「支出を減らす」。その上で「運用利回りを上げる」工夫をする。これは「1億円」という夢を現実にするための手段であり、資産形成を始めようとする全ての人の基本といえるだろう。

米国株投資で億り人・たぱぞう氏インタビュー

投資信託で億り人・井上はじめ氏インタビュー

▼まつのすけ氏プロフィール
 30歳前半の若さで億り人に。株式を中心に投資しながら、さまざまなポイントを貪欲に貯めて、パワフルに使うポイ活の達人でもある。経済、IPO(新規公開株)、キャッシュレス、クレジットカードなどについて発信する人気ブログ「The Goal」を主宰し、トウシルでも「まつのすけの、ポイント投資で目指せ100万円!」を毎月連載している。

他のまつのすけ氏のインタビューもチェック