次の自民党総裁はゲームチェンジャーではない
日経平均株価は8月20日(金)にザラ場安値2万6,954円81銭を付けて以降急反発し、5カ月ぶりに3万円を回復しました。
急動意のスタートは東京都のコロナ新規感染者数が1週間前比で減少を始めた8月23日(月)とほぼ一致しています。
それ以降も東京都新規コロナ感染者数は減り続けていることから、まずは日経平均の反発は「コロナ感染第5波」の収束の兆しを好感したものと見ることができます。
9月3日には政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が、今秋を念頭に日常生活における行動制限の緩和(ワクチン接種の完了やPCR検査の陰性証明を条件に、旅行や大規模イベントなどを容認)に関する提言をまとめました。
その後、政府も自粛の緩和に向けた基本的な考え方について検討を急ぐ考えを示しています。経済活動再開への期待がさらに高まっているといえます。
もうひとつの株価急伸のきっかけ「菅首相退陣」についても、菅首相が任期をもって退任することそのものが好感されたというよりも、次の自民党総裁(総理大臣)が誰であっても「経済対策は拡大するだろう」と捉えられたと思われます。
ワクチン接種がさらに進み、抗体カクテル療法という治療法の効果が確認され始め、そして東京都の新規感染者が減少傾向を見せるというタイミングの良さもありました。これらすべてが「変化への期待」となったのです。
自民党総裁選(告示17日、投開票29日)は、どの候補者が当選しても大きな違いはないと思います。候補者はすべて自民党ベテラン議員で党要職や閣僚経験者、基本的な政治信条に大きな差異があるわけではないのです。
人心は一新されますが、ゲームチェンジャーが登場するほどではありません。「〇〇氏が当選すると株価が上がる(下がる)」というものではなく、すでに株式市場に表れている動きを評価するのが良さそうです。
コロナ感染拡大と並ぶ株式市場の懸念「中国懸念」については、8月9日に公開された記事「中国規制リスクが緩むタイミングを計る。アリババ、テンセント関連株の反発に期待」で示した「ネガティブインパクトは次第に織り込まれる公算」との見方が当てはまりました。
香港ハンセン指数、上海総合指数とも反発の動きを示しています。欧米株に比べて大きく出遅れていた日本株、チャイナ株は修正高となると読みます。
海外資金を受け止める銘柄と中間高配当銘柄に注目
日本株の修正高を演出するのはやはり外国人投資家でしょう。外国人投資家が買うから上がる、外国人投資家が買わなければ目立って上昇しないのが日本株です。
彼らの投資資金は欧米株堅調によって膨れ上がっていると見られ、欧米株に比べると割安な日本株への買い余力は充分でしょう。
大きな資金を受け止めるものとしてまず、「時価総額上位銘柄」に目を向けることになります。時価総額上位の銘柄は流動性が高く、大きな資金が向かう銘柄になりやすいのです。
とくに足元で目立った株価上昇を示している銘柄には一段高期待が生じてくるかもしれません。時価総額が大きい銘柄のボラティリティ(変動率)が限られるというわけではありません。
海外資金を受け止める時価総額上位銘柄
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
6861 | キーエンス | 73,060 | |||
9432 | NTT | 3,243 | |||
6098 | リクルートホールディングス | 6,870 | |||
6367 | ダイキン工業 | 29,360 | |||
4519 | 中外製薬 | 4,327 | |||
※株価データは2021年9月8日終値ベース。 |
キーエンス(6861・東証1部)
時価総額第2位/16兆8,400億円(2021年9月6日時点)。
FAセンサーなど検出・計測制御機器大手企業です。日本を代表する優良企業です。
・3カ月日足チャート
NTT(9432・東証1部)
時価総額第4位/12兆5,600億円(同)。
NTTグループの持株会社でドコモが主力です。固定電話では独占企業です。
・3カ月日足チャート
リクルートホールディングス(6098・東証1部)
時価総額第5位/11兆2,300億円(同)。
人材サービス国内最大手企業です。求人情報検索エンジン「インディード」の成長が株価ドライバーです。
・3カ月日足チャート
ダイキン工業(6367・東証1部)
時価総額第7位/8兆5,200億円(同)。
エアコン世界首位級企業です。国内は業務用では断トツの存在です。
・3カ月日足チャート
中外製薬(4519・東証1部)
時価総額第14位/7兆4,700億円(同)。
スイス・ロシュグループ傘下の医薬品大手企業です。抗体カクテル療法「ロナプリーブ」が注目されています。
・3カ月日足チャート
いっそう注目度高まる中間高配当銘柄
中間配当金も意識される時期に入っています(9月28日が中間配当権利付き最終売買日)。昨今の海運大手株の急騰は高配当を背景としたもので、投資家の「高配当銘柄」への注目度はこれまで以上に高まりました。
主力株全般が買われ始めると、値上がり益を追い求める姿勢が強まりいったんその流れが止まる可能性もありますが、そのタイミングを狙い高配当をゲットするしたたかな投資戦略にも一理あると見ています。
ここでは中間配当金が高い銘柄を最後に紹介しておきます。
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
9104 | 商船三井 | 8,920 | |||
9101 | 日本郵船 | 9,830 | |||
9810 | 日鉄物産 | 5,350 | |||
8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 3,979 | |||
1820 | 西松建設 | 3,655 | |||
4502 | 武田薬品工業 | 3,815 | |||
※株価データは2021年9月8日終値ベース。 |
商船三井(9104・東証1部)
中間配当金(予想)300円。
海運大手で、鉄鉱石船、タンカー、LNG船を得意とします。
・5カ月日足チャート
日本郵船(9101・東証1部)
中間配当金(予想)200円。
海運国内首位企業です。陸空運も広く手掛けています。
・5カ月日足チャート
日鉄物産(9810・東証1部)
中間配当金(予想)145円。
日本製鉄系の鉄鋼専門商社です。
・5カ月日足チャート
三井住友フィナンシャルグループ(8316・東証1部)
中間配当金(予想)100円。
傘下に三井住友銀行、SMBC日興証券などを擁する金融グループです。
・5カ月日足チャート
西松建設(1820・東証1部)
中間配当金(予想)90円。
準大手ゼネコンで、ダムやトンネルなど土木分野に強みを持ちます。
・5カ月日足チャート
武田薬品工業(4502・東証1部)
中間配当金(予想)90円。
国内製薬首位企業、巨額M&A(合併・買収)で世界売上は上位に位置しています。
・5カ月日足チャート
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