※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]利回り3.7~4.9%!10万円以下で買える 高配当利回り株
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日経平均3万円でも、日本株は配当利回りから割安と判断

 7日の日経平均は一時3万円を回復しました。世界景気回復の恩恵を受けて日本企業の業績が好調であること、菅首相辞任により新総裁のもとで大型景気対策を打ち出してくる期待が高まったことから、外国人投資家が日本株を買い戻していると考えられます。

 中国の政治リスクが高まったことを受けて、欧米投資家が中国株を売って日本株に入れ替えているという見方もあります。

 日経平均が3万円でも、日本株は割安と考えています。配当利回りや買収価値から見て、投資魅力は高いと判断しています。長期投資で、資産形成に貢献する投資対象と考えています。

 日本の長期金利(10年もの新発国債利回り)と東証一部予想配当利回りの月次推移:1993年5月~2021年9月(7日まで)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 1993年当時、長期金利が5%あった時、東証一部配当利回りは1%未満でした。この時、長期国債は割安で、日本株は割高でした。

 ところが、現在、長期金利はゼロ近くに低下し、配当利回りは約2%まで上昇しています。今は、長期国債が割高で、日本株が割安と判断しています。

 利回り2%というのは東証一部の平均で、個別銘柄を見ると大型優良株で、予想配当利回りが4%を超えている銘柄も多数あります。配当利回りの高い割安株に投資することは、長期の資産形成に寄与すると考えています。

10万円から始める高利回り株投資、スーパースクリーナーで銘柄選択

 日本株は配当利回りから見て割安で、長期投資対象として魅力的と考えています。ただし、銘柄選択は大切です。1つの銘柄に集中投資するのではなく、配当利回りの高い株なるべく多数に、分散投資した方が良いと思います。

 そこで今日は、10万円以下で買える高配当利回り株をご紹介します。楽天証券ウェブサイトでは、さまざまな条件を指定して、その条件に合った銘柄をスクリーニング(抽出)する「スーパースクリーナー」というツールを提供しています。

 スーパースクリーナーの使い方は、以下をご参照ください。
「スーパースクリーナーを使った銘柄分析方法を動画で解説」

 今日は、スーパースクリーナーを使って選ぶ、10万円以下で投資できる高配当利回り株を、ご紹介します。以下の手順で絞り込みます。

【1】10万円以下で買える1,381銘柄を抽出

 まず、東証一部・二部・東証マザーズ・ジャスダック・名証に上場する銘柄について、「投資金額10万円以下」の条件を指定すると、1,381銘柄が出てきます。

 この1,381銘柄が、2021年9月7日時点で、最小投資単位100株を買うのに必要な金額が10万円以下の銘柄です。

【2】予想配当利回り3.5%以上の60銘柄を抽出、証券業を除き55銘柄に絞り込み

 10万円以下で買える銘柄から、配当利回りが高いものを抽出します。「配当利回り(予想)が3.5%以上」という条件を加えると、銘柄数は一気に60まで減ります。これが、10万円以下で買える高配当利回り株の候補となります。

 私は、コンプライアンス上の理由で、証券業に属する銘柄の投資判断を述べることができませんので、証券業に入る5社を除外します。すると、55銘柄が残ります。

【3】さらに時価総額が1,000億円以上、銘柄に絞り込む

 高配当利回り銘柄を選別する際、注意すべきことがあります。配当利回り(予想)は高ければ高いほど良い、というわけではないことです。

 なぜならば、株の配当利回りは、確定利回りではないからです。業績が悪化して、減配(1株当たり配当金を減らすこと)になり、株価が下がることもあります。

 したがって、上記リストから高配当利回りの投資銘柄を選ぶ時は、見かけ上の配当利回りの高さではなく、減配リスクが低いと判断される銘柄を選ぶべきです。

 減配リスクの低い銘柄にさらに絞りこむ方法は、いろいろあります。減配リスクが低い銘柄には、一般的に以下の特色があります。

  • 時価総額が大きい
  • 経常利益率が高い
  • 自己資本比率が高い(借金が少ない)
  • 景気の影響を受けにくい業種(ディフェンシブ株)
  • 経営者が株主への利益配分に積極的

 すべてを満たす銘柄はありません。上記の1つか2つを満たせば十分と考えます。今日は、一番単純でわかりやすい「時価総額が大きい」(時価総額1,000億円以上)という条件で絞り込みます。

 その方法で絞り込むと、25銘柄が抽出されます。

10万円以下で買える、時価総額1,000億円以上、配当利回り3.5%以上の25銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 株価9月7日 1株当たり配当金
1605 INPEX 5.2% 773.0 40.0
1719 安藤・間 3.6% 841.0 30.0
1824 前田建設工業 4.5% 838.0 38.0
2768 双日 4.1% 343.0 14.0
3105 日清紡HD 3.6% 844.0 30.0
4202 ダイセル 3.5% 909.0 32.0
4902 コニカミノルタ 5.1% 587.0 30.0
5020 ENEOS HD 4.9% 446.2 22.0
6178 日本郵政 5.1% 975.0 50.0
7167 めぶきFG 4.3% 253.0 11.0
7182 ゆうちょ銀行 4.1% 972.0 40.0
7186 コンコルディアFG 3.6% 444.0 16.0
7189 西日本フィナンシャルHD 4.2% 721.0 30.0
8002 丸紅 3.7% 909.1 34.0
8306 三菱UFJ FG 4.4% 619.1 27.0
8308 りそなHD 4.8% 440.2 21.0
8334 群馬銀行 3.9% 357.0 14.0
8377 ほくほくFG 4.0% 868.0 35.0
8410 セブン銀行 4.3% 257.0 11.0
8418 山口FG 4.2% 664.0 28.0
8593 三菱HCキャピタル 4.3% 605.0 26.0
9412 スカパーJSAT HD 4.2% 433.0 18.0
9506 東北電力 4.8% 837.0 40.0
9507 四国電力 3.9% 766.0 30.0
9508 九州電力 4.8% 842.0 40.0
出所:銘柄は楽天証券スーパースクリーナーで抽出、配当利回りは1株当たり年間配当金(会社予想)を9月7日株価で割って算出。配当金と株価の単位は円

 上記のような配当利回りの高い銘柄群のリストを見る時の注意点です。

 配当利回りは確定利回りではありません。利回りが高いほど投資魅力が高いと考える方がいらっしゃいますが、そうではありません。

 財務内容が良好で、収益基盤がなるべく堅固な銘柄を選んだ方が、長期的なパフォーマンスは良い結果になります。

私が投資してみたいと考える5銘柄

 スクリーニングで選んだ銘柄に、機械的に投資するのは得策とは言えません。配当利回りが高い銘柄には、将来、減配になるリスクもあるからです。ここから、さらに絞り込む必要があります。

 私は、1987年から2013年まで、日本株ファンドマネージャーをやっていました。私がもし今、ファンドマネージャーならば買ってみたいと思う銘柄は、5銘柄あります。以下の通りです。

筆者がファンドマネージャーならば買ってみたい5銘柄

コード 銘柄名 業種 配当利回り 最低投資額
2768 双日 商社 4.1% 34,300
5020 ENEOS HD 石油 4.9% 44,620
8002 丸紅 商社 3.7% 90,910
8306 三菱UFJ FG メガ銀行 4.4% 61,910
9412 スカパーJSAT HD 情報通信 4.2% 43,300
出所:筆者作成、配当利回りの根拠は前表、最低投資額は9月7日終値で最低投資単位100株を買うのに必要な金額(円)

 上記5銘柄は、予想配当利回りが 3.4~4.7%と高いことに加え、以下の通りPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で低く据え置かれているバリュー(割安)株です。

 PERは10倍前後、PBRは解散価値と言われる1倍を割り込んでいます。今後、割安な株価が見直されて、株価が上昇する余地があると予想しています。

上記5銘柄の予想PERとPBR:9月7日時点

コード 銘柄名 PER:倍 PBR:倍
2768 双日 7.5 0.61
5020 ENEOS HD 10.2 0.59
8002 丸紅 6.8 0.82
8306 三菱UFJ FG 9.3 0.45
9412 スカパーJSAT HD 9.8 0.53
出所:PERは、9月7日株価を2022年3月期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成

 日経平均は既に3万円近くまで上昇していますが、上記銘柄はいずれも日経平均と比べると出遅れています。

日経平均と上記5銘柄の、株価推移比較:2019年12月30日~2021年9月7日

出所:QUICKより作成、2019年12月30日の値を100として指数化

投資したいと考える理由

 以下、5銘柄を選んだ理由を、簡単にコメントします。

【1】ENEOS HD

 ENEOS(エネオス)というと、皆さまが思い浮かべるのは、ガソリンステーションかもしれません。ガソリン小売業は、同社のたくさんある事業の中の1つに過ぎません。

 同社はエネルギー総合企業で、川上(原油資源開発)から川下(石油製品)まで、一貫生産できる強みを持ちます。また、銅鉱山の経営も行っており、最近の銅価格急騰でもメリットを受けます。

 ENEOSのメインビジネスは化石燃料の利用ですが、時代の流れに合わせて脱炭素にも取り組む総合エネルギー企業として私は評価しています。

 ちなみに、脱炭素に向けて水素ステーション運営も行っています。水素関連銘柄として注目されることもあります。高配当利回り株としてじっくり長期投資して良いと考えています。

【2】三菱UFJ FG

 上記5銘柄の中で、一番投資価値が高いと私が考えているのが、三菱UFJ FGです。

 低金利の長期化で国内商業銀行業務の収益環境が悪化していますが、三菱UFJは、海外事業の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・カードなどへの多角化)によって高収益を維持してきました。

 コロナ禍前(2019年3月期まで)は、8,000億円~1兆円の純利益を安定的に稼いでいました。コロナ禍で2020年3月期の純利益は5,281億円に低下しましたが、2021年3月期の純利益は7,770億円に回復、2022年3月期には8,500億円に回復する会社目標を出しています。

 これだけ高い利益を安定的にあげる力があることが見直されれば、株価はさらに上昇する余地が高いと考えています。

【3】丸紅双日

 いずれも総合商社です。コロナが完全に収束すれば純利益で最高益の更新を続ける力があると評価しており、株価が割安な今が投資の好機と判断しています。

 両社とも、資源事業に加え非資源事業を強化することで、コロナ前の2019年3月期に純利益で最高益をあげています。丸紅は、2019年3月期が純利益で2,308億円の最高益です。双日は、2019年3月期純利益が704億円で最高益です。

 コロナ禍で両社とも大きなダメージをうけました。

 丸紅は、2020年3月期に1,974億円の純損失に転落しました。資源価格の急落に加え、過去に買収したガビロン社の減損などが足を引っ張りました。双日は、2021年3月期の純利益が270億円まで落ち込みました。

 ただし両社とも、世界景気の回復・資源価格の上昇によって、現在は収益が急回復しています。

 丸紅は今期(2022年3月期)純利益が2,300億円と最高益とほぼ同水準まで回復する予想を出しています。第1四半期(2021年4-6月)だけで既に純利益1,121億円と通期予想の49%をあげていますので、通期予想は上ぶれし最高益を更新すると考えられます。

 双日は今期純利益が530億円まで回復する予想を出しています。第1四半期(2021年4-6月)に純利益469億円と通期予想の32%をあげ、好調です。

 両社とも新興国で幅広くビジネスを展開しており、コロナが収束すれば新興国での利益がさらに伸びると予想しています。

【4】スカパーJSAT HD

 スカパー事業の利益は不安定ですが、衛星事業(JSAT)で安定収益を稼いでいます。衛星事業では5月20日、NTTとの業務委託契約を締結し、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業を行うことを発表しました。

 成長性はあまり期待できませんが、安定的に収益を稼いでいく高配当利回り株として長期投資していく価値があると考えています。

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