※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の香川 睦が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【資産形成】FIREを目指したい?先ずはナスダック100の長期投資から
---------------------------

「老後2,000万円問題」と「FIREブーム」の共通点

 国内では若年層を中心に「資産形成ブーム」が続いています。

 2019年に金融庁が示した報告書をきっかけに「老後2,000万円問題」が浮上。老後には公的年金の支給だけでは足りないとの見方が広まり、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などを活用した投資を普及させています。

 そして最近は、米国から輸入された言葉「FIRE」も注目されています。FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」の略で、経済的な独立と早期のリタイアを実現するための方法論です。はやり言葉で言えば、どうしたら早期退職できそうな「億り人」(金融資産で1億円を超える個人)を目指せるかといった議論です。

 筆者は、老後2,000万円問題にもFIREにも共通する本質は「いかに若い世代で長期投資を始め、積み増し投資を続けるか」だと考えています。将来に発生する資金需要に備えて長期投資を実践する重要性は、投資教育を受けた欧米の個人投資家にとっては常識とも言えます。

 そこで本稿では、米国のナスダック100指数への長期分散投資を例にして考えたいと思います。

 図表1が示すとおり、ナスダック100指数は30年で約75倍に成長してきました。この間の平均リターンは年率換算で17%でした(配当収益は除く)。米国のイノベーション(技術革新)と成長企業が生み出す果実を着実に取り込んできた株価指数として知られています。

<図表1:ナスダック100指数の長期(30年)リターンに注目>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年8月11日)

ケース別に検証した長期投資の成果(市場実績)

 図表1が示す通り、ナスダック100指数のパフォーマンスは「ハイリスク・ハイリターン」が特徴です。つまり、リスク(リターンのぶれ)が大きくなる場面は多かったものの、長期目線では高いリターンが期待できたグロース株(成長株)の投資成果を象徴しています。

 このことが、定時定額(積立)投資をする場合のメリットとされる「ドルコスト平均法」と「複利運用(雪だるま)」効果を期待させる点と言えます。そこで、ナスダック100指数(円換算)に約30年投資してきたと仮定する2つのケースを検証したいと思います。

 図表2は、1991年初を起点としてナスダック100指数(円)に「3カ月ごとに10万円ずつ投資してきた場合」を想定しました。

 累計投資元本(簿価)が1,230万円(10万円×123回)だったのに対し、最近の時価総資産は約1億6,729万円と約13.6倍に膨らんできました(2021年6月末)。途中で乱高下しながらも成長期待が高かったナスダック100指数だからこその投資実績が検証できます。

<図表2:10万円投資でスタートし「3カ月ごとに10万円」を追加投資したケース>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年6月末)

 次の図表3は、1991年初に「100万円」をナスダック100指数(円換算)に投資し、その後は「3カ月ごとに10万円ずつ投資してきたケース」を想定しました。

 累計投資元本(簿価)は1,320万円(初回100万円+10万円×122回)で、時価ベースの総資産は約2億1,519万円に膨らんできたことを示します(2021年6月末)。

 両方のケースとも、20歳代で投資をスタートさせたら60歳を迎える前に「億り人」となることが可能だったという検証結果です。ナスダック100指数への長期分散投資は「資産形成の武器」だったと言えるでしょう。

<図表3:100万円投資でスタートし「3カ月ごとに10万円」を追加投資したケース>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1991年初~2021年6月末)

ナスダック100指数に長期分散投資する方法

 ナスダック100指数は、毎年12月に銘柄の入れ替えが実施されます。新陳代謝を繰り返しながら、長期パフォーマンスでS&P500指数を大きく凌駕(りょうが)してきました。そこで、インデックスファンド(指数連動型ファンド)を活用してナスダック100指数への長期分散投資を実践するツールをご紹介したいと思います。

 図表4は、楽天証券で投資できるナスダック100指数連動型ファンドを一覧にしたものです。

 米国籍ETF(上場投資信託)の「インベスコQQQトラスト・シリーズ1」(QQQ)は、米国市場でたいへん人気が高く(愛称は「トリプルQ」もしくは「the Q’s」)、運用純資産は約1,853億ドル(約20兆円)に達しています。

 当然ですが、ナスダック100指数の上位銘柄と同様にGAFAM(グーグル[アルファベット]、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)が上位組み入れ銘柄となっています。

 また、国内市場(東証)にも複数のナスダック100指数連動型インデックスファンドが上場されています。追加型公募投信は販売手数料ゼロで、100円から投資をスタートすることが可能です。

 これらのファンドに投資するにあたり、米国経済が生み出すイノベーション(技術革新)の進展と利益成長期待を取り込んでいく長期目線が大切と言えます。したがって、短期的な株価下落や調整局面に遭遇しても、「定時定額(積立)投資」を続けられる心の準備が大切です。

 当初の投資金額や、定時定額を「毎月」とするか「3カ月ごと」にするかは投資家それぞれの資金繰りや投資スタイル(リスク許容度)により異なります。ナスダック100指数連動型インデックスファンドを活用した長期投資を実践することで、「貯めながら増やす資産形成」を目指したいと思います。

<図表4:ナスダック100指数のインデックスファンドを知る>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年8月11日)

▼著者おすすめのバックナンバー
2021年8月6日:外国株式のリターン格差が鮮明に:夏秋は米国株高も小休止?
2021年7月30日:米債務危機の悪夢再び?夏秋の「株安アノマリー」は投資の好機か
2021年7月16日:身代金5億円?サイバー攻撃の脅威と米国ETFの投資戦略