米国株式、中国株式、インド株式は日本株式より優勢

 世界株式は調整モードの兆しをみせています。米国市場では、バイデン政権の財政出動を巡る不透明感、ビデオゲーム小売りのゲームストップ(GME)に象徴される個人投資家による投機取引による影響が警戒され、「恐怖指数」(VIX)は37ポイントまで上昇しました(27日)。

 ただ、高値圏で推移してきたことで、相場反落や適宜のスピード調整は健全な動きにも感じられます。

 図表1は、世界で注目されているMSCI指数をベースに米国株、中国株、インド株と日本株の相対推移を示したものです。約5年の騰落率で比較すると中国株は+104.7%、米国株は+71.9%、インド株は+62.8%と、日本株(+25.1%)を上回っています(27日)。リスク調整後リターンの面でみても、こうした外国株式のリターンが日本より優勢だった実績がわかります。

 投資や資産運用の世界で知られる「ホームカントリーバイアス(Home Country Bias)」とは、自国市場への投資に偏重しやすい個人投資家の姿勢について用いる表現です。自国市場重視に傾きやすい要因として、自国市場はわかっているつもりで投資しやすい、自国の経済成長を期待しやすい、外国市場はよくわからないなどが挙げられます。

 ただ、私たちの公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、資産成長を目指す株式投資部分について「国内株式5割+外国株式5割」を基本ポートフォリオ方針としています。

 外国株式への投資は手軽に実践できる時代となりました。今後10年、20年の長期的視野で国際分散投資を実践していくことは資産運用に幅をもたせる機会になると思います。

<図表1:米国株、中国株、インド株が堅調推移>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2017年初~2021年1月27日)

2021年に主要市場の企業業績は増益転換へ

 昨春を起点にした世界株高は、大規模な金融緩和策と財政出動、ワクチンの実用化と接種開始を受け、市場が「世界経済は2021年央から正常化に向かう」とのシナリオを織り込む動きと言えます。

 目先の株価調整は想定の範囲内で、2021年も世界株式は堅調傾向を維持すると考えています。ただ、2020年にみられた予想PER(株価収益率)の拡大よりも、EPS(1株当たり利益)の回復が株価堅調のエンジンとなりそうです。

 図表2は、MSCI指数をベースに主要株式市場を「1年前比騰落率」の降順(高い順番)に並べ、予想PERや予想増減益率(予想EPSの前年比)を示した一覧です。1年前比のリターンでみても、中国株、米国株、インド株のリターンは日本株のリターンを上回っていることがわかります。

 また、各市場とも2020年は減益で着地する予想ですが、2021年の業績は前年比3割から4割の増益が見込まれており、2022年も二桁増益が続くと予想されています(市場予想平均)。

<図表2:主要市場の企業業績は2021年に増益転換へ>

*予想PERはMSCI指数ベースの予想EPS(市場予想平均)にもとづく
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年1月27日)

 市場別、製造業、サービス業で濃淡はありますが、昨春からのコロナ禍で多くの企業がコスト削減を進め事業効率を改善させてきました。企業によっては内部留保を厚めにして資金繰りを改善させ、M&A(企業買収)も積極化しました。本年後半に世界経済が正常化に向かい事業(ビジネス)環境が改善すると、業績や収益率の改善が加速すると考えられます。

 また、米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)は直近のFOMC(米連邦公開市場委員会)(1月26~27日)で、サービス業を中心とする雇用回復が明確となるまで低金利政策と流動性供給を維持する方針を表明しました。

 パウエルFRB議長とイエレン新財務長官(元FRB議長)が協調して長期金利の上昇を抑制することも予想されます。リスク資産を象徴する株式には底堅いトレンドが想定しやすい環境となっています。

長期視点で中国株式やインド株式にも注目したい理由

 中国の経済成長には勢いがみられます。主要国のなかで2020年の実質成長率がプラス(+2.3%)だったのは中国だけでした。2028年にもGDP規模で米国を抜き「世界1位」になるとの予測もあります(英国調査機関CEBR)。そして中国は、IT(デジタル)分野を強化して米国と対峙(たいじ)する姿勢をみせています。

 次に高い成長を遂げるとみられる国はインドです。同国の新型コロナ感染動向はいまだ深刻ですが、その長期的な潜在成長余地は大きいと言われています。実際、世界のGDPランキング予測によると、2030年にはインドが日本を抜き、中国と米国に次いで「世界3位」に浮上するとの予想もあります(図表3)。

<図表3:主要国のGDP規模ランキング予測>

出所:CEBRなどによる各種予測より楽天証券経済研究所作成

 米国株式に続き注目したい投資先として、アジアの大国から「世界大国」に成長し、米国と覇権争いをするに至った中国に注目したいと思います。

 図表1で示したとおり、世界の投資マネー(外国人投資家)は、世界経済を主導する景気回復と長期的な成長期待を視野に中国株式を物色していることを示しています。

中国IT株に分散投資できるETFとは?

 外国株式に分散投資できる公募投信やETF(上場投資信託)は多岐にわたります。本稿では、国有企業を除く中国企業(IT系民営企業が多い)に分散投資する米国籍ETFであるCXSE(ウィズダムツリー中国株ニューエコノミーファンド)をご紹介します。

 中国経済や中国株式に成長期待を感じる一方、非効率な国有企業(オールドエコノミー)は避けたいとの投資ニーズは根強いと考えられます。

 CXSEの組入上位銘柄としては、テンセント・ホールディングス(騰訊控股)、アリババ・グループ、中国平安保険、美團點評、JDドットコム、網易、バイドゥ(百度)など香港、米国、中国本土に上場される主力IT系企業が挙げられます。

 直近のファンドの運用時価総額は約8.7億ドル(約900億円)で、組み入れ銘柄数は約180社となっています。同ETFの経費率(信託報酬)は年率0.32%と同種のファンドと比較して抑えられています。

 こうしたETFに資金を投じることで、「中国のニューエコノミー株への分散投資」を比較的簡便に実践することができます。図表4で示すCXSEのパフォーマンスは、中国のニューエコノミー株の収益成長期待を映したものと考えられます。(参考情報:米国籍ETFの売買は米国株式の売買と同様で1口(株)から売買できます)。

<図表4:中国のニューエコノミー株に分散投資する米国籍ETF(参考情報)>

*上記は参考情報であり、特定の投資商品を推奨する目的のものではありません。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2021年1月27日)

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