※このインタビューは2018/12/03に公開した記事となります。
人気ブログ「すぽさん投資ぶろぐ」を運営するすぽさんは、個別株で大きな利益を上げている個人投資家のひとり。当初は中国株をメインにしていましたが、リーマンショック後、日本株に切り替え、以来「高成長」「ビジネスモデル」「割安」の3つを軸に置いた中長期投資を行っています。2018年6月に約20年間勤務した会社を辞め、専業投資家として歩み始めたすぽさんに、投資を始めた経緯や投資戦略について聞きました。
5年4カ月で資産10倍を達成!
──ひと口に投資ブロガーといってもインデックス派から個別株派までさまざまな方がいらっしゃいます。今日は「個別株派の代表」としてお話をお聞かせください。すぽさんは2011年から毎月ブログでポートフォリオと投資成績を公表なさっています。2011年11月の時点から何倍に増えたかがひと目で分かるようになっていますが、2018年10月の成績を見ると9倍になっています。7年で9倍はスゴイですね。
実はすでに10倍まで到達しているんです。たしか2017年の2月だったと思います。
──ということは5年4カ月で資産10倍を達成された?
はい。投資を始めたときは、5年で2倍に増やせたら御の字かな、と思っていたので、自分としては想定外でした。
──ただ、その後は少しマイナスぎみ?
2017年2月以降も悪くはなかったんです。ずっと10倍から11倍の間を推移していましたし。ところが、この10月に保有銘柄のうちのいくつかが大幅に下落しまして。結果、久しぶりに10倍を切りました。
──10月は日経平均株価もかなりダウンしましたし、皆さんけっこう痛手を受けたようですね。
まあ、長く株をやっているといろいろありますからね(笑)。ずっと右肩上がりなんてあり得ません。実際、これまでも何度か痛い目に遭っていますし。だから、今回も特に焦りというのはなくて、今はちょっと我慢のときかなと思っています。
──投資を始めたころの話を聞かせてください。最初に株を買ったのは2011年ということでいいんですか。
いえ、その5年ほど前になります。僕は新卒で、IT系大手企業に就職したのですが、入社7~8年目、30歳のとき、会社が企業型確定拠出型年金(DC)を導入しました。ただ、そのときはまったく投資に関心がなかったので「インデックスとアクティブと、どっちを選ぶ?」と会社側に聞かれて、「なんとなくイケてそうだからアクティブで!」と言葉のノリで選んだくらいです(笑)。
──印象とは違いましたか?(笑)
はい、まったく(笑)。ただ、それをきっかけに、投資関連の情報をなんとなく見るようになりました。特に、投資に興味を持つ大きなきっかけになったのは、当時はやっていた、ロバート キヨサキさんの『金持ち父さん・貧乏父さん』。さらに「お金の神様」と呼ばれていた故・邱永漢(きゅう・えいかん)さんの本で、ドン、と背中を押されたように思います。こうした本を読むうち、株式投資とは何かがなんとなく分かってきて、よし、自分も挑戦してみようと。当時はまだ独身で、ある程度貯蓄もあったので、使う予定が特になかった300万円くらいを元手に始めました。
──初めて購入した株を覚えていますか?
たしかシダックスだったと思います。カラオケが好きだったので、株主優待目当てで(笑)。ただ、その後は日本株ではなく、中国株ばかり買うようになりました。
──いきなり中国株ですか?
ぶっちゃけ、邱永漢さんの影響です。著書の中で「中国にはこれから伸びる企業が無数にある、日本企業よりもそれらの企業の株を狙ったほうが成功しやすい」と推していらっしゃいました。
──当時、中国企業の情報を入手するのは簡単でなかったのでは?
そうですね、日本語の情報源としては中国株サイトが一つか二つあったくらい。あと中国株の掲示板もありましたけど、10日に1度くらいしか書き込みがなく、あまり役には立たなかったですね(笑)。
リーマンショックを機に投資スタイルを見直した
──乏しい情報源の中から、どのように中国株銘柄を選んだのですか。
僕は、前々から企業経営やマーケティングに興味があり、その手の本をよく読んでいました。仕事で必要だったわけではなく、個人的な関心で勉強していたんです。そんな中、「企業が生き残る上で最も重要なのは“ビジネスモデル”ではないか」ということを思うようになったんです。ビジネスモデルがしっかりしていれば、簡単には他社の追従を許さないため、将来的にも有望ではないかと。だから、投資を始めたときも、その会社がどんなビジネスモデルなのか、ということを第一に考えました。
それともう一つは「割安」であることも、銘柄選びには重要だと考えました。株式投資について勉強するうちに、割安な株、つまり本来の実力よりも安い値がついている株を購入し、高くなるのを待って売るのが唯一の必勝法ではないかと考えるようになりました。それで、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)の数値が低い企業を狙いました。
──いわゆるバリュー投資ですね。
そうですね。当時はPERが低い銘柄を買っておけば間違いないと思い込んでいました。まあ、その考えは少しずつ変わっていくわけですが。
──どうように変わっていくのかは後ほどお伺いするとして、中国株投資の成績はどうだったのですか。
そのころ、僕はあるコンテナ会社に大きく投資していました。このコンテナ会社は、ビジネスモデルではなく中国の成長に賭けました。中国という成長市場の中でPERが4か5という激安銘柄だったので、絶対に上がるだろうと。ところが、これが待てども待てども上がらないわけです。バリュー投資の場合、ある程度我慢が必要なことは分かっていましたが、それでもさすがにしびれを切らして、結局手放しました。ただ、その一方で、あまり当てにしていなかった、蒙牛乳業という牛乳メーカーの銘柄や、中国人民財産保険という損害保険の銘柄が、短期間でグンと上がったりしたんです。数年で5倍、10倍になったり。だから、トータルではプラスでした。
──最初から順調だったわけですね。
はい、ただ、それも短い間でしたが。
──というと?
株を始めて2年後くらいだったかな、元本が2倍を超えて喜んでいたら、リーマンショックが到来。みるみる資産が減っていき、最終的には元本の6割くらいまで減らしました。
──でも、そのあたりで食い止めた?
そうですね、その後も中国株中心でしたが、わりと早い時期に元本まで復活できました。ただ、その頃から自分のやり方は果たして正しいのだろうかと考えるようになったんです。
それまでは割安株狙いだったわけですが、先ほど話したコンテナ会社とか、これだと狙った会社の株価がいっこうに上がらないわけです。それに対して、あまり期待していなかった銘柄の株価がグングン上がっていった。この違いは何だろうと考えるうちに、大事なのは“企業の成長性”ではないかという結論にたどり着きました。もちろん、割安であることは重要です。しかし、それ以前の問題として、成長企業であることが大事なのではないかと。
──なるほど。
よくよく考えてみると邱永漢さんも「成長株を狙いなさい」とおっしゃっていたんです。ところが、僕はPERやPBRの数値ばかりに目がいき、そのことを真剣に受け止めなかった。中国株投資を始めて数年が経ち、ようやくその真意に気づいたわけです。
──そして、成長株投資へとシフトしていくわけですね。
はい。ただ、成長株投資となると中国株をターゲットにするのは難しいんです。中国語も分からないし、先ほど言ったように情報源も乏しい。成長性を判断する材料となる情報が、自力ではなかなか入手しにくいので。それで、悩んだ末、これはもう日本株をメインにするしかないかなと思い、中国株から日本株へと切り替えていくわけです。
──では、次回は日本株に切り替えた後のお話をお伺いします。
>>前編:割安株投資から成長株投資に転換するまで を読む!
>>後編:すぽさんが個別株投資にこだわるワケ を読む!
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