ドル建て日経平均が強気相場を再確認した

 米国株式は軟調相場となっており、S&P500指数は最高値(9月2日)から約9.6%下落しました(23日)。その一方で、日経平均株価の相対的な底堅さが目立っています。

 外国人投資家が注目している「ドル建て日経平均」(日経平均÷ドル/円相場)は先週、2019年12月17日(219.82ドル)以来の「心理的な節目」とみなされていた220ドルを突破(図表1)。

 バブル崩壊後の戻り高値となる223.39ドルに上昇し「新たなステージ」に挑む動きをみせました(18日)。年初来リターンで比較すると、円表示の日経平均(▲1.3%)よりもドル建て日経平均(+1.7%)が優勢です(23日)。

 外国人投資家、なかでも中長期で投資を行う機関投資家は、日本株投資に為替ヘッジ(コストをかけて為替変動リスクを抑制する方法)をかけない場合が多く、投資成果はドルベースで評価されます。

 ドル建て日経平均やMSCI日本株価指数(ドル建て)が象徴する「ドルベースでみた日本株リターンの堅調傾向」は、海外勢(外国人投資家)のセンチメントを改善させる可能性があります。

 図表1でみるとおり、中長期トレンドを示す3年(162週)移動平均線は、アベノミクスがスタートした2013年から上向きを維持しています。

 年後半の世界経済の持ち直しに加え、菅義偉首相が率いる新政権の「成長戦略再始動期待」も株式市場の下支え要因とみられます。

 ドル建て日経平均の現在値から最高値(1989年12月の270.62ドル)までは約2割の上昇余地となっています。

<図表1>ドル建て日経平均は約30年ぶり水準に上昇

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1980年初~2020年9月18日)

「世界の景気敏感株」が織り込む経済の持ち直し

 日経平均の底堅さは、「世界の景気敏感株」と呼ばれる日本株式が循環物色で選好されている結果と言えそうです。

 OECD(経済協力開発機構)は9月16日、「2020年の世界・実質経済成長率は▲4.5%になる見込み」との最新予想を発表しました。これは、6月に示した前回予想(▲6.0%)から1.5ポイント上方修正したことになります。

 中国に続いて米国経済が活動を再開したことを反映した予想の変更です。OECDは同時に「2021年の世界・実質経済成長率は+5.0%」と来年のプラス転換も予想しています。

 こうした見通しは、新型コロナの感染拡大で再びロックダウン(都市封鎖)が実施されず、2021年後半までワクチンが広く行き渡らないとの前提で試算されたものです。

 図表2は、世界のGDP3大国(米国、中国、日本)の四半期別・実質成長率について実績と見通し(市場予想平均)を示したものです。

 各国は、感染拡大防止と経済復興の両立に知恵を絞っており、地域とセクターで強弱はあっても、総じて本年後半(第3Q以降)に経済が上向きに転じる可能性を示しています。

<図表2>主要国の実質GDP成長率は上向きへ

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年9月23日)

対コロナ「ハンマー&ダンス」で経済回復を目指す

 新型コロナウイルスの感染動向は予断を許さない状況です。とはいえ、全国の感染者増加数は低減傾向にあります。

 東京都は23日、都内の新規感染者を59人と発表しました。1日当たりの新規感染者数が60人を下回ったのは6月30日以来で、7月以降で初めてです。

 図表3は、国内の累計感染者数と「7日前比増加数」の推移を示したものです。7日前比増加数は安定しており、「経済復興」に注力できる環境となっています。

 政府は「Go To トラベルキャンペーン」から除外されていた首都圏住民の旅行、東京発着ツアー、東京にある施設を10月1日から「割引」の対象とする方針を発表。「Go To イベントキャンペーン」についても、イベントの入場料や商店街の催しを補助する事業を検討中です。

 政府は、10月には全世界からの入国者の受け入れを一部再開する方向で検討しているとも報道されています。

「ハンマー&ダンス」とは、ウイルス感染と闘う医療専門家の間で使われてきた言葉とされます。

 感染動向が拡大と抑制の「波」を繰り返すなか、外出自粛・休業要請を発せざるをえない事態を「ハンマー」と呼び、制限を緩和して経済回復と感染防止のバランスをとる状況を「ダンス」と言います。

 制限を優先する「ハンマー」と緩和を優先する「ダンス」を繰り返しつつ内外経済の回復余地を探る動きが「新常態」(ニューノーマル)とも言えるでしょう。

<図表3>国内の新型コロナウイルス感染動向

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年3月10日~9月23日)

「ニューエコノミー関連株」の堅調傾向は変わらず

 コロナ禍がカタリスト(契機)となり、国内市場では「ニューエコノミー関連株」の優勢が鮮明となっています。

 図表4は、2013年以降のJANE(ジャパン・ニューエコノミー・インデックス)とTOPIX(東証株価指数)の総収益パフォーマンスを比較したものです。

 JANEとは「新経連株価指数(Japan New Economy Index)」の略称で、一般社団法人・新経済連盟(略称は新経連)が2019年6月20日に発表した株価指数です。

 新経連は、イノベーション(創造と革新)、アントレプレナーシップ(起業家精神)、グローバリゼーション(国際的競争力の強化)の促進を目的に設立され、会員企業にはIT関連企業やベンチャー企業が多いことで知られています。

 多くの会員企業が東証、東証マザーズ、ジャスダックに上場されており、JANEは会員企業約100銘柄で構成される浮動株調整時価総額加重平均指数となっています(1銘柄の構成比率上限は3%/起算日は2012年6月1日)。

<図表4>新経連株価指数(JANE)は過去最高値を更新

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2013年1月初~2020年9月23日)

新経連株価指数(JANE)はTOPIXより反発力が強い

 JANEとTOPIXの総収益パフォーマンスを比較すると、JANEの方がリスク(リターンのブレ)は高いものの、中長期の総収益ではTOPIXより優勢で、反落した場面からの「復元力」に特徴がみられます。

 本年春以降は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)と総称される社会・経済・産業のIT(デジタル)化とニュービジネスの成長期待がJANEの堅調を支えています。

 JANEを構成する上位ウエイト銘柄としては、メルカリ、マネーフォワード、ベネフィット・ワン、ニトリホールディングス、ファンケル、富士通、サイバーエージェント、セイノーホールディングス、富士ソフト、トレンドマイクロなどが挙げられます(8月末)。

 こうしたJANEに連動する投資成果を目指すインデックスファンド(追加型公募投信)に、「楽天・新経連株価指数ファンド」(略称:JANEインデックス/運用:楽天投信投資顧問)があります。

 同ファンドの一口当たりNAV(基準価額)は1万2,139円と本年2月27日の設定来で約21.4%上昇(9月23日)。同期間のTOPIXの上昇率は約12.7%でした。

 JANEインデックスは、中長期の視点ではTOPIX(市場平均)よりも高いリターンを生み出していくと思われます。

 菅・新政権が推進する「スガノミクス」(縦割り行政と既得権益の打破)が前進するなら、国内経済のニューエコノミー化も進展していくと考えられるからです。

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