信用取引の保証金率とは? 

前回までのあらすじ

タケル ボクは26歳の営業マン。会社を作って、尊敬するイーロン・マスクみたいな大富豪になりたい! どんな会社が稼げるかウオッチする目的と、起業資金を増やすために株式投資をはじめて3年。だけど今、持っている株式のほとんどが売り時を逃して、下がりっぱなし。伸びそうなR株を見つけたのに、資金があと少し足りない……。

――こんな悩みを抱えたタケルは、「信用取引はじめて道場」に通い、信用取引シミュレーションを試してみることになった…。

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タケル ドーシタ師範、前回の「4の巻」で話していた、信用取引で注意しなければならない『[4]保証金率』って何ですか。

ドーシタ師範 前回の「4の巻」で説明が途中だったな。楽天証券の総合口座を開設しているなら、注文の出し方などを予習できるツール「信用シミュレーション」が使える。新たに取引をする新規建て(しんきだて)」(◆)で、建玉(たてぎょく)や、信用取引を始めるときに証券会社へ預ける保証金(自前資金)がどう変化するか、自分で計算しなくても、あらかじめ確認ができるのだ。

タケル ということは、初心者じゃなくても、取引前に使えるツールですね。

 

 

ドーシタ師範 その通り。この「信用シミュレーション」に前回の「4の巻」のように入力していくと、下の画面「信用シミュレーション結果」に『[4]保証金率』が表示される。

タケル 『[4]保証金率』には「296.00%」と表示されています。

ドーシタ師範 保証金率とは正確に言えば、委託保証金率(いたくほしょうきんりつ)」(◆)のこと。つまり、新規建てに必要な保証金の余裕割合を示している。この保証金率296%は、「300,000円」の保証金に対し、新規建て「101,300円」の取引をした状態を表すのだ。

保証金300,000円で新規建て101,300円した場合の保証金率

(保証金:300,000円)÷(建玉:101,300円)=(保証金率:296%)

タケル 新規建てに必要な保証金の余裕割合…。

ドーシタ師範 オウム返しだな…。これが30%未満にならなければいいんだが、まず前回のおさらいからするぞ。「4の巻」で新規で買い建てた建玉は『[1]建玉合計』に表示されている「101,300円」だ。この取引は『[2]必要保証金合計』に表示されている「30,390円」分の保証金のレバレッジで行われたことになる。

株価1,013円で100株を新規で買い建てた場合に必要な保証金

1,013円×100株=(取引金額:101,300円)
                  ↓
■取引金額の30%が保証金として必要になる
(取引金額:101,300円)×30%=(必要保証金:30,390円)

 この計算式に当てはめると、『[5]保証金余裕額』から、新規建てできる取引金額が分かる。

(取引金額)×(保証金率:296%)=(必要保証金:269,458円)
                  ↓
(取引金額:797,595円)=(保証金率:296%)×(必要保証金:269,458円)

 まとめると、保証金率296%の意味は、これから797,595円分の新規建て取引ができるということになる。

信用取引の新規建余力が「0」の意味は? 

タケル ? でも『[6]新規建余力』が「0円」になっています。このシミュレーション、壊れているんじゃないですか。

ドーシタ師範 よく気づいたな! さっき、この取引は『[2]必要保証金合計』に表示されている「30,390円」分の保証金のレバレッジで行われたことになると言ったが、30万円のうち、すでに「30,390円」分を使い、保証金は30万円未満の状態になっている。[2の巻]でも少し触れたが、保証金は保証金率とともに最低金額の制約もある。楽天証券の場合、30万円が最低委託保証金額と決まっている。だから、『[6]新規建余力』が「0円」、つまりこれは新規建てができないことを表している。では、虎の巻5を授けよう。

虎の巻5委託保証金の状態が基準に満たなければ、新規建て取引はできない
委託保証金率が30%以上、かつ委託保証金額が30万円以上なければ、新規建て取引はできない

タケル 取引チャンスを逃さないために、保証金の状態を常にチェックする必要があるんですね。あれ? さっき「300,000円」入金したはずなのに…『[3]受入保証金合計』が「299,848円」と、微妙に減っています。

 

ドーシタ師範 意外と細かく気づくな。いいことだ。

タケル そんなの当たり前です。ボーナスから捻出した保証金が減っているんですよ!

ドーシタ師範 あ、あわてるな。これはシミュレーションだ。本当のボーナスはまだ減っていないぞ。

タケル そうでした。

ドーシタ師範 この微妙に減った分の正体は、取引手数料と金利だ。新規建て取引が成立した瞬間に、取引手数料と金利は必ず発生するコストになる。このコスト分は保証金から差し引かれるため、最低委託保証金額に足りず、次の新規建て取引ができないこともある。だから、あらかじめコスト分を考慮して保証金を入れておかなければならない。

タケル 取引チャンスを逃さないために、保証金の状態を常にチェックする必要があるんですね。

ドーシタ師範 実はこのコスト、信用取引にとっては重要なことだから、また機会を改めてきちんと説明するからな。

タケル わかりました。ところで、ドーシタ師範、楽天証券から信用取引口座開設のお知らせがきました!

ドーシタ師範 きたか。ついに本当の信用取引デビューだな。

――【6の巻】へ続く(2020年8月末公開予定)

◆新規建て(しんきだて)とは[信用取引ことば解説]

 信用取引をスタートすることを「新規建て」または「新規注文」という。信用取引で保有する株式のことを「建玉」と言い、建玉を反対取引で決済することを「返済」という。

◆委託保証金率(いたくほしょうきんりつ)とは[信用取引ことば解説]

 新規建て取引の際に必要な保証金の余裕割合を示す。30%以上なければ、新規建て取引はできない。

信用取引はじめて道場

 この連載では、信用取引をスタートするために必要な準備と、株式の売買一巡するために求められる知識とテクニックを身につけてもらうことを目的にしています。

「信用取引は難しくて、よく分からない」という人にもできるだけやさしく、信用取引のメリットとデメリット、そして手数料などのコスト、さらには特有の言葉遣いの解説をします。現物取引はしているけれど、信用取引はやったことがない人が自分で銘柄を選び、取引一巡するまでをナビゲートします。

 そして、信用取引が力を発揮するのはどんな局面なのか、上手な信用取引の仕方などの技を主人公とともに学び、株式取引のレベルアップをしていきましょう。