日経平均の上値が重い中、東証マザーズに短期資金が集中
コロナ・ショック後、日経平均株価とNYダウの戻りが遅い中、東証マザーズと米ナスダック総合指数が好調です。マザーズもナスダックも、早々と暴落前の高値を超えています。
東証マザーズ指数・米ナスダック総合指数、日経平均・NYダウの値動き比較:2020年2月21日~7月7日
日経平均とNYダウの戻りが遅いのには、共通の理由があります。コロナ危機でダメージを受けている製造業やオールド・インダストリーの比率が高いことです。NYダウでいうと、航空機大手ボーイングや建設機械大手キャタピラーが、足を引っ張っています。
一方、東証マザーズとナスダックの上昇率が高いのにも、共通の理由があります。コロナ危機がきっかけで成長期待が高まったバイオ・医関連株やリモートワーク・リモート会議・Eコマース関連株の比率が高いことです。
米ナスダック総合指数は、世界のITインフラを支配しているGAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)の構成比が高く、コロナ後に一段と成長する期待が高まっています。私は、ナスダックの成長株は引き続き、投資価値が高いと考えています。
それでは、東証マザーズのバイオ株の投資価値は、ナスダックと比較してどうでしょうか? 私は、マザーズ成長株はナスダック成長株ほど高く評価することはできないと考えています。マザーズ成長株は、将来有望でも、まだ売上や利益を十分にあげていない株が多いからです。
世界で活躍し、巨額の利益を稼いでいるナスダック成長株とは、業績や財務がまったく異なります。その例として、アンジェスの現状を解説します。
ワクチン開発で期待されるアンジェスは、赤字続き
以下は、東証マザーズに上場している大阪大学発のベンチャー、アンジェス(4563)の株価(日足)と売買高です。新型コロナの予防用ワクチンを開発中で、実用化に向けた治験を近く開始すると発表したことから、人気沸騰しました。
株価は、3月の安値から6月の高値まで4カ月で6倍超に急騰しています。ただし、7月に入ってから、利益確定売りが増えて、急速に値を崩しています。気になるのは、売買高が5月前半のピークと比べて、低下していることです。
私はテクニカル分析において、売買高の変化を重視しています。売買高は、人気のバロメーターだからです。売買高が低下しているということは、株式市場での人気が低下し始めている可能性があります。
1つの不安材料は同社の業績です。上場来、黒字になったことがありません。2010年12月期から2019年12月期まで、以下の通り、ずっと純損失を計上しています。
▲19億円→▲18億円→▲17億円→▲14億円→▲23億円→▲41億円→▲47億円→▲37億円→▲29億円→▲37億円。そして、今期(20年12月期)も、会社は▲32億円の純損失を予想しています。
アンジェスは、コロナワクチンの開発で、欧米に大幅に劣後している日本勢の中の希望の星です。それでも、欧米勢に比べると、ワクチン供給までのスピードと供給できる規模において見劣りします。
日本政府は、英グラクソ・スミスクラインなど、ワクチン開発で先行する欧米勢から、ワクチンを購入する検討もしています。供給できるスピードや規模で勝る欧米勢が、先にワクチンを開発して、世界市場を押さえてしまう可能性もあります。
アンジェスが株式市場の期待に応えるだけの売上収益を獲得できないと、株価は大きく下がる可能性もあります。今、投資するのは、リスクが高いと考えています。
上げる時も下げる時も、値動きが大きい東証マザーズ
東証マザーズの値動きをアベノミクスがスタートした2013年以降について、日経平均と比較した、以下のグラフをご覧ください。
東証マザーズ指数と日経平均の月次推移:2012年末~20年7月(7日まで)
東証マザーズは、2013年から2017年まで、日経平均を大きく上回る上昇を実現しています。ただし、定期的に急落する局面があります。値上がる時も値下がる時も、値動きが荒いのが特徴です。
2018年から2020年3月まで、東証マザーズは暴落しました。日経平均よりも、下落率がかなり大きくなっています。2013~2017年までの好パフォーマンスを一気に吐き出してしまいました。
ところが足元、マザーズ人気が大復活。2020年3月以降、マザーズ指数は短期的に約2倍となりました。マザーズ株が面白い時期はしばらく続くかもしれません。ただし、人気が去った後に大きく下がることもあるので、投資リスクの管理は慎重に行った方が良いと思います。
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