株は半年~1年先を織り込んで動く、先行き新型コロナ克服見えた?

 コロナ・ショックで、世界経済は、戦後見たことのない急激な悪化に見舞われています。米国の完全失業率は、新規失業保険申請件数の急拡大から判断して、戦後最悪の14%まで上昇している可能性があります。航空業界や観光業界では、このままでは世界中で破綻が増加する可能性もあります。

 そんな中、米国株を中心に、世界的に株の反発が続いています。日経平均株価も、CME(シカゴ先物取引所)先物で2万円を超える上昇となっています。不況下の株高は、いつまで続くのでしょうか?

 私は、過去25年間、日本株のファンドマネージャーをやってきましたが、「不況下の株高」は、過去、何度も見てきました。逆に、「好況下の株安」も何度も見ています。

「不況下の株高」は、後から振り返ると、半年~1年後に景気が回復することを先に織り込んでいた場合がほとんどです。逆に、「好況下の株安」は、半年~1年後の景気悪化を織り込んでいたと言えます。

 景気と株価は連動しているように見えて、連動していません。株価の方が、おおむね半年~1年、景気循環先取りして動くことが多いからです。

 つまり、今の「不況下の株高」が正しいとすると、半年~1年後に、景気が回復に向かうことになります。さすがに、半年後は難しいと思いますが、1年後ならばあり得ないこともないと、思います。

治療薬、ワクチン、簡単な検査キットの開発が急速に進み始めている

 新型コロナ不況が、世界的な金融危機に発展することを防ぐために、今、世界中で「なんでもありの財政・金融政策」が発動されています。ただ、これだけでは、景気を回復させる力はなく、世界不況の元凶となっている新型コロナウイルスを克服しないことには、景気回復はありません。つまり、景気を回復させるためには、治療薬、ワクチン、簡単な検査方法の早期開発が不可欠です。

 今、その開発が世界中で急速に進み始めています。従来ならば、3年かかるワクチンの開発も半年~1年で実現するかもしれません。今の「不況下の株高」は、治療薬、ワクチン、簡単な検査キットが利用可能になり、1年くらい先に、世界景気が回復していることを、織り込んでいるのかもしれません。

 世界の医薬品業界は、これまで、がんなどの治療に巨額の開発資金をかけ、ウイルス性感染症の治療・予防薬にあまり開発資金をかけてきませんでした。開発しても開発費を回収するだけの収益を得るのは難しいと考えられていたからです。

 がん領域では、近年、めざましい医療の進歩を遂げています。その結果、これまで治療不可能と考えられていたがんが、どんどん治療可能になってきています。一方で、感染症のパンデミック(世界的な大流行)に対して、人類は、あまりに無防備でした。

 ただし、今、世界中の国々がその誤りに気づき、いっせいに、新型コロナウイルスの治療薬・予防用ワクチン・簡単な検査キットの開発に一斉に注力しています。その成果が今、見え始めています。
 医学の進歩により、人類が新型コロナウイルスを克服する時期は、過去の感染症パンデミックよりは早くなるかもしれないと、少し期待が出つつあるところです。

 そんな中、日本株投資はどうしたら良いでしょうか? 私は、高配当利回り株から投資したら良いと思っています。そこで今日は、2種類の高配当利回り株をご紹介します。攻めの5銘柄と、守りの5銘柄です。

攻め・守りの意味

 本レポートでは、景気敏感業種(石油・タイヤ・総合商社・大手銀行など)から選ぶ株を「攻めの銘柄」景気変動の影響が比較的小さい業種(食品・通信・損害保険など)から選ぶ株を「守りの銘柄」と呼びます。守りの銘柄は、株式市場で、「ディフェンシブ株」と呼ばれることもあります。

 攻めの銘柄は値動きが荒く、下げる時は大きく下げ、上げる時には大きく上げる傾向があります。これに対し、ここで守りの銘柄と呼ぶものは、攻めの銘柄より価格変動が小さくなる傾向があります。ただし、株である以上、値上がり値下がりはします。あくまでも、相対的に値動きが小さいというだけですので、ご注意ください。

攻めの高配当利回り株5銘柄

 最近、株式市場で、景気敏感株の一部を買い戻す動きが出つつあります。たとえば、半導体関連株がそうです。

 コロナ不況で、世界中で、リモートワーク(在宅勤務)、リモート会議、巣ごもり消費が拡大している影響で、ネットを経由した経済活動が一段と活発になっています。それに伴い、自宅で使う高性能PC需要が拡大しています。その中核部品として、半導体の需要が回復しつつあります。また、これから始まる5G(第5世代移動体通信)が本格普及すれば、ネットを通じてのデータのやり取りが一段と拡大し、半導体の需要がさらに伸びます。

 コロナ・ショックで一時的に半導体産業の生産活動も停滞しましたが、ショックが一巡すれば、最初に、半導体産業の業績が回復してくると期待されます。信越化学工業(4063)東京エレクトロン(8035)などが有望と考えています。

 中国関連株にも、少しずつ動きが出てきています。中国で感染が終息に向かっている可能性があり、中国での生産活動再開が視野に入ってきたことによります。今週、急騰したファナック(6954)などが有望と考えています。

 ただ、今あげた銘柄は、配当利回りがさほど高くありません。今日は、景気敏感株の中でも、予想配当利回り4%以上のものから、投資の参考銘柄を選びました。世界景気悪化を嫌気して株価が下落している景気敏感株の中から、私が割安と考えるものを選びました。

攻めの高配当利回り5銘柄:2020年4月28日時点

コード 銘柄名 主要事業 配当
利回り
最低
投資額
5020 JXTG HD 石油精製 5.9 37,520
5108 ブリヂストン タイヤ 4.8 333,400
8031 三井物産 総合商社 5.4 148,300
8306 三菱UFJ FG 銀行 5.9 42,510
8591 オリックス リース 6.2 123,200
単位:【配当利回り:%】【最低投資額:円】
出所:配当利回りは、1株当たり年間配当金(会社予想)を4月28日株価で割って算出。ブリヂストンは2020年12月期、他は2020年3月期の配当金予想。最低投資額は、4月28日終値で最低投資単位100株を買うのに必要な金額。大手銀行はこれまでディフェンシブ業種に入れてきたが、景気の影響を受けやすくなってきたため、景気敏感株に分類

 JXTG HDは、2020年3月期の最終損益が、3,000億円の赤字に転落する見込みです。ただし、それは一時的な損失と考えています。原油急落にともなって在庫評価損が2,500億円発生したと見込んでいます。石油精製会社は70日の原油備蓄義務を負っています。原油が急落すると、石油製品の販売価格は大きく下がりますが、高値で仕入れた原料が残っているために、在庫評価損が発生します。これは原油が急落した時だけに発生する一時的な損失です。今後、原油が横ばいになれば、在庫評価損は出なくなります。原油価格が上昇に転じれば、在庫評価益が発生します。

 ところで、投資家の中には、高配当利回り株に投資する際、「予想配当利回りが高ければ高いほど良い」と考えて、機械的に予想配当利回りが一番高い銘柄を選ぶ方もいます。それは、あまりよい選び方ではありません。配当利回りは、確定利回りでないからです。利回りの高い銘柄には、将来、減配になるリスクが織り込まれていると考えるべきです。

 上に挙げた高配当株は、「比較的、安定的に配当が得られる」と私が期待する銘柄です。ただし、個々の銘柄にはいろいろなリスクがあり、将来減配になる可能性が無いとは言えません。予想配当利回りが一番高い銘柄に集中投資するのではなく、なるべく多くの銘柄に分散投資した方が良いと思います。景気敏感株とディフェンシブ株にも分散したほうが良いし、さまざまな業種にも分散投資した方が良いと思います。

守りの高配当利回り株5銘柄

 世界景気が減速しても業績への影響が相対的に小さいと考えられる「ディフェンシブ株」の中から、配当利回りが高めで、株価が割安と私が考える銘柄を選びました。

守りの高配当利回り5銘柄:2020年4月28日時点

コード 銘柄名 主要事業 配当
利回り
最低
投資額
2503 キリンHD ビール 3.1 207,000
2914 日本たばこ産業 タバコ 7.7 200,050
8766 東京海上HD 損害保険 4.5 496,700
9432 日本電信電話 情報通信 3.7 252,200
9433 KDDI 情報通信 3.6 318,500
単位:【配当利回り:%】【最低投資額:円】
出所:配当利回りは、今期1株当たり年間配当金(会社予想)を4月28日株価で割って算出。最低投資額は、4月28日終値で最低投資単位100株を買うのに必要な金額

 東京海上HDをディフェンシブに分類したのは、私の考えに基づきます。損害保険は、今のコロナ・ショックの影響で直接受ける悪影響はそんなに大きくないことから、ディフェンシブに分類しました。あえて言えば、貿易の減少で貿易関連の保険は悪影響を受けるかもしれません。ただし、自動車に乗る人が減り、自動車事故が減っているので、短期的に自動車保険の損益が改善するというプラス効果が予想されます。

 ただし、株価の動きは、けっしてディフェンシブとは言えません。運用で多額の株式を保有しているからです。日経平均が急落する局面では、保有株式の値下がりにより損保株も売られます。一方、日経平均の反発局面では、保有株式が値上がるため、損保株の上昇率も高くなる傾向があります。

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