年初来でも長期でも日本株式が劣勢である事実

 今週の株式市場では、4-9月期を中心に企業決算が発表されるなか、業績の先行き懸念がやや後退。日経平均やTOPIXは年初来高値を更新する動きとなりました(24日時点)。ただ、足元の株高は出遅れ修正やショートカバー(先物売りの買い戻し)の影響が大きく、米中貿易合意の行方、英国のEU離脱を巡る不透明感が上値を抑えやすい状況ともなっています。

 こうしたなか、昨年に続き今年も世界市場における日本株式の劣勢が鮮明となっています。グローバル投資家(機関投資家)がベンチマークとして使うことが多いMSCI株価指数をベースにすると、世界株式市場の年初来上昇率は+16.0%となっています。米国株式が同+19.6%となっている一方、日本株式は同+10.6%に留まっています。世界市場での日本株式の劣勢は珍しいことではありません。

 図表1は、平成元年(1989年初)を起点とし、日本株式、世界株式(MSCI株価指数)、米国株式(S&P500指数)の総収益パフォーマンスを比較したものです(2019年9月末時点)。日本株式のリターンが比較的低調であるのに対して、世界株式は約7.4倍(円換算では約6.1倍)、世界株式堅調のエンジンとなってきた米国株式は約19.4倍(円換算では約16.1倍)となってきた実績がわかります。

「長期投資」を語るには、米国を中心とする世界株式への投資を無視できないと思います。

図表1:平成元年からの内外株式パフォーマンス比較

*米国株(円)と世界株(円)は、総収益指数(月次/ドルベース)を適時の為替の円換算したもの
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1989年1月31日~2019年9月30日)

世界株式を年初来リターン、予想PER、増益見通しで比較

 内外株式のパフォーマンス差は、外部環境の悪化(特に世界の景況感鈍化)の影響を受けやすい日本株式の特徴とされます。ただ、長期的には少子高齢化の進行や成長戦略の遅れを起因とする「成長期待の差」とも言われます。図表2は、世界や国別のMSCI株価指数をベースに、年初来騰落率(リターン)の降順に一覧にしたものです。

 参考情報として、2019年から2021年までの予想PER(株価収益率)と2019年から2021年までの予想増益率(指数ベースのEPS)、そして「21年の対18年増減益率(予)」(2021年予想EPSの2018年実績EPSに対する予想増減益率)を示しました。

 世界市場平均の「21年の対18年増減益率(予)」が+27.7%であるのに対し、日本株式の同増減益率(予)は+14.8%に留まっていることがわかります。一方、米国株式の同増減益率(予)は+31.0%と高めです。

 なお、景気鈍化が深刻視されている韓国や市民デモ激化の影響で経済環境が悪化している香港の業績見通しは厳しい状況となっています。

図表2:世界株式の予想PERと予想増減益率<参考情報>

*予想PERや増減益率(予)はBloomberg集計による市場予想平均 
*「21年の対18年増減益率(予)」は、2021年予想EPSの2018年実績EPSに対する増減益率(予想)
*上記の業績予想は直近時点の参考情報であり、将来変更される可能性があります。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年10月23日)

 年初来騰落率でトップは中国A株式(本土株式)の+28.8%で、2021年までの増減益率(予)が+50.8%と高いことがわかります。14億人に迫る総人口をベースにした経済成長期待が高成長期待の背景と考えられます。

 同じ中華圏でも、今年の業績が19.6%減益とみられる香港株式の年初来騰落率は+1.9%に留まっています。図表2に示されている2019年以降の増減益率(予)は、現時点の業績見通し(市場予想平均)をもとにしており、貿易摩擦の影響や世界の景気見通しが変化すれば、下方修正や上方修正される可能性があることには留意すべきです。

 ただ、「世界市場における日本株式の劣勢は、業績見通しの劣勢にある」との基本認識に変化はなさそうです。なお、「2020年以降も視野に入れた逆張り的視点」でみると、ポンドの大幅下落をテコに業績回復が見込まれている英国、2021年までに約8割増益が予想されているインドの長期増益期待に注目したいと思います。

外国株式への投資を賢く簡単に実践する方法は?

 上記のような外国株式(日本を除く世界株式)に投資するには、ETF(上場投資信託)を活用するのが便利です。ETFがアクティブ型ファンド(公募投信)と異なる特徴としては、
(1)市場平均(指数)に連動を目指すインデックスファンドなのでわかりやすい
(2)公募投信と比較して総じて低コストである(運用経費率が低い)
(3)手軽な金額で多くの銘柄に分散投資できる
(4)取引所の取引時間中にいつでも売買注文できる(公募投信の基準価額の値洗いは1日1回)
(5)ETFは成り行きや指値注文ができる


ことが挙げられます。東証に上場されている主な外国株式連動型ETFを図表3に示しました。

 運用純資産が10憶円以上の外国株式連動型ETFを、取引価格の年初来騰落率について降順に並べました。これら10本のETFは、楽天証券が「0円ETF」と呼ぶ売買手数料無料のETF(計86本)に含まれています(10月24日時点)。

 年初来上昇率が2割を超え、日本株式(TOPIXの+10%)を大きく凌いでいるETFとしては、「NEXT FUND NASDAQ100連動型」(1545)、「NEXT FUND NASDAQロシア株式指数連動型」(1324)、「上海株式指数・上証50連動型投信」(1309)の3本です。米国株式(S&P500指数)に連動を目指すETF(1655)や、日本を除く先進国株に分散投資するETF(1550や1657)の年初来上昇率も日本株式より優勢となっています。

 なお、米国株式連動型ETF(1655)の最低投資金額は2,332円程度であり、外国株式全体に連動を目指すETF(1657)の最低投資金額も約2,186円程度と比較的少額から投資できます。

 外国株式に連動を目指すETFのほかに、日本株式に連動を目指すETF、債券に連動を目指すETF、商品(金など)に連動を目指すETFも東証に上場されています。売買手数料(現物取引・信用取引)が0円(無手数料)となっているETFの種類や詳細は、「手数料0円ETF」で確認できるので参考にしたいと思います。

図表3:東証上場・外国株式型ETF(参考例)

*「運用経費率」は、投資家(受益者)が負担する信託報酬を年率換算(%)した数値です。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019年10月24日)

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