ドル円が底入れなら日経平均もいったんリバウンドか

 日本市場では、週末の米中首脳会談の日程(29日)が発表され、貿易交渉を巡る不透明感がやや後退。為替のドル売り円買い(円高)が一服したことで、日経平均は反発する展開となりました(27日)。6月21日付け本レポート「ツキジデスの罠(わな)? 大阪サミット以降のシナリオ別相場見通し」でご紹介した「メインシナリオ(米中が一定の合意に至る)」を徐々に織り込み始めた印象があります。

 一時懸念された「米中の決裂(ノー・ディール)」やトランプ政権による対中関税第4弾の一方的発動が回避される可能性が浮上したことで、為替市場では一時106円台まで下落したドル・円が108円前後まで反発。米国株が高値圏で推移していることもあり、日経平均は25日移動平均線(2万1,041円)前後を目先の下値として意識する動きとなっています。楽観は禁物ですが、米中首脳会談で大きな波乱がないと仮定すれば、7月の参議院選挙を視野に日本株がいったんリバウンド相場を迎える可能性はありそうです。

 為替で円高が進まない(リスク回避の円買いが後退する)なら、これまでの株価下落で予想PER(株価収益率)が低下し、配当利回りが高くなった外需関連株が見直される可能性があると考えられます。

<図表1>大阪サミットに向けて「リスク回避姿勢」がやや後退

出所: Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/6/27)

「新経連株価指数」の長期的な優勢に注目

 こうした中、一般社団法人・新経済連盟(略称:新経連)が6月20日に発表した新しい株価指数「新経連株価指数」(Japan New Economy Index、略称:新経連指数)に注目したいと思います。新経連とは、イノベーション(創造と革新)、アントレプレナーシップ(起業家精神)、グローバリゼーション(国際的競争力の強化)の促進を目的に、政策提言や会員企業(約525社)への情報提供等に取り組んでいることで知られています。会員企業にはIT関連企業やベンチャー企業が多く、そのうち約100社が東証、東証マザーズ、ジャスダックに上場されています。新経連指数は、これらのうち96銘柄で構成されている浮動株調整時価総額加重平均指数です(ただし1銘柄の構成比率上限は3%/起算日は2012年6月1日)。

 図表2は、6月1日を100として、新経連指数とTOPIXの総収益の推移を比較したものです。IT(デジタル)革命やニュービジネスの成長期待を反映し、新経連指数は2018年9月に約485まで上昇し、現在は393となっています。TOPIXは2018年1月に約302まで上昇し、現在は252となっています(6月26日)。新経連指数の長期的優勢は、内外投資家からの期待が総じて高い企業群が多いことが背景と考えられます。

 新経連は、「成長企業が多く加盟する経済団体であることを様々な機会でアピールしてきた。新経連指数は、そうした連盟の特徴を可視化したもの」と説明しています。相場全体の軟調に押されて新経連指数も下落を余儀なくされた経緯がみてとれます。ただ、外部環境の改善に伴い、株式相場の底切れが鮮明となれば、同指数が市場平均に対する優勢を取り戻していく余地も拡大していく可能性は高いと考えています。

<図表2>新経連株価指数は約7年で約4倍となった

注:破線は新経連株価指数とTOPIXそれぞれのトレンドを示す線形近似線です
出所:楽天証券経済研究所作成(2019/6/26)

新経連株価指数の主要構成銘柄は?

 図表3は、新経連株価指数を構成する96銘柄について、時価総額の降順(大きい順)に上位20銘柄のみを一覧したものです。新経連に加盟している企業のうち、国内主要市場(東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダック)に上場されている銘柄で構成されており、上位銘柄としては楽天(4755)ニトリホールディング(9843)富士通(6702)東京急行電鉄(9005)出光興産(5019)日本オラクル(4716)INE(3938トレンドマイクロ(4704)サイバーエージェント(4751)などが挙げられます。セクター(業種)は、IT系サービス業に限らず、小売り、電気機器、陸運、情報・通信、不動産など意外に幅広いことがわかります。新経連によると、銘柄の定期入替え(毎年8月1日を基準として9月1日より)が実施されるとのことです。

 TOPIXや日経平均と異なる新経連指数の特徴としては、新しい産業や企業に投資することの重要性を示しており、次々と誕生するベンチャー企業が上場後に、企業価値や株式時価総額を増やしていくことも想定されます。逆に言えば、市場の成長期待を担う新経連指数が市場平均に対する優勢を取り戻すプロセスは、日本の産業界全体の新陳代謝が進み、成長期待が回復していく動きを象徴するものと思われます。

新経連株価指数の構成銘柄と年初来パフォーマンス

<図表3>新経連株価指数の主要構成銘柄(参考情報)

  コード 銘柄名 セクター 時価
総額 
直近
株価 
年初来
騰落率
 
1 4755 楽天 サービス業 18,320 1,277.0 73.5
2 9843 ニトリホールディングス 小売業 16,291 14,235.0 3.7
3 6702 富士通 電気機器 15,596 7,534.0 10.0
4 9005 東京急行電鉄 陸運業 12,160 1,946.0 8.4
5 4324 電通 サービス業 10,902 3,780.0 -22.9
6 5019 出光興産 石油・石炭製品 9,903 3,280.0 -9.1
7 4716 日本オラクル 情報・通信業 9,838 7,680.0 9.7
8 3938 LINE 情報・通信業 7,404 3,075.0 -18.5
9 4704 トレンドマイクロ 情報・通信業 6,842 4,870.0 -18.4
10 4751 サイバーエージェント サービス業 4,836 3,825.0 -9.9
11 2371 カカクコム サービス業 4,398 2,099.0 8.1
12 4385 メルカリ 情報・通信業 4,342 2,882.0 56.5
13 3289 東急不動産ホールディングス 不動産業 4,269 593.0 9.4
14 4666 パーク24 不動産業 3,880 2,507.0 3.9
15 6460 セガサミーホールディングス 機械 3,482 1,308.0 -14.8
16 4921 ファンケル 化学 3,473 2,664.0 -5.1
17 2412 ベネフィット・ワン サービス業 2,977 1,833.0 8.9
18 9076 セイノーホールディングス 陸運業 2,905 1,399.0 -3.0
19 4928 ノエビアホールディングス 化学 2,002 5,860.0 22.7
20 8703 カブドットコム証券 証券・商品先物取引業 1,880 555.0 47.2
注:セクター:東証33業種別 時価総額 :億円) 直近株価 :円 年初来騰落率:%
注:「新経連株価指数」の構成銘柄について時価総額の降順に示したものです。
注:上記は参考情報であり、特定の個別銘柄の推奨を目的とするものではありません。
注:セクター名は東証33業種別に準拠しています。
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019/6/27)

 

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