日本株に「強気」見通しを維持

 貿易戦争激化の懸念で、日経平均株価の下落が続いています。米中覇権争いの先行きは楽観できませんが、日本株に対して「強気」見通しを維持します。

 株は短期的には材料・需給で動きますが、長期的にはファンダメンタルズ(景気・企業業績)で動きます。私は、2019年が景気悪化局面で、20年は回復局面に入ると予想しています。したがって、景気悪化・貿易戦争の不安で株が下落している今は、投資の好機と考えています。

新年度(2020年3月期)増益の予想を維持。上半期減益で下半期に回復見込む

 3月決算の発表が終盤に入っています。前期(2019年3月期)減益は織り込み済みで、注目は新年度(2020年3月期)の業績見通しに移っています。会社がどのような予想を出すか注目されています。

 これまでの発表を総括すると、不安材料がたくさんある割りには、新年度の見通しはさほど悪くないということです。

TOPIXラージ100に含まれる3月期決算で8日までに決算発表を終えた40社の純利益(前期比変化率):2019年3月期実績と2020年3月期(会社予想)

決算期 実績/予想 40社純利益(前期比変化率)
2019年3月期 実績 ▲7.9%
2020年3月期 会社予想 +3.5%
出所:各社決算短信、2020年3月期会社予想を発表していない6社(野村HD・大和証券G・信越化学・キーエンス・HOYA・オリックス)ついては8日時点のQUICKコンセンサス予想を入れて集計。▲はマイナスを示す

  今期は、貿易戦争激化、世界景気悪化の不安に加えて、10月に消費税引き上げ(8%→10%)が予定されていることも、逆風です。期初の業績(会社予想)は、かなり控えめ(低め)に出てくると考えられていました。

 8日までに発表されたTOPIXラージ100(東証一部上場で時価総額の大きい100社)に含まれる40社の予想を見る限り、新年度の見通し(全体で3.5%の増益予想)は、さほど悪くありません。まだ決算が出そろったわけではないので、最終的に集計した時に小幅減益に変わっている可能性はあります。それでも、二桁以上の大幅な減益見通しとはならない見込みです。

 大幅減益見通しにならない限り、日本株(東証株価指数)の平均PER(株価収益率)は5月8日時点で約14倍と低いので、日本株の下値は限られると予想しています。

 楽天証券では、以下の通り、東証一部3月期決算主要841社の純利益は、今期6.8%の増益になると予想しています。上半期(2019年4-9月期)は減益になると予想していますが、下半期に回復し、通期で増益と予想しています。

東証一部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率):2016年3月期(実績)―2019年3月期(会社予想)、2020年3月期(楽天証券予想)

決算期 実績/予想 純利益
2016年3月期 実績 ▲4.7%
2017年3月期 実績 +12.3%
2018年3月期 実績 +27.5%
2019年3月期 会社予想 ▲6.2%
2020年3月期 楽天証券予想 + 6.8%
出所:楽天証券経済研究所が作成

会社予想ベースで今期増益額の大きい10社、減益額の大きい10社

 参考までに、8日までに決算発表を終えたTOPIXラージ100の3月期決算企業40社の中で、今期純利益(会社予想)で見た増益・減益額の上位10社ずつを、以下に掲載します。

今期純利益の増益額(会社予想)が大きい10社、野村HDのみ市場予想

【金額単位:億円】
順位 コード 銘柄名 今期純利益
(会社予想)
前期比
増益率
前期比
増益額
1 7203 トヨタ自動車 2兆2,500 19% 3,671
2 8604 野村HD 【注】 1,373 黒字転換 2,377
3 6501 日立製作所 4,350 95% 2,124
4 9502 中部電力 1,650 108% 855
5 7267 本田技研工業 6,650 9% 546
6 6902 デンソー 3,050 20% 504
7 9434 ソフトバンク 4,800 11% 492
8 8031 三井物産 4,500 9% 357
9 9503 関西電力 1,400 22% 249
10 6594 日本電産 1,350 22% 242
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成
【注】野村HDの今期純利益は8日時点の日経QUICKコンセンサス予想

 トヨタは、高水準の利益が続く見込みです。貿易戦争に巻き込まれる不安や、遠い将来、世界中にEV(電気自動車)が普及してガソリン車の需要が減少する不安などから、株価は割安になっていますが、この水準では少し投資しても良いと考えています。

  野村HD・日立は、前期に巨額の特別損失を計上した反動で、今期増益を見込んでいます。

今期純利益の減益額(会社予想)が大きい10社

【金額単位:億円】
順位 コード 銘柄名 今期純利益
(会社予想)
前期比
減益率
前期比
減益額
1 6758 ソニー 5,000 ▲45% ▲ 4,163
2 6954 ファナック 623 ▲60% ▲ 919
3 9437 NTTドコモ 5,750 ▲13% ▲ 886
4 8035 東京エレクトロン 1,640 ▲34% ▲ 842
5 6301 小松製作所 2,150 ▲16% ▲ 415
6 4503 アステラス製薬 1,820 ▲18% ▲ 403
7 6981 村田製作所 1,700 ▲18% ▲ 369
8 9201 日本航空 1,140 ▲24% ▲ 368
9 4661 オリエンタルランド 653 ▲28% ▲ 250
10 9022 東海旅客鉄道 4,160 ▲5% ▲ 227
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成

 ソニーは減益予想額がトップですが、実態は悪くありません。前期に音楽部門で株式評価益を計上した反動や、ゲーム開発で投資負担が増える影響で、減益となっています。ゲーム・音楽・映画・半導体などで安定的に収益を稼いでいく見通しで、現在の株価で、投資価値は高いと判断しています。

 中国関連・設備投資関連株(ファナック・小松製作所)、半導体関連(東京エレクトロン)、スマホ関連(村田製作所)などの景気敏感株に、減益予想が多くなっています。私は、先行き、減益幅は縮小に向かうと予想しています。米中貿易・ハイテク戦争が一時休戦になることを前提に、今下期(10月以降)から業績は回復に向かうと予想しています。
 

▼もっと読む!著者おすすめのバックナンバー

5月8日:消費税を上げても2020年に日本の景気が回復すると予想する3つの理由
4月18日:消費増税の今期も最高益予想多い!2月決算小売業の決算まとめ
4月11日:半導体関連株は引き続き「買い」と判断:2020年に半導体ブーム復活へ