4月の米雇用統計はポジティブだったが、トランプ発言がネガティブ・サプライズ
GW10連休の間、米国、中国、欧州から重要な経済指標や決算の発表が相次ぎました。ただし、10連休の半ば過ぎまで(4月27日~5月2日)は、とりたててサプライズ(驚き:市場予想からかけ離れた発表)はなく、世界各国の株式もドル/円為替レートも小動きでした。そのまま10連休が平穏に過ぎるかと思われました。
ところが、10連休の最終局面でサプライズが飛び出しました。以下の2つです。
【1】5月3日(金)発表の4月米雇用統計→ポジティブ・サプライズ
予想以上に強く、米景気健在を再確認する内容でした。この発表を受け、3日のNYダウは前日比197ドル高の2万6,504ドルと上昇。CME日経平均先物(6月限)は、2万2,475円(10連休前の日経平均終値2万2,258円対比+217円)まで上昇しました。
【2】5月5日(日)のトランプ大統領発言→ネガティブ・サプライズ
トランプ大統領は5日、自身のツイッターで、5月10日にも中国からの輸入品2,000億ドル相当(約22兆円)に対する関税率を現行の10%から25%へ引き上げると警告しました。米中貿易協議の進展が遅いことに対するいらだちを表明したものです。
これに対し、中国は5月8日から米ワシントンで予定されている米中通商交渉の中止を検討すると報道が出ました。
これは、株式市場にとって重大なネガティブ・サプライズとなりました。市場コンセンサスでは、8日に中国の劉鶴副首相が米国との協議のために約100人の代表団を率いてワシントン入りし、10日にも米中間で何らかの合意が結ばれると考えられていたからです。米中貿易戦争がいったん休戦に入るという期待から、中国株は年初来大きく上昇していました。
米中合意の期待が吹き飛んだだけでなく、貿易戦争がさらにエスカレートする不安が出たことを受け、6日の上海総合株価指数は急落しました(連休前に最後の取引があった4月30日の終値比▲5.6%に)。
ただし、6日のNYダウは落ち着いた動きとなりました。前週末比▲66ドルの2万6,438ドルと小幅の下落でした。中国政府から、引き続き米中協議の合意を目指すとのコメントが出たことで、模様眺めとなりました。ただし、為替市場ではリスクオフの円高が進みました。日本時間で7日の午前7時現在、1ドル110.66円となっています。
6日のCME日経平均先物(6月限)は2万2,205円(10連休前の日経平均終値2万2,258円対比▲53円)と、小幅の下落に留まっています。
日米中の株価指数推移:2017年末~2019年5月6日(日経平均は4月26日まで)
4月の米雇用統計は米景気健在を再確認する内容
5月3日発表の4月米雇用統計は、ポジティブでした。完全失業率は、前月比0.2%ポイント低下の3.6%と、49年4カ月ぶりの低水準でした。非農業部門の雇用者数は前月比26万3,000人増と、景気好調の目安となる20万人増を大きく上回りました。
米雇用統計・完全失業率:2014年1月~2019年4月
完全失業率は、米景気の長期トレンドを示します。非農業部門雇用者増加数は、米景気の短期トレンドを示します。労働市場から見る限り、米景気は戦後最長の拡大局面が続いているように見えます。ただその間、非農業部門の雇用者増加数が短期的に落ち込んだところはあります。米景気は短期的に停滞する局面があっても、長期的には拡大が続いていることがわかります。
再び、貿易戦争の不安が高まる
4月26~27日に行われた日米首脳会談は事前予想通り、ポジティブな内容でした。日米のTAG(物品貿易協定)について、トランプ大統領から事前に予想された以上の要求は出ませんでした。日本サイドをあわてさせるくらい、早期の合意を急いでいることがわかりました。首脳会談の後、トランプ大統領は安倍首相を夕食会、ゴルフに招き、歓待しました。日米の結束をアピールした形となりました。
ところが米中協議では、一転して決裂も辞さない構えを見せました。今にして思えば、トランプ大統領は、中国との交渉がこじれて長期化する可能性があった故に、日米交渉では合意を急いでいたのだと思われます。
米政府は果たして、中国向け関税を本当に引き上げるのでしょうか。今週、米政府から公式にどのようなコメントが出るかが、重要です。ただ、事態は楽観を許しません。しばらく貿易戦争エスカレートの不安から、世界株安が続く可能性を考慮しておくべきかもしれません。
今が2019年の世界景気悪化を織り込む最終局面との見方を継続
今日の日経平均は下落して始まる可能性がありますが、途中から始まる今日の上海株が反発すれば、値を戻す可能性もあります。ただし、米政府が本当に中国向け関税を引き上げれば、改めて大きく売られる可能性もあります。結論は、連休前に述べていたことと同じです。短期的に、日経平均が下がる場合は、そこは長期的に日本株を買い増しする好機と判断しています。
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