今年は「Sell in May and go away」が再現するか

 10連休を控えて見送り感が強いなか、日経平均は2万2,000円台前半で上値が重い動きとなっています。米国市場では今週、S&P500指数やナスダック総合指数が史上最高値を更新するなど外部環境は改善しましたが、国内市場では連休明けに発表される2019年3月期の企業決算や業績見通しを見極めたいムードが強い状況です。

 こうした中、例年の春以降に注目される相場格言「Sell in May and go away」(株は5月に手仕舞え)を警戒したいと思います。

 図表1は、米国のダウ平均、日経平均、ドル円の過去20年(1999年~2018年)の推移を平均化して季節性を示したものです。米国市場の恐怖指数(VIX)はこのところ13ポイント前後まで低下。何らかのショックで市場の予想変動率が上昇すると、米国株は急落しやすくなり、ドル円も急落する(リスク回避の円買い)可能性があります。

 5月に海外市場で投資家のリスク許容度が悪化すると、外国人の先物売り主導で日経平均がいったん下落する可能性は否定できません。連休中に予定されている海外イベントのうち、FOMC(米連邦公開市場委員会、4/30~5/1)、米中貿易交渉、4月の米雇用統計(5/3)などの結果と市場の反応に要注意です。市場実績にもとづくアノマリー(季節的な傾向)でしかありませんが、今年は米国株式が年初から堅調を続けた経緯からも警戒を怠れません。

図表1:日米市場に「警戒の季節」が到来?

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1999/1/1~2018/12/31)

米国株高は業績見通しの先行き期待が背景

 米国市場で複数の株価指数が史上最高値を更新し、日経平均が2万2,000円台を回復した背景としては、金利の低位安定期待、米・中の景況感改善、米中貿易交渉の進展期待などが挙がられます。米国で個人消費の動向を示す小売売上高は、3月分が市場予想を上回る前年同月比+1.6%と2017年9月以来の大幅な伸びとなり、昨年12月から本年2月の鈍化が一時的だったことを確認しました。

 消費活動を支える雇用情勢についても、3月の雇用統計は労働市場の堅調を示しました。一方、中国ではソフトデータと呼ばれるPMI(購買担当者景気指数)に続き、ハードデータとされるGDP(1~3月期)、鉱工業生産(3月)、小売売上高(3月)が市場予想を上回りました。米国と中国で景気の底割れ懸念が後退したことで、目先の実質成長率見通しは回復しています(図表2)。従って、米国市場の業績見通しも改善傾向となっています。

 図表3は、S&P500指数ベースの予想EPS(1株当り利益)の前年同期比伸び率(市場予想平均)を示したものです。1Q(1~3月期)は11四半期ぶりの減益が見込まれていますが、2Q(4-6月期)以降は持ち直し、来年前半(1Qや2Q)は二桁増益予想となっています。

 業績見通しは、米中貿易摩擦、金利動向、商品市況など諸条件の変化で揺れ動く可能性はありますが、市場全体の業績見通しが底入れしたことが、目先の株式市場を支えると考えられます。中期的な観点で、米中の景況感改善と米国株の堅調は、日本株の下支え要因となりそうです。

 図表2:米・中の目先の成長率見通しは改善

*米国=アトランタ連銀GDPナウキャスト予想(前期比年率成長率) *中国=ブルームバーグGDPナウキャスト(前年同期比成長率) 出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019/4/24)


図表3:米国の業績見通しに底入れ感

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019/4/24)

ナスダックが下落するなら投資の好機?

 米国市場では、S&P500指数やナスダック総合指数が史上最高値を更新しました。図表4が示す通り、米国株の堅調が日本株の戻りをリードする展開となっています。特にインターネット関連やソフトウエア関連企業の好決算を受け、S&P500情報技術(IT)指数、ナスダック100指数などハイテク関連銘柄の比重が高い株価指数も史上最高値を更新しました。

 米国籍のETF(上場投資信託)でみると、ナスダック100指数に連動する成果を目指す米国籍ETF「インベスコQQQトラスト」(QQQ)や、米テクノロジー関連株に連動する成果を目指す「バンガード情報技術(IT)ETF」(VGT)の取引価格も史上最高値を更新しました。4月24日時点の年初来騰落率ではQQQが+23.6%、VGTが+28.3%となっています。S&P500指数の業種別株価指数のなかで、「情報技術(IT)」が年初来騰落率で首位となっています。

「米国を中心とするデジタル(AIoT)革命の進展」を象徴するかのような株価動向だと考えています。図表5は、ナスダック100指数(円)に連動する成果を目指す東証上場ETF(1545)のパフォーマンスを示したものです。1545の取引単位(口数)は10口ですので、最低投資金額(約定代金の目安)は8万8,700円前後となります(4月24日時点)。

 時間分散を心掛けつつ、成長期待の高いナスダック100指数に連動するETFを活用し長期投資を検討したいと思います。

 楽天証券では現在、東証上場ETF(上場投資信託)のうち84銘柄に限り「売買手数料0円(無料)」のサービスを提供しており、1545「手数料0円ETF」に含まれています。

図表4:ナスダックの高値更新はデジタル革命進展を象徴

*上記は、各種株価指数について2015年初を100として比較したものです。 出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2019/4/24)

図表5:ナスダック10

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2019/4/24)

0指数に連動する東証上場ETF
 

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