景気敏感株は半導体株の堅調に続くか

 今週は、米国市場でS&P500指数が8日続伸を記録した後、米・欧(EU)貿易摩擦懸念などが利益確定売りの口実となり反落。一時は、米株安→リスク回避の円買い→日本株下落の動きに繋がる場面がありました。ただ、足元では米中で景況感が改善しており、積極的に売りに傾く理由にも乏しい状況です。

 こうした中、米国や世界の一部株価指数は高値圏で推移しています。特に、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は先週に続いて今週も史上最高値を更新(8日)。米ハイテク株の動向を示すS&P情報技術(IT)株指数も最高値を更新しました(10日)。

 図表1は、米国市場の景気敏感株の相対的優劣を示す「景気敏感株相対指数」(MSCI U.S. Cyclical Sectors Index÷MSCI U.S. Defensive Sectors Index)と半導体株指数の推移を示したものです。2016年は半導体株指数が景気敏感株相対指数に先行して底入れし、2018年は半導体株指数が先行して高値をつけた経緯がわかります。そして現在は、半導体株指数が景気敏感株相対指数に先行して最高値を更新しているようにみえます。

 半導体相場が昨年調整入りした主因として、フラッシュメモリーなどコモディティ系半導体の供給過剰が挙げられました。ただ、同分野の在庫調整一巡に加え、デジタル革命の進展下で高付加価値半導体の需要は成長を続けており、AIoT業界の成長をエンジンにした半導体市況改善は株式堅調を支えていくと思われます。

図表1:米・半導体株指数が最高値を更新

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2019/4/10)

世界株式堅調の背景に業績見通し底入れ

 米国を中心に世界株式が堅調である要因として、欧米の金融政策がハト派に転換したことに加え、1-3月をボトムに業績見通しが改善に向かうとの見方が広まってきたことが挙げられます。米アトランタ連銀が発表するGDPナウキャスト(目先の実質成長率見通し)は、一時+0.17%まで低下(3月12日)しましたが、3月下旬以降回復し、直近は+2.27%となっています(4月8日)。

 1~3月期の米国の経済成長率は、大寒波や政府機関の一部閉鎖の影響もあり「ゼロ成長(もしくはマイナス成長)」入りを危惧させましたが、4月5日に発表された雇用統計(3月)が示した通り、個人消費を支える雇用情勢は米経済の底堅さを印象付けました。

 米ゴールドマンサックスは10日、向こう4四半期の間に景気後退に陥る確率を(従来の「20%前後」から)「10%強」に引き下げました。また、年後半に向けた中国景気の底入れ期待を反映し、上海総合指数は年初来で約3割上昇し、52週高値を上抜けました。

 図表2は、世界株式と世界市場ベースの「業績見通しリビジョン(修正)指数」の動きを示したものです。米中貿易摩擦などの行方にいまだ警戒感は拭えませんが、マイナス幅(上方修正-下方修正)は縮小傾向で、昨秋以降の業績見通し下方修正が一巡しつつあることがわかります。

 換言すると、景気後退や業績底割れを悲観した株価が、業績底入れを予見して回復に転じていると言うこと。「相場は常に将来を先読みしようとする」との特徴を象徴するかのようで注目したいと思います。投資家は、「悲観していたほど悪くならない」とのイメージを、今後発表される経済指標、決算発表、業績見通しで確認していくことになります。

図表2:業績見通しの底入れ感が世界株高の支え

*世界株式指数=MSCI ACWI Index
*世界の業績見通しリビジョン指数=Citigroup Global Earnings Revisions Index
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2015/1/1~2018/4/10)

手数料0円の東証上場ETFでグローバル投資

 本稿では、投資コストを抑えながら米国など海外株式に分散投資できる方法を下記にご紹介します。楽天証券では現在、東証上場ETF(上場投資信託)のうち84銘柄に限り「売買手数料0円(無料)」のサービスを提供しています(4月10日時点)。

 これらのうち、米国株式や海外株式のベンチマーク(株価指数)に連動を目指すETFで運用総額が10億円以上のファンドに絞り、年初来リターン(年初来騰落率)が高い順に一覧ました(図表3)。

 年初来リターンが1位(+28.1%)なのは、中国上海50指数(円)に連動を目指すETF(1309)となっています。同ETFの取引単位は1口ですので、現在の最低投資金額(約定代金の目安)は3万2,900円前後となります。年初来リターンで2位(+21.2%)は、米ナスダック100指数(円)に連動を目指すETF(1545)です。同ETFの取引単位は10口のため、最低投資金額(約定金額の目安)は8万5,600円前後となります。

 ベンチマーク(分散投資対象の市場)や運用経費率(信託報酬率)を比較検討した上で、時間分散や長期投資を心掛け、「投資コストを抑えたグローバル分散投資」を展開していきたいと思います。下記した東証上場ETFは、楽天証券では購入(買い)も売却(売り)も売買手数料が無料となっています。「手数料0円ETF」に関する詳細情報は下記にてご確認ください:

手数料0円ETF

図表3:手数料0円(無料)の東証上場ETF(参考例*)

*楽天証券では上記ETFの売買手数料は0円(無料)です(4月10日現在)。 *上記は参考情報であり、特定のETFを推奨するものではありません。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2019/4/10)

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