日経平均は2万1,000円台でやや膠着

 日経平均は昨年末の急落から回復し、2万1,000円台の半ばまで順調に戻してきました。ただ、足元、やや上値が重くなってきました。昨年のボックス圏(2万1,000~4,000円)の中まで入ったため、戻り売りが出やすくなってきたためと考えられます。

日経平均週足:2018年1月4日~2019年2月26日

注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成

 

 3月にはさまざまなリスクイベントが控えており、材料待ちで動きにくくなっているとも言えます。米中通商交渉、ブレグジット(英国のEU離脱)の行方、世界景気の先行きなどに不透明要因が多く、積極的な売買を仕掛けにくくなっています。

 今日は、日経平均の先行きについて、移動平均線を使ったテクニカル分析で大局的見地から考えます。

 

13週・26週移動平均線から見た、日経平均の大局観

 今日は、短期トレーディングのためのテクニカル分析ではなく、長期的なトレンドを見るための分析をします。まず、2015~19年の日経平均を、鳥瞰図で見てみましょう。

日経平均週足、13週・26週移動平均線の推移:2015年1月5日~2019年2月26日

注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成

 

 上のチャートを見ながら、2015年以降、日経平均がどう推移してきたか解説します。大局的見地でのテクニカル分析なので、中長期のトレンドを表す13週移動平均線と、26週移動平均線だけ使って、分析します。

2015~19年の日経平均大局観:景気停滞時に下落、回復期に上昇

 内閣府の認定では、日本の景気は、アベノミクスが始まる直前の2012年11月に底打ちし、以後、現在まで戦後最長の景気回復が継続していることになっています。ただし、実際には、景気後退にきわめて近い状態まで日本の景気が悪化しかけた期間が2回あります。消費増税後の2014年4~9月と、資源安ショックで世界景気が悪化した2015年10月~2016年3月です。楽天証券では、その期間を「景気停滞期」と呼んでいます。

 上のチャートには、資源安ショックによる景気停滞期(2015年10月~2016年3月)が含まれます。日経平均はこの景気停滞を織り込んで、2015年6月から2016年6月まで下落しました。

 それ以外の期間は、景気回復を好感し、日経平均は上昇しています。ただし、2018年10月から日経平均は急落しました。世界的に景気が停滞局面に入りつつあることを織り込みつつあると考えられます。

 

ゴールデンクロスとデッドクロスで見る相場の転換点

 13週移動平均線と、26週移動平均線によって作られるゴールデンクロス(買いシグナル)と、デッドクロス(売りシグナル)をチャートの中に表示しています。2015年1月~2019年2月までで、ゴールデンクロスが2回、デッドクロスが3回、出ています。中長期のトレンド転換時に、ゴールデンクロスやデッドクロスが出ていることがわかります。

 2015年は、日経平均が下げトレンドに入るところで、デッドクロスが出ています。2016年は、日経平均が上げトレンドに入るところでゴールデンクロスが出ました。2017年はそのまま上昇トレンドが継続したので、ここまでシグナルがうまく機能しています。

 ただし、2018年は、トレンドの出ないボックス相場となったため、デッドクロスやゴールデンクロスが「だまし」(シグナルとは逆の方向に相場が動くこと)となりました。2018年の年末に出たデッドクロスは、下落トレンドへの転換を示しました。

【参考1】ゴールデンクロスとは
短い移動平均線が、長い移動平均線の下から上へ抜けるポイントを、ゴールデンクロスと呼びます。上昇トレンドへの転換点で出ることが多いので、買いシグナルと考えられています。ここでは、13週移動平均線を短い移動平均線とし、26週移動平均線を長い移動平均線とし、13週線が26週線を下から上へ抜けるポイントを「ゴールデンクロス」と言っています。ただし、だまし(シグナルが外れること)も多いので、テクニカル分析だけで投資判断をするべきではありません。また、このレポートでは13週・26週移動平均線という長い線を使っているので、長期のトレンド分析には役立ちますが、短期のトレーディングにはほとんど役立ちません。

【参考2】デッドクロスとは
短い移動平均線が、長い移動平均線の上から下へ抜けるポイントを、デッドクロスと言います。下降トレンドへの転換点で出ることが多いので、売りシグナルと考えられています。ここでは、13週線が26週線を上から下へ抜けるポイントを、デッドクロスとしています。

 

二番底と二番天井で見る相場の転換点

 2016年に日経平均が上昇に転じる転換点で、日経平均は「二番底」を形成しています。上昇トレンドに転換するときに出ることの多い形です。
 2018年には、日経平均が「二番天井」を形成してから下落しています。これは、下落トレンドに転換するときに出ることの多い形です。

 ただ、こうしたテクニカル指標は「だまし」もあるので、テクニカル指標だけで投資判断せず、ファンダメンタルズも見ながら考えるべきです。

 

テクニカル分析から考えられる今後の相場展開

 世界景気の悪化(停滞)を織り込んで、日経平均は昨年末に急落しました。2019年1月から反発していますが、このまま一本調子の上昇が続くと見るのはやや難しいと思います。なぜならば、13週・26週移動平均線ともにまだ下向きで、1月からの上昇も、年末の下落モメンタムを打ち消すほどの強さにはなっていないからです。

 本格的な上昇局面に入るためには、日柄整理が不足しています。つまり、急落後の日数が短すぎるというわけです。

 もう一度下落局面があって二番底をつけ、数カ月が経過し、13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じつつあるタイミングで底入れすると考えるのが、テクニカルでは自然であると思います。

 私は、今年の日経平均について、1~3月に底をつけ、4月以降、ゆるやかに底入れし、12月にかけて上昇が続くと予想しています。1~3月が2019年の世界景気悪化(停滞)を織り込む最終局面となり、4月以降、2020年の世界景気回復を織り込むことになると予想しています。その通りになると仮定すると、私がここで考えたテクニカル分析とも、ある程度符号します。私の予想が正しいと仮定すると、3月にもう一度、二番底を付ける局面があり、その後、上昇トレンドに入ることになります。

 以上が、テクニカル・ファンダメンタルズを融合した、私の現時点での予想です。ただし、私は予言師ではありません。予想の前提となっている世界経済の見通しが変われば、相場の見通しも変わります。

 何もかも明らかになってから投資するのではなく、今、不透明要因がたくさんある中で、投資していくのが、「リスクを取る」ということです。私は現在、1~3月に悲観心理が広がり日経平均が下落する局面で、リスクを取って投資していく価値があると判断しています。

 

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