先週の日経平均は「対中制裁発動を延期」のトランプ発言伝わり急反発
先週の日経平均株価は、1週間で567円上昇し、2万900円となりました。12日にトランプ大統領が「対中国の追加制裁発動を60日延期」と発言したと伝わり、米中貿易戦争が緩和に向かう期待が広がったことが、株高につながりました。日経平均は14日には一時2万1,000円を超え、2万1,235円まで上昇しました。
ところが、14日に発表された米国の12月小売売上高が前月比1.2%減と弱く、米景気減速懸念が広がったことを受け、15日には2万900円まで下がりました。
2月中に米中通商協議が合意に至らなければ、3月1日に米国は中国に対する追加制裁(中国からの輸入2,000億ドル相当にかける制裁関税を10%から25%へ引き上げ)を発動する予定です。ところが、12日にトランプ大統領が「合意に近いならば追加制裁の発動をさらに60日延期する」と発言したと伝えられました。14日から始まった米中閣僚級の通商協議では、中国が歩み寄りを見せているものの、月内に大筋合意までたどりつくのは難しいとみられています。それでも、追加制裁が発動されることはなく、合意が得られるまで協議が続けられるとの見方が広がりました。
米中ともに、これ以上貿易戦争をエスカレートさせず、何らかの「落としどころ」を探っていると見られていることが、好感されました。
日経平均週足:2018年1月4日~2019年2月15日
2万1,000~2万4,000円のボックス圏で推移していた2018年の日経平均は、12月に、ボックスから下放れした後、2019年に入ってからボックスに向かって急反発してきました。先週は、一時2万1,000円を超えたところで、戻り売りが増えて、いったん2万1,000円割れまで押し戻された形です。
NYダウは、先週も反発が続く
日経平均は戻りが鈍いものの、NYダウは既に昨年のボックス圏まで戻っています。
NYダウ週足:2018年1月2日~2019年2月15日
NYダウが強いのは、昨年上値を抑えていた以下の2つの不安が緩和したことによります。
昨年NYダウの上値を抑えていたのは、米利上げ(金利上昇)が加速する不安と、米中貿易戦争がエスカレートする不安です。2つの不安は両方とも、今は沈静化しています。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、今年に入ってから、タカ派(利上げに積極的)発言を封印し、ハト派(利上げに消極的)発言を連発しているため、利上げ・金利上昇が続く不安は沈静化しました。米中貿易戦争については、米中ともこれ以上エスカレートさせないように努力している姿勢が見えていることが、好感されています。
ただ、NYダウは昨年のボックス圏まで戻りましたが、このまま一本調子の上昇が続くとは考えていません。米中通商協議もまだ紆余曲折あると思われます。
先週、トランプ大統領が「非常事態」を宣言して、メキシコとの国境の壁建設を強行する姿勢を示したことは、波乱要因となります。下院の過半数を抑える、野党・民主党との対立が先鋭化し、政権運営が難しくなる可能性が高まりました。
世界景気は「2019年悪化(減速)、2020年回復」の見方を継続
私は、世界景気は2019年悪化、2020年回復と見ています。1-3月は2019年の景気悪化を織り込む最終局面になると予想しています。
その見方を前提に、今年の日経平均は1-3月に安値をつけ、4月以降上昇すると予想しています。半導体関連株など、景気敏感株も、少しずつ買っていって良いと考えています。これから、世界景気減速を示す指標の発表が増えそうですが、世界景気に対する不安で、日経平均が下がるところは、買い場と考えています。
なお、2020年の世界景気が回復すると考える根拠は、以下の4つです。
【1】資源安メリット再現
昨年10月まで、原油など資源価格の上昇が続き、世界景気に悪影響を及ぼす懸念が出ていました。ところが、昨年11月以降、原油など資源価格は大きく下がりました。短期的には資源安が景気・企業業績に悪影響を及ぼしますが、2020年には再び、資源安メリットが景気・企業業績を押し上げると判断しています。
【2】米中貿易戦争・ハイテク戦争が一定の落としどころに
解決はしないものの、一定の落としどころは見つけると考えています。そうなると、ハイテク戦争の影響で凍結となっている、中国の設備投資が復活すると見ています。
【3】AI(人口知能)、IoT、ロボット、5G(第5世代移動体通信)の普及進む
米中ハイテク戦争の影響で一時的にブレーキがかかっていますが、ハイテク戦争が緩和すれば、AI、IoT(モノのインターネット化)、ロボット、5Gの成長は続くと見ています。
【4】10月の消費増税は、景気対策で無難に乗り切る
10月に消費増税が予定されていますが、政府が過剰なまでの対策を行って、増税後の消費落ち込みを避ける構えです。今回の増税では、増税前の駆け込み消費が出にくくなり、その分増税後の落ち込みも小さくなると考えています。
リスク要因としては米中貿易戦争がエスカレートする可能性に注意が必要です。
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