日米で株価の勢いに差。米国株の反発続くも、日経平均は上値が抑えられている
先週の日経平均株価は、ほぼ横ばい(1週間で15円上昇)で、2万788円となりました。強弱材料が混在して、上下とも大きくは動きにくい状況です。
先週前半の日経平均は、円高や企業業績の下方修正が増えていることを嫌気して売られ、一時2万406円をつけました。しかし、週後半は米国株高、為替が円安に戻ったことを受けて、2万788円まで反発しました。
日経平均週足:2018年1月4日~2019年2月1日
2018年の日経平均は、2万1,000~4,000円のボックス圏で推移していました。12月に、ボックスから下放れした日経平均は、2019年1月に入ってからボックスに向かって急反発しました。2万1,000円を超えれば、元のボックスに戻ることになりますが、その一歩手前で足踏みしている状態です。
一方、NYダウは、強さが際立っています。昨年12月にボックス圏から下放れしたのは、日経平均と同じですが、2019年1月に入ってから一貫して上昇が続き、昨年のボックス圏の中心まで既に戻っています。
NYダウ週足:2018年1月2日~2019年2月1日
日米株価の勢いに差を生じる2つの要因
日米株価に差を生じているのは、主に2つの要因になります。
1.FRBが利上げ停止を宣言
1月30日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げ停止を宣言しました。さらに、量的な引き締めについても、パウエルFRB議長は「早期に終了するだろう」と示唆。12月のFOMCで、「2019年に2回の利上げが適切」としていた「タカ派」のイメージを捨て去り、株式市場にやさしい驚くばかりの「ハト派」に豹変しました。これで元気づいたのが、NYダウです。パウエル議長のタカ派発言で12月に急落したNYダウは、同議長のハト派宣言で急反発が続きました。
NYダウの反発は、日本株にも好影響を及ぼしました。ところが、日本株への影響はそれだけではありません。利上げ打ち止めでNYダウが上がったことは日本株にもプラスですが、円高圧力がかかりやすくなったことは、日本株にマイナスです。先週は、米利上げ打ち止めの思惑が広がり、一時円高(ドル安)が進みそれが、日本株の売り材料となりました。
ドル円為替レート日足:2018年10月1日~2019年2月1日
2月1日に発表された1月の米雇用統計が強かったため米景気減速の不安が緩和し、1日は1ドル109.48円まで円安(ドル高)に戻りました。しばらく、ドル円も上下とも大きくは動きにくい状況です。
2.米中貿易戦争・中国景気減速の影響
米中貿易戦争の影響で、中国景気の減速が鮮明となっています。米景気にも悪影響が及び始めていますが、受けるダメージは今のところ日本ほど大きくありません。
製造業への依存が大きい日本経済にはダメージが大きいものの、製造業の空洞化が進み製造業への依存が低い米経済にはダメージが相対的に小さくなっています。その差が、日米株価のパフォーマンスの差に表れています。
米国でも製造業には、貿易戦争のマイナス影響は及んでいます。米自動車大手フォード、建設機械大手キャタピラー、携帯電話大手アップルの10-12月期は、中国景気減速の影響で業績が悪化。一方、米IT大手は業績拡大が続いています。アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックなど、世界のITインフラを支配しているIT大手が好業績を上げていることが、米国株の強さの背景にあります。
日経平均は目先大きく動きにくいが、2-3月には波乱材料多く要注意
日本株は、しばらく材料待ちで、膠着(こうちゃく)ぎみの展開となりそうです。ただし、材料が出れば、また荒れ相場になる可能性があります。待っている材料は以下3点です。
【1】米中通商交渉が、どう決着するか?
3月1日を期限として、通商交渉が進んでいます。事務レベル・閣僚級の交渉で、中国側が米国にかなり譲歩してきているため、2月の首脳会談で、なんらかの合意に達する可能性も出てきました。
3月1日までに合意できないと、米中ともに制裁・報復関税を引き上げ、貿易戦争はエスカレートすることになりますが、これまでの交渉経緯を聞く限りでは、何らかの合意に向け準備が進んでいる印象を受けます。
仮に、期限までに完全合意できなくとも、継続協議になると考えられます。一定の成果はあったとして、交渉期限を延長することで、関税引き上げは見送ると考えられます。米中貿易戦争・ハイテク戦争の解決はないとしても、一定の落としどころに向け、交渉が進んでいると見られていることは、株式市場の強材料となっています。
【2】米景気は適温を維持するか?
中国景気減速の影響で、米景気も減速する不安が出ていましたが、1月の雇用統計が強かったので、米景気減速懸念は、やや低下しました。欧州やアジアの景気に減速色が出ていますが、米景気は今のところ堅調です。
米景気・企業業績が悪化する可能性が高まると、円高が進み日本株が売られる要因となるので注意が必要です。
米景気は、寒すぎても暑すぎても株にはマイナスです。利上げは当分ないものの、利下げの可能性が議論されることもない状態が、米国株にとって都合の良い「適温経済」です。米長期(10年)金利が2.5~3%の間に留まる程度の適温経済が続くか注目されます。
【3】2020年3月期の企業業績はどうなるか?
2019年3月期の日本の企業業績は、下方修正が優勢になっています。これからの注目は、2020年3月期の業績がどうなるかです。企業業績の悪化が短期で済むか、長期化するのか、中国景気、米景気、米中貿易ハイテク戦争の行方によって決まります。
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