東証REIT(分配金込み)指数は史上最高値を更新

 今週は、米国市場で主要株価指数が年初来高値を更新。日本市場では、円高懸念とチャイナリスク(中国の景況感悪化)と業績下方修正懸念が上値を抑えつつも、堅調な動きとなりました。

 こうした中、「J-REIT」と呼ばれる東証REIT(不動産投資信託)指数も1年11カ月ぶり高値を更新しました(1月29日)。平均的には株式よりJ-REITの配当(分配金)利回りが高いため、分配金込みの総収益で検証するREITパフォーマンスはさらに良くなります。

 東証REIT指数は2003年にスタートしました。図表1は、2003年末を起点にして、東証REIT(分配金込み)指数とTOPIX(東証株価指数、配当金込み)のトータルリターン(総収益)の推移を比較したものです。

 投資環境変化によるリスク(リターンのブレ)を乗り越えながら、TOPIXが15年で約2倍となったのに対し、J-REITは同期間で約3倍となったことが分かります。分配金を含めた長期リターンだけで振り返ると、J-REITのインデックスファンドやETF(上場投資信託)に投資した投資家は、ほとんど損失を被らなかったということになります。

 国内で低金利環境の長期化が見込まれる中、比較的利回りが高く、為替や外部環境の変化から影響を受けにくい不動産証券化投資商品としての「リスク分散効果」も見直されています。J-REITがマーケットとして成長(現在の時価総額は約12.5兆円)するに従い、株式と異なるパフォーマンスを示す場面が増えており、利回り魅力からも金融機関や外国人投資家から注目されています。

図表1:J-REITの総収益は国内株式を上回ってきた

出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(週次/2019年1月25日)

 

REITが株式より堅調となっている理由を知る

 実は、米国市場でも最近はREITが株式より優勢となっています。米国株式の動向を示すS&P500指数の年初来騰落率は+7.0%と堅調ですが、US-REITを象徴するS&P・REIT指数の同騰落率は+9.6%となっています(1月30日)。この背景として、昨年末から米金利見通しが安定化してきたことが挙げられます。

 実際、1月29~30日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)声明文とパウエルFRB議長の記者会見では、金融当局として「政策金利の調整を様子見する」「保有資産縮小も修正する用意がある」などと述べ、ハト派的な姿勢を示しました。金利先物市場では、年末までの「政策金利据え置き確率」を69%、「利下げ確率」を20%程度織り込む割合で取引されています。

 先週開催された金融政策決定会合で、日銀も物価見通しを引き下げ金融緩和政策の継続を確認しました。米長期金利は2.67%へ低下し、日本の長期金利はマイナス圏で推移しています(1月31日)。

 J-REITが堅調である背景としては、(1)日米で金利見通しが低位で安定化している、(2)貿易摩擦や為替変動の影響を受けにくい内需特性がある、(3)日銀が金融政策の一環で毎月続けているREIT買いに金融機関、外国人投資家による買いが加わり需給が改善していることが挙げられます。

 また、J-REITが投資する商業用不動産の約半分を占める首都圏オフィス市況は堅調を続けています。図表2が示す通り、企業業績堅調と雇用増加でオフィス不動産市況は改善傾向を維持。平均空室率は1.88%と史上最低を更新(2018年12月末)。平均募集賃料(1坪当り)は2万877円と前年同月比8.9%増加しています。分配金原資(キャッシュフロー)の増加で、J-REITの平均分配金利回りは当面3.5~4.0%を維持するとみられます。

図表2:首都圏オフィス不動産市況は改善傾向が続く

出所:三鬼商事のデータより楽天証券経済研究所作成

4%利回りの個別REIT銘柄に注目する

 現在、東京証券取引所では61銘柄のREIT投資法人が上場されています。また、REITが投資する商業用不動産の業種は、オフィスビル、ショッピングセンター(商業施設)、賃貸住宅、物流倉庫、ホテル(旅館)リゾート、インフラ、複合型などさまざまな用途があります。

 個別銘柄や業種のリスクを分散したいなら、多くのREIT銘柄に分散投資する追加型公募投信やETFを活用できます。個人投資家や法人投資家の分散投資ニーズに応えるため、東証REIT指数連動型ETFの品揃えが増え、2014年3月時点で3銘柄だったJ-REIT型ETFの数は7本まで増えてきました。

 時価総額が比較的大きいETFとしては「Next Fund東証REIT指数連動型上場投信」(1343)、「上場インデックスファンドJリート隔月分配型」(1345)などが挙げられます。公募投信やETFを活用すれば、銘柄や業種だけでなく、不動産物件所在地を首都圏、関西圏、福岡圏などに広く分散できます。一方、個別銘柄を「利回り重視」で選別することも可能です。

 参考情報として図表3は、J-REIT61銘柄のうち、時価総額が2,000億円以上の(市場で相対的に評価されている)銘柄群について、分配金利回りが4%以上の銘柄のみを利回りの降順(高い順)で表示した一覧です。

 J-REITは投資資金の規模やニーズに応じて業種や物件所在地域を分散し、株式投資の資産と組み合わせてポートフォリオ(リスク分散)効果を期待していきたいと思います。

図表3:J-REITの利回り上位銘柄(参考情報)

  コード 銘柄名 業種 時価総額 価格 分配金 利回り
1 8963 インヴィンシブル 賃貸住宅 2,680 47,000 3,136 6.7
2 3292 イオンリート 商業施設 2,252 126,300 5,970 4.7
3 8985 ジャパン・ホテル・リート ホテル 3,723 83,500 3,890 4.7
4 8964 フロンティア不動産 商業施設 2,217 446,500 20,980 4.7
5 3281 GLP 物流倉庫 4,378 235,900 5,174 4.6
6 8961 森トラスト総合リート オフィス 2,219 167,000 7,300 4.4
7 8960 ユナイテッド・アーバン 複合型 5,294 173,400 7,003 4.1
8 3279 アクティビア・プロパティーズ 複合型 3,596 470,500 19,046 4.1
9 8984 大和ハウスリート 賃貸住宅 4,941 257,100 10,240 4.0
10 8967 日本ロジスティクスファンド 物流倉庫 2,073 229,700 9,240 4.0
11 3462 野村不動産マスターファンド 複合型 6,751 156,200 6,131 4.0
12 8953 日本リテールファンド 商業施設 5,833 223,000 8,840 4.0
注:分配金は投資法人の見通しや市場予想平均(Bloomberg集計)を年率換算。東証上場のJ-REIT(61銘柄)のうち、時価総額2,000億円以上、分配金利回りが4%以上のみを一覧。銘柄名は、末尾に投資法人がつく。業種は、REIT内の業種。価格は直近の取引価格。利回りは分配金利回り。単位は、時価総額は億円、価格は円、分配金は円/年率、分配金利回りは%。上記は参考情報であり、特定の銘柄を推奨する目的のものではありません
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(1月30日)

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