貿易戦争緩和、米利上げ打ち止め接近の期待から、日米で株が上昇

 先週の日経平均株価は、1週間で705円上昇し、11月30日の終値は2万2,351円となりました。2つの材料が好感されました。

【1】米利上げが来年にも打ち止めとなる期待が出て、NYダウが上昇したこと

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が11月28日の講演で、米政策金利について、「中立水準をわずかに下回る」と語ったことが材料視されました。中立水準まで上げれば、利上げは打ち止めと考えられているので、「利上げ打ち止めが近い」との期待が出て、29日のNYダウが大きく上昇。つられて世界的に株が上昇しました。12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でもう1回利上げがあるのはほぼ確実と考えられていますので、現在の政策金利が中立水準を「わずかに下回る」だけならば、12月に利上げすれば、来年早々にも利上げ打ち止め感が出ると解釈されました。

【2】週末(12月1日)の米中首脳会談で、貿易戦争が緩和に向かう期待が出たこと

 トランプ米大統領が米中貿易戦争について「ディールは近い」とほのめかしてから、貿易戦争が緩和に向かう期待が出ました。週末にブエノスアイレス(アルゼンチン)で開催されるG20の後、米中首脳会談が予定されていたため、「そこで、貿易戦争が緩和に向かう材料が出る」と期待が広がりました。期待を受けて、先週は日米で株価が上昇しました。

 実際、12月1日の首脳会談で、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は「来年1月1日に予定されている関税引き上げ【注】を実施せず、90日間延期すること」で合意しました。エスカレートする一方だった貿易戦争が、緩和に向かう兆しともとれます。

【注】米国は現在、中国製品500億ドル相当に25%、2,000億ドル相当に10%の制裁関税をかけている。現在2,000億ドルの中国製品にかけている制裁関税10%は、1月から25%に引き上げる予定だった。今回、中国が米国からの輸入を増やす方針を示したことを受け、関税引き上げを90日間猶予することとなった。90日間交渉を継続し、残る課題で合意ができなければ、90日後に関税を引き上げる可能性は残る。

2018年の日経平均は、「ボックス圏で推移」

 2018年は、日経平均がボックス圏で推移した年と、総括できることになりそうです。

日経平均週足:2018年1月4日~11月30日

 

 2018年の週足チャートを見ると、2万1,000円から2万4,000円のボックス圏で推移していたことが分かります。米金利上昇・貿易戦争への不安が高まる時に下値をトライし、2つの不安が緩和する時に、上値を試してきました。

 2018年のチャートをさらに細かく見ると、2万2,000円から2万3,000円にさらに小さなボックスがあります。年央(5~9月)は、この狭いボックス内で推移し、膠着感が強まりました。

 米金利上昇と貿易戦争の不安がどう決着するか見えるまで、日経平均は大きなボックス圏(2万1,000円~2万4,000円)から、抜け出すのは難しそうです。2つの問題が最終的にどうなるか、不透明なまま2018年は終わりそうです。年内の日経平均は上へも下へも、大きくトレンドは出にくいと思います。

 NYダウも同じです。2018年は以下の通り、ボックス圏で推移しています。

NYダウ週足:2018年1月2日~11月30日

 

株は、短期は材料、長期はファンダメンタルズ(景気・企業業績)で動く

 株の短期は、材料・需給で動きます。2018年の日経平均は、米金利上昇・貿易戦争の2つの不安が高まる時に外国人の売りで下げ、緩和する時に外国人の買いで上げてきました。

 株の長期はファンダメンタルズ(景気・企業業績)で動きます。2018年の日本の景気は、1~3月と7~9月のGDP(国内総生産)が前期比でマイナスになるなど、減速基調にあります。東証一部の最終利益も、ほぼ横ばい(小幅に増益)となりそうです。景気・企業業績が「踊り場」なので、日経平均も「踊り場」の年となりそうです。

 来年には新しいトレンドが出ると思います。来年の景気・企業業績がどうなるか、しばらく手探りが続くと思います。

 

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