「三角もちあい」続く、日経平均は上下とも大きく動かず

 先週の日経平均株価は、トルコ通貨危機が深刻化する不安から、週初2万2,000円を割れました。ただしその後、トルコリラが反発すると、日経平均も買い戻されました。さらに、16日(木)に、「22~23日に米中通商交渉の事務レベルの協議が開かれる」と伝わり、「米中貿易戦争が緩和する」期待が出てNYダウが上昇したことも追い風となりました。結局、先週の日経平均は1週間で28円下落して、2万2,270円となりました。

日経平均週足:2017年7月3日~2018年8月17日

 

 日経平均週足チャートを見ると、今年に入ってから、大きな「三角もちあい」を形成中であることがわかります。徐々に上下のレンジが狭まってきており、やや膠着感が出ています。いずれ上か下へ放れると考えられますが、それまでにまだ時間がかかりそうです。

 今週も日経平均は薄商いの中、大きくは上下とも動かない「夏枯れ」が続きそうです。日経平均が次に大きく動くのは9月以降、と考えています。

好悪材料は、引き続き「がっぷり四つ」

 今年の1-3月に、日経平均および世界の株式市場を下落させたのは

【1】貿易戦争への不安

【2】米金利上昇への不安

です。その2つの要因が、今も日経平均の上値を抑えています。

 米利上げが続いても、米国株への影響は今のところ限定的です。ただし、米利上げの余波で、トルコリラなど高金利国の通貨下落が続いていることが不安材料となっています。

 一方、日本株の下値を支えているのは

【1】米国株が強いこと

【2】4-6月の日本の企業業績が好調であったこと

です。

(1)米中貿易戦争、どうなる?

 貿易戦争への不安は、トランプ米大統領の発言などを受けて、強まったり弱まったりを繰り返しています。

 先週は「22~23日に米中通商交渉の事務レベルの協議が開かれる」と伝わったため、貿易戦争が緩和する期待が生じました。そこで、貿易戦争収束に向けて、何らかの歩み寄りの兆しが出れば好感されます。ただし、何も進展がないと失望に変わります。

 引き続き、貿易戦争がエスカレートしつつあるのか、「落としどころ」に向けて収束しつつあるのか、まったく読めない状況が続きそうです。

(2)トルコリラは、いったん反発したが、新興国通貨危機は続く

 先週、トルコリラが対米ドルで反発したので、トルコ危機への不安はやや緩和しましたが、これで問題が終わったわけではありません。

 トルコ、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジルなど、高金利国の通貨下落の根っこには米利上げがあります。米利上げが続いている間、新興国からマネーが流出し、米国に集まる流れが続いています。その結果、通貨ドルが強く米国株は堅調です。反面、新興国の通貨下落不安が続いています。

 米利上げに打ち止め感が出ない限り、新興国の通貨不安は続きそうです。

(3)4-6月決算が好調であったことが、日本株を支えている

 日本の4-6月期決算が出そろいました。日本経済新聞社の集計によると、上場企業の連結純利益は前年同期比28%増加し、2年連続で過去最高を更新しました。米景気好調に加え、為替が円安に動いたことが追い風となりました。

 ただし、上場企業が計画する2019年3月期(通期)の業績予想は慎重です。連結純利益は前年比0.3%の減少、と見込んでいます。保守的(低め)の予想で、今後、上方修正されると予想されるものの、先行きに対する企業心理は、貿易戦争の影響もあり、警戒的になっています。

(4)米国株は好調

 米景気は好調で、米国に世界のマネーが集まる傾向は変わっていません。NYダウ・ナスダック株価指数とも、堅調に推移しています。

NYダウ週足:2017年7月3日―2018年8月17日

 

米ナスダック株価指数週足:2017年7月3日―2018年8月17日

 

 

 

▼著者おすすめのバックナンバー

8月16日:トルコ・ブラジルこれからどうなる?高金利国のファンダメンタルズをチェック
8月15日:トルコ危機の本質。なぜトルコの問題で日経平均は急落急騰するのか?

 

▼他の新着オススメ連載

今日のマーケット・キーワード:注目される日本企業の『大型新薬』
今日、あの日:エストニアがソ連から独立【27年前の8月20日】