今回は「豚関連国」に注目

 2018年6月6日に掲載した「牛肉」に続き、今回は「豚肉」について、生産国・輸出国・輸入国・消費国の状況を探ります。

牛肉消費量は「豊かさ」の象徴!?」 で述べたとおり、世界の豚肉の消費量は牛肉消費量のおよそ2倍です。

 目下、戦争の様相をていしている米中の通商問題において、中国は報復措置として豚肉をはじめとした牛肉や家畜のえさとなる大豆などの関税を引き上げました。

 本レポートで詳細を記しますが、中国は世界屈指の豚肉の消費、および輸入国です。

 世界全体として、どの国で豚肉が消費されているのか? そして、その国の消費をまかなうためにどの国が生産しているのか? 輸出や輸入の状況はどうなっているのか?

 通商問題で揺れる豚肉について、改めてデータを確認してみたいと思います。

米中通商問題における豚肉

 以下は、米中それぞれの豚肉の需給バランスを示したものです。米国の輸出の一部が、中国の輸入の一部になります。中国の関税引き上げの影響を受ける部分です。

図:米中の豚肉の需給バランス(2017年) 単位:千トン

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

 中国の豚肉輸入量は国内総供給の3%程度、米国からの輸入はそれ以下と考えられます。また、米国の豚肉輸出量は国内総需要のおよそ27%で、中国への輸出はそれ以下とみられます。

 米中通商問題における豚肉への関税引き上げは、中国よりも米国への影響が大きいと考えられます。米国の畜産農家へのマイナスの影響です。一方、中国の米国産豚肉が国内総供給に占める割合は3%以下ですので、直ちに中国で甚大な影響が発生するとは考えにくいです。

 後述しますが、もともと豚肉は生産した国で消費される(自国の消費のために自国で生産される)、自給自足の側面が強い品目です。このため、豚肉が貿易の品目として国と国の間を行き来する量は、世界全体の総供給・総需要の7.5%程度です。(2017年時点)

 米中の通商問題が中国国内の豚肉の価格を引き上げるとの話があります。それは同問題が中国国内の豚肉需給を直接引き締め、価格が上昇するという話ではなく、同時進行している大豆の関税引き上げが中国国内での大豆価格を引き上げ、その結果、それをエサとする家畜の肉の価格が上昇する、という話なのだと筆者は考えています。

豚肉関連国☆コモディティクイズ全4問

 国旗や地図上の位置、マスの大きさ(国名の文字数)をヒントに、各問の上位3カ国を考えてみましょう。

※各データは米国の農務省(U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE以下、USDA)の統計をもとに作成しました。

問1:豚肉の生産国
上位3カ国はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

問2:豚肉の輸出国
上位3カ国はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

問2:豚肉の輸入国
上位3カ国はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

問4:豚肉の消費国
上位3カ国はどこの国でしょう?

出所:USDAのデータをもとに筆者作成
★答えと解説は3ページ目にあります

豚肉関連国☆コモディティクイズ答えと解説

答え1:豚肉の生産国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

 1位中国(48.1%)、2位EU(21.3%)、3位米国(10.5%)でした。

 世界全体の豚肉のおよそ半分を中国が生産しています。2位のEU、3位の米国を大きく引き離しています。

 USDAのデータによれば、中国における解体前の豚(生きている豚)の輸入は2017年時点で6,000頭とされています。仮に体重100キログラムの豚1頭から50キログラムの肉が得られた場合(一般的には体重の50%前後の肉が得られると言われています)、300トンの肉が得られます(50キログラム×6,000頭)。

 上記の通り中国の豚肉生産量は2017年時点で53,400,000トンです。輸入した解体前の豚から得られた豚肉の量を300トンとすれば、残りの53,399,700トン程度は自国で飼育した豚から得られた肉とみられます。

 つまり、中国国内で生産される豚肉は、ほぼ100%、中国国内で飼育された豚から得られたものだと言えます。

 後述しますが、中国の豚肉消費量は54,812,000トンです。53,400,000トンの生産に1,620,000トンの輸入を加えた55,020,000トンの国内総供給によって消費をまかなっています。(いずれも2017年時点)

 中国の豚肉事情は“かろうじて自給自足できている”“供給は輸入ではなく国内生産をメインとしている”“伸びる国内消費に生産を追いつかせようと努めている”状態と言えます。

答え2:豚肉の輸出国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

 1位EU(34.5%)、2位米国(30.9%)、3位カナダ(16.0%)でした。

 世界全体の豚肉の輸出量は8,279,000トンでした。また、世界全体の豚肉の生産量は先述のとおり110,928,000トンでした。(いずれも2017年時点)

 これらの値より計算した世界全体の豚肉の輸出率(輸出量÷生産量)は7.5%です。つまり、豚肉はそのほとんどが、輸出されずに豚肉を生産した国で消費される傾向があると言えます。

 ただ、輸出国3位のカナダだけは輸出率が67.2%と比較的高い値となりました。カナダにおいては、豚肉の生産は自国での消費よりは外貨獲得手段として行われている面が強いと言えます。

 ちなみに、その他の主な国(地域)の輸出率については、EUが12.1%、米国が22.0%、ブラジルが21.1%、そして中国が0.4%でした。

答え3:豚肉の輸入国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

 1位中国(20.5%)、2位日本(18.7%)、3位メキシコ(13.7%)でした。

 後述する消費国の上位と輸入国の上位がおおむね一致します。

 世界全体の豚肉の輸入量は7,884,000トンです。また、世界全体の消費量は110,500,000トンで、これらの値より計算した世界全体の豚肉の輸入依存度(輸入量÷消費量)は7.1%です(いずれも2017年時点)。

 つまり、豚肉は、自国の供給は自国で賄う(輸出率でみたとおり、生産した国で消費される)傾向があると言えます。

 輸入依存度について、日本は53.8%、メキシコが49.7%、韓国が33.5%、香港が78.7%と比較的高い値となりました。米国は中国と同様、5.3%と低いことがわかりました。

 米国の豚肉生産量は11,610,000トンで、506,000トンの輸入を合わせた国内総供給は12,116,000トンです。また、米国の豚肉消費量は9,540,000トンで、2,555,000トンの輸出を合わせた国内総需要は12,095,000トンです。(いずれも2017年時点)

 米国国内の豚肉総需要のメインは自国での消費であり、輸出はその次となっています。

答え4:豚肉の消費国の正解は…

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

[解説]

 1位米国(49.6%)、2位EU(18.9%)、3位米国(8.6%)でした。

 中国は世界の豚肉のおよそ半分を消費しています。次いでEU、米国となっています。

図:世界全体と中国の豚肉消費量 単位:千トン

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

 また、消費国ランキングで上位に入ったアジア諸国(中国を除く)の豚肉の消費量は以下のとおりです。

図:アジア主要国の豚肉消費量 単位:千トン

出所:USDAのデータをもとに筆者作成

 近年、アジア諸国の豚肉消費量が増加してきていることがわかります。アジア諸国の消費が世界全体の消費を底上げしていると言えます。近代化が進むにつれて進行する食の欧米化がこれらの国の豚肉消費を増大させていると考えられます。

 いかがでしたでしょうか。豚肉のことを知る上で、関連国を知ることは非常に重要かつ有効であると思います。

楽天証券で取り扱っている畜産物の海外ETN銘柄例

楽天証券では「海外ETN取引」において、以下の銘柄を取り揃えております。長期的な視点で価格の推移をご注目ください。

対象 銘柄名 取引所 経費率
畜産物 iPath シリーズB ブルームバーグ畜産物サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

 対象指数であるBloomberg Livestock Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は生牛、豚赤身肉の先物価格を対象としており、ETNを通して畜産物への投資を可能としている。構成は、生牛68%、豚赤身肉32%となっている。

対象 銘柄名 取引所 経費率
指数 iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.70%

 対象指数であるBloomberg Commodity Index Total Returnに連動するETN。同指数は、複数の商品先物価格を対象にしており、ETNを通してコモディティへの投資をすることができる。構成は、エネルギー31%、穀物22%、産業用金属17%、貴金属15%、農産物6%、畜産物6%などで構成されている。

対象 銘柄名 取引所 経費率
指数 iPath S&P GSCIトータルリターン指数ETN NYSE Arca 0.70%

 対象指数であるS&P GSCI Total Return Indexに連動するETN。同指数は、原油62%、産業用メタル11%、穀物10%、畜産物6%、貴金属4%、農産物3%など複数の商品先物で構成されており、ETNを通してコモディティへの投資をすることができる。同指数は、コモディティ投資のベンチマークとして利用される。

対象 銘柄名 取引所 経費率
穀物 iPath シリーズB ブルームバーグ穀物サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

 対象指数であるBloomberg Grains Subindex Total Returnに連動するよう運用されるETN。同指数は、コーン、大豆、小麦の先物価格を対象としており、ETNを通して穀物への投資をすることができる。構成は、コーン39%、大豆38%、小麦21%となっている。

対象 銘柄名 取引所 経費率
農産物指数 iPath シリーズB ブルームバーグ農産物サブ指数トータルリターンETN NYSE Arca 0.45%

 対象指数であるBloomberg Agriculture Subindex Total Returnに連動するETN。同指数は、コモディティの中のコーン、大豆、砂糖、小麦、大豆油、大豆粕、コーヒー、綿の先物価格で構成されており、ETNを通して農作物への投資をすることができる。構成は、コーン24%、大豆23%、小麦13%、砂糖12%、大豆油10%、コーヒー9%、コットン5%となっている。

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