東北楽天ゴールデンイーグルス
キャプテン 捕手 嶋 基宏(しま・もとひろ)34歳

 東北楽天ゴールデンイーグルスの不動の正捕手(キャッチャー)であり、2015年からチームのキャプテンを務める嶋 基宏(しま・もとひろ)選手。これまで、野球日本代表「侍ジャパン」のキャプテンも務めたほか、史上最年少で日本プロ野球選手会会長に任命されるなど、その類まれなキャプテンシーで、チームのみならず日本のプロ野球界をけん引してきました。

 野球というスポーツの中で、唯一グラウンド全体を見渡せる守備位置にいるのがキャッチャー(捕手)。相手バッターの細かな動作を瞬時に分析し、味方ピッチャーに配球の指示を出す。扇の要とも例えられ、点を取ること以上に「取られない」ことが要求されます。さらに、チームの精神的支柱として、統率力や冷静さも求められるため、非常に負担の大きいポジションも担っています。名実ともに楽天イーグルスの「顔」である嶋選手。

ーー キャプテンとしての心得や、歴代監督から学んだこと、さらにはお金について、ファンドアナリストの篠田がお聞きしました ーー 

取材:2018年4月25日 仙台の東北楽天ゴールデンイーグルス応接室にて対談

2018年シーズンが始まり約1カ月(※取材日4月25日)経過して

篠田:ここまでのチームと嶋選手ご自身の状態について、どのようにご覧になられていますか?

嶋:そうですね…なかなか結果を出すことができなくて、選手としてもキャプテンとしても、本当に責任を感じています。よい流れが来るように、今はとにかく1日1日、1試合1試合、力を出し続けるのみと思っています。それでも、ファンの皆さんが球場で応援してくださるのは、とてもありがたいですし、励みになっています。 

取材時は練習ウェアの嶋選手。まっすぐ瞳をみながら丁寧にお話していただきました

篠田:いちファンとして見ていると、野球というスポーツは、試合中もですが、シーズン中にもチームの勢いのような「流れ」があると感じます。5月末から始まるセ・リーグとの交流戦であったり、月の変わり目であったりというのは、気持ちが切り替わって良い流れに繋がることもあるのでしょうか。

嶋:ありますね。実際にプレーをしていても、流れというのはやっぱりあります。チームが乗ってくるというか。僕自身も、チームも、早くそういう良い流れに乗せたいと思っています。あとはもう浮上するのみだと思っています。

 

球団創立3年目の2007年に楽天イーグルスに入団されてから、12年目のシーズンを迎えて

 

篠田:これまで、野村克也さんや星野仙一さんなど、名だたる監督の元でプレーをされてきて、印象に残っているお言葉や、心に留めている教えなどはありますか。 

 

嶋:野村監督、星野監督にも「野球人である前に1人の人間であれ」と教えられてきました。星野監督からは常々「プロ野球選手としていられる時間はとても短い。野球から離れた後の人生の方がうんと長い。自分から野球がなくなった時に、お前がどういう人間でいられるかが大事だ」と言われました。まさにその通りだと、とても心に響きましたね。

 現役としてプレーしている今は、たくさんのファンの皆さんに応援していただけて、良くも悪くも、ちやほやしてもらえます。いい時期を過ごしていると思うし、良い結果を出すために全力を尽くしています。でも野球人生が終わった後、自分の中に何も残っていないようではいけないと。強くそう思うようになりました。

 だからこそ、若い選手には言葉遣いや、目上の人との接し方など、社会人としての基本を教えています。球場を出てからの行動についても結構口うるさく言っているので、もしかしたら鬱陶しく思われているかもしれないですけど(苦笑)。歴代の監督からいただいた言葉も、少しずつ後輩に伝えていきたいですね。

篠田:口うるさく思われるぐらい言って、時には嫌われ者にならないといけないということですね…。それにしても、後輩選手の球場外での立ち居振る舞いにまで目を配られるとは、キャプテン嶋選手のご苦労をお察しします…。(ボソッと)私も頑張らないとなぁ…。
 

ズバリ「お金」とは何ですか?

篠田:さて、話は少し変わって、プロ野球選手にとって評価の基準の一つは年俸であり、お金だと思います。そこで、単刀直入にお聞きします。嶋さんにとって、お金とは何ですか?

うーん。少し迷って…ゆっくり話しはじめる嶋選手

嶋:そうですね……。「ないと困るもの」「あるに越したことはないもの」ですかね。1年の中では、シーズンオフの契約更改時にお金を意識しますね。それこそが自分の成績や期待に対する球団の評価なので。契約更改の前後では「今年はどうかな」とか、「これくらいの成績なら、これくらい上がるかな」なんて、選手同士でもお金の話をすることがあります。でも、お金について考えるのは契約更改の時期ぐらいです。契約更改が終わったら、来季に向けて頭を切り替えます。いざシーズンに入ってしまえば頭の中は野球のことばかりで、お金を意識してプレーをする余裕はないですね。

篠田:では、お金の使い方についてはどうでしょうか。プロ野球選手になってから、この12年間で、お金の使い方は変わってきましたか?

新人時代のお金遣いを思い出し、おもわず苦笑の嶋選手

嶋:新人時代は見たこともない大金(年俸)に驚いて、特に結婚前まではあれも欲しいこれも欲しいと無計画にお金を遣っていました。いま振り返ると、なんてバカだったんだろうと(笑)。でも、家族ができて、あと、僕もそろそろ出口(引退)を意識せざるを得ない年齢なってきて、お金の大切さについては特に真剣に考えるようになりました。若い頃の無駄遣いの経験もあって、今は必要なことに必要なお金が使えるようになりましたね(笑)。

篠田:出口…ですか…。(篠田の心の声)まだまだ引退なんて言ってほしくないなぁ…。どのような時に使うお金が必要なお金ですか?

嶋:僕が若手だった頃、先輩にごちそうになったり、プレゼントをいただいたりもしました。今は僕が後輩に同じことをしなければいけないと思っています。そのために使うお金が必要なお金ですね。 

篠田:キャプテンとしてチームを率いる立場になると、お金の使い道も広がるのですね。

嶋:自分のためというよりも後輩のためにお金を使う機会が増えています。でも、最近は、20代の若手を食事に誘っても来てくれなくて(笑)

篠田:えぇ!?せっかくのキャプテンからのお誘いなのに…。でもきっとそれは嶋選手に遠慮しているんですよ(笑)。プロ野球の世界では、お金の使い方も先輩から後輩へ継承されていくということがよくわかりました。ありがとうございます。

 

 「勝負で勝つ」ために大切にしていることとは?

篠田: では最後に、「投資で勝つ」ことが好きな「トウシル」読者のために、嶋選手が「勝負で勝つ」ために大切にしていることを教えてください。

嶋:勝つために大切にしていること…ですよね……。(色紙を前に、言葉を慎重に選びながら)「裏をかく」とか…?

篠田: おぉ!!(やや興奮気味に)キャッチャーならではの視点ですね。

嶋:相手バッターがどんな球を打とうとしているか、相手チームがどんな作戦を立てているか、いろんな情報を整理しながら、裏をかいた作戦を練られるかどうかですね。特に勝負の世界では、裏に何があるのかを考えることは重要です。表だけを見ていたのでは、絶対に勝てませんから。だから、「表裏一体」かな。うん、「表裏一体」でいきましょう!

 篠田:ありがとうございます。いつもは関東の球場が中心ですが、実は昨年秋にプライベートで観戦に来まして…(笑)なので、今シーズンもまた楽天生命パーク宮城に戻ってきます!長いシーズン、これからの戦いに期待しています。本日はありがとうございました。

色紙と共に落ち着いた笑顔の嶋選手。取材中ずっと爽やかでした

★選手プロフィール
37、嶋基宏選手 キャプテン
1984年12月13日生まれ 34歳 岐阜県出身 179cm/82kg/A型 右投右打
中京大学附属中京高~國學院大~07年楽天イーグルスD大社3(大学社会人ドラフト3位指名)
チームを支えるキャプテン。今年は130試合出場が目標

◎今回の聞き手

 

楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト 篠田 尚子
プロ・アマ問わず、実は大の野球好き。遠征試合、キャンプ、さらにメジャーリーグ観戦にも足を運ぶ現場主義だが、最近セイバーメトリクスにも手を出し始めた。好きなポジションはキャッチャー。日課はCSの「プロ野球ニュース」を見ること。ビールは絶対に売り子さんから買う派。両手に持つのは一緒に応援した楽天証券のキャラクター「かぶ助くん&ラディ子ちゃん」。 

 


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