投資に目標は本当に必要なの?
■前回のあらすじ
iDeCoやNISA、つみたてNISAはぜひ使うべき。その中でも厚生年金だけの会社員や自営業者は、ぜひiDeCoを使って老後に備えて欲しい。そこに組み込む投信はインデックスファンドで十分。
前編:日本人はこうして投資で失敗する
中編:iDeCoっていいの?何を買うべき?
後編:投資に目標は本当に必要なの?
――あるアドバイザーに相談したら、投資を始める前にためる目的、目標額を決めなさいといわれたのですが、そんなことを考えていなかったから返事に困りました。
水瀬 目的はお金を増やすこと、目標額はいくらでも。それ以外にありません。この商品は老後用、この商品は住宅ローンの頭金用というように目的ごとに商品が異なるはずがないので、一番効率よくお金が増えていく商品に置いておく。目標額を定めず、必要なときに必要な分だけ引き出して、残りをまた効率的に増やしていけばいい。
山崎 65歳までに3,000万円という目標額を決めたとして、それが4,000万円になったから邪魔ということはないでしょう?
――むしろうれしいです。
山崎 2,800万円で終わったら? 仕方ないとあきらめて、2,800万円で生活する計画を立てますよね。どうしても65歳のときに3,000万円がないと困るというのなら、投資に期待せずに貯金をするしかない。
貯蓄には目標が必要だけど、運用には必要がなく、無理のない範囲で増やしていけばいいのです。
竹川 個別に目的・目標を考えるのではなくて、年に1回、バランスシートを作って、資産と負債全体で捉えることが大事です。たとえば、負債がある方は、投資に回す金額を抑え、住宅ローンの繰上返済したほうが効果が高いケースもある。毎年、きちんと金融資産を積み上げて、負債があれば圧縮し、リタイアまでに健全なバランスシートを作っていくようなイメージができると◎。自分の家を経営していく感覚を持てるといいですね。
山崎 投資家のタイプ分けも意味がない。初心者向け、退職者向け商品なんてあるわけがなく、販売側が考えたフィクションだと思います。
投資を始めたら継続を。金融資産全体を見てお金を管理
――では、目的・目標を聞かれたらなんて答えればいいですか?
水瀬 将来資金と答えればいいと思います。将来に備えて増やし、必要になったら使うお金です。
竹川 将来の選択肢を増やすためです。
山崎 自由を拡大するツールです。
――わかりました。目的・目標は決めません。その代わりラクに増やしたいです。
山崎 ラクして増やす方法はありません。水瀬さんや竹川さんの本を読んで学ぶくらいの努力はしてください。
――もう一冊、山崎さんの本も読む努力をします。最後に「トウシル」の読者にメッセージをください。
水瀬 ぜひ伝えたいことがあります。それは投資を始めたらぜひ継続してくださいということです。途中で怖くなったり、飽きてしまってもやめたりしないこと。私は積立投資を始めて15年が経過しましたが、ようやく続けていて良かったと思えるようになりました。
竹川 1つ目は俯瞰することです。どの商品を買おう、どの制度を使うではなくて、金融資産全体を見てお金を管理すること。2つ目はベストよりベターを、ということ。ベストな商品を探し続けてなかなか始められない人も多い。現時点で、よりよいと思う商品を選んで、まずは始めてみましょう。
山崎 投資も趣味にして構いませんが、シンプルに投資して、お金に気を取られずに大いに人生を楽しむ方法があることを知って欲しいと思います。
――あまり考え込まずに、みなさんがお勧めするベターな商品に長く投資をして、大切な時間は人生を楽しむことに使います。
〔特別対談〕水瀬ケンイチ×竹川美奈子×山崎元:究極の「ラクチン投資」を探せ
前編:日本人はこうして投資で失敗する
中編:iDeCoっていいの?何を買うべき?
後編:投資に目標は本当に必要なの?
水瀬ケンイチ
都内IT企業勤務。ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」を日々更新する人気のブロガーでもある。インデックス投資家として著名であり、投資法を参考にするファンも多い。書籍やマネー誌などの執筆も多い。
最新刊『お金は寝かせて増やしなさい』(フォレスト出版)
竹川美奈子
ファイナンシャル・ジャーナリスト。LIFE MAP,LLC代表。出版社や新聞社勤務などを経て独立。取材・執筆活動を行うほか投資信託などのセミナー講師も務める。「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」幹事。
最新刊『「つみたてNISA」「一般NISA」活用入門』(ダイヤモンド社)
山崎元
楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表。東京大学を卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券など計12回の転職を経て現職。資産運用分野のコンサルタントとして活躍。
最新刊『お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版)
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