失敗しない!カモられない!ムダをしない!がんばらなくても、お金は増やせる!?マネー3賢者がはじめて投資家のための「資産運用」について激論!!

前編:日本人はこうして投資で失敗する
中編:iDeCoっていいの?何を買うべき?
後編:投資に目標は本当に必要なの?
 

日本人はこうして投資で失敗する

――投資で失敗したという話を聞くことがあるのですが、日本人の「ありがちな失敗パターン」ってどのようなものですか?

水瀬:世の中の流れに乗って失敗するパターンは多いでしょうね。マネー誌のような専門誌ではなくて、一般週刊誌やテレビ番組で投資が大々的に取り上げられたときに、「そんなにもうかるのなら私も」と、話題の投資商品を一度に大量に買ってしまう。

 でも、投資が世の中の話題になったときは、相場が高値圏にあることが多いので、すぐに暴落して損失を抱えて「投資は怖い」と思い込む。それがありがちな失敗パターンではないでしょうか。

山崎:日本人は投資が下手、アメリカ人は投資が上手ということではなくて、日本人が投資で儲けていないように見えるのは、日本のマーケットが過去20~30年にわたって厳しい状態にあったからでしょう。

 それでもマーケットの厳しさ以上に損をしている個人はたくさんいます。その原因は自分で考えず、他人の口車に乗って商品を買ったり、他人に影響されて行動した結果でしょうね。

 

竹川:はやりものに手を出したり、一気にまとめて資金を投入したりすると失敗する確率が高くなるように思います。

 過去には中国株投信、インド株投信、ベトナム株投信、ロシア株投信などが話題になって売れた時期がありましたが、リーマンショック前に設定されたロシア株投信(設定時は1万口あたり1万円)は、翌年には2900円くらいまで下がってしまいましたし、ベトナム株投信を退職金でまとめて買ったところ7割も下がってしまって老後の生活に影響が出たという話もありました。

山崎:投信恐るべしと思ったのは、「馬券裁判」のいきさつを知ったときでした。

――競馬の「馬券」ですか?

山崎:そう。その人は競馬で1億5000万円儲けたのだけれど、的中した買い目の購入額しか控除されなったため課税額が儲けの4倍になり、外れた買い目の購入額も控除されるべきだと主張して最高裁まで争った裁判です。

 その人は当てて儲けたお金を新興国投信で運用していたのだけれど大損をして税金を払えなくなった。儲けることが難しい競馬で利益をあげた人でも大損をする。だから投信は恐ろしい、と。

長期投資に向かない商品は、短期投資にも向かない

――投資信託はどれも恐ろしいのですか?

山崎:「つみたてNISA」に採用されている投信は、金融庁が長期投資向きかどうかという視点で絞り込んでいるので、比較的失敗しにくいと考えていいでしょうね。

 どの投信も購入時手数料がかからず、低コストで保有できます。ここではっきり言っておくと、「つみたてNISA」から除外された商品は短期投資にも向きません。長期投資に向かない商品が短期投資に向くわけがない。

――水瀬さんは投資で失敗した経験はありますか。

 

水瀬:もちろんありますよ。私は今でこそインデックス投資家ですが、以前はデイトレーダーとして個別株投資をやっていました。

 当時は相場に影響を与えそうなニュースや株価の値動きが気になって仕方がなかった。ケータイでニュースをチェックして、トイレに駆け込んで売買をして席に戻る。そんな繰り返しのせいで、仕事でもトレードでもミスが出るようになった。これは自分には合わない投資スタイルだということに気がついて、手間のかからない積立投資、インデックス投資に切り替えました。

山崎:何かを気にしつつ仕事をする、生活をするというのは疲れますからね。だから、買ったらすべてを忘れて放っておけ、というアドバイスをする方もいます。でも、これも違う。日々の株価を見ていないと何年たっても「リスクとは何か」が理解できません。

「株価を見て、何もしない」というのが正しい行動で、その積み重ねが長期投資です。

 

1日30秒だけでも見るべき4つのデータって?

――投信を買った人は何を見ればいいですか?

山崎:為替レートと日経平均株価、NYダウ平均株価、長期金利の4つをまずは見てください。1日30秒でもよいと思います。少しの時間でいいので、なぜ相場が動いたのか、この先どうなるのかを考える習慣をつけると、自然に投資というものがわかってきます。

 難しく考えることはありません。毎日体重をチェックして、増えていたら夜中のラーメンが影響したのかもと思うでしょう? そんな程度でいいでのです。

――では、これから投資を始める人が気をつけることは?

竹川:始めるときに値上がりすることしか考えず、値下がりを想定しない人が多いですね。

 最初に「ここまで下がるかも知れない」とイメージできれば、下がっても耐えられるのに、それがないから下がると怖くなってやめてしまう。せっかく投資の入口に立ったのにもったいないと思います。

 まずは、無理のない範囲で、少額から投資を始めて、値動きの「ドキドキ」に慣れてから、投資金額を増やしていくといいですね。そういう意味では徐々に投資金額がふえていく積み立て投資を活用するのはよいと思います。
 

絶対カットするべき、投資における「ムダ」とは

――投資には試行錯誤や失敗が付きものだと思いますが、意味のない間違いはしたくありません。投資のムダを省くには何に気をつければいいですか。

水瀬:金融機関の窓口で投資の相談する行為はお金と時間のムダです。窓口販売の商品はコストが高いし、相手が売りたい商品を売りつけられることが多いので。商品は(売りつけられる心配のない)ネット証券を使い、自分で納得して買うべきです。

 

山崎:銀行の窓口に近づくことだけはやめたほうがいいよね。良心的な商品ラインナップの銀行もあるけれど、顧客のお金の事情を知りすぎているから、窓口でカードやローンのような別の商品を売り込まれる恐れがあるからね。

 それに投資商品を増やしすぎることもムダですね。多くの投資商品を持つと、リスクの大きさもリスクの方向も正確に把握できなくなる。投資商品は1つか2つ、せいぜい3つ。それもインデックスファンドでリスク部分を管理すればいい。それ以外のお金は、私は普通預金と個人向け国債でいいと思うけれど、シンプルに管理することが重要です。

 日本人はガジェット好きだし、新型は性能がいいという思い込みがあるけれど、投信の運用の技術はそう進歩するものではありません。

竹川:そうですね。新しい商品が発売されたからといってチェックする必要はありません。投資商品を絞り、取引する金融機関も絞ったほうがですね。あと、なにより運用のことを考える時間がムダだと思います。

 特に若いうちは本業で稼いで、ムダな支出を削ることのほうが大切です。運用を考えるのはその次でいいと思います。

〔特別対談〕水瀬ケンイチ×竹川美奈子×山崎元:究極の「ラクチン投資」を探せ
前編:日本人はこうして投資で失敗する
中編:iDeCoっていいの?何を買うべき?
後編:投資に目標は本当に必要なの?

 

 

水瀬ケンイチ
都内IT企業勤務。ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」を日々更新する人気のブロガーでもある。インデックス投資家として著名であり、投資法を参考にするファンも多い。書籍やマネー誌などの執筆も多い。
最新刊『お金は寝かせて増やしなさい』(フォレスト出版)

 

竹川美奈子
ファイナンシャル・ジャーナリスト。LIFE MAP,LLC代表。出版社や新聞社勤務などを経て独立。取材・執筆活動を行うほか投資信託などのセミナー講師も務める。「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」幹事。
最新刊『「つみたてNISA」「一般NISA」活用入門』(ダイヤモンド社)

 

山崎元
楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表。東京大学を卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券など計12回の転職を経て現職。資産運用分野のコンサルタントとして活躍。
最新刊『お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版)