※このインタビューは2018/12/03に公開した記事となります。
人気ブログ「すぽさん投資ぶろぐ」を運営する、すぽさんインタビュー中編をお届けします。今回はリーマンショックを契機に中国株から日本株へとシフトしたすぽさんの銘柄選びや企業分析の仕方について聞きました。
急成長を見込めるならPER 20でもよしとする
──前回、割安株投資から成長株投資に切り替えたところまでお伺いしましたが、その後はずっとそのスタイルですか。
基本はそうです。ただし正確に言うと、成長性だけで投資先を決めているわけではありません。今も割安かどうかはチェックしますし、それに前回、話したようにどんなビジネスモデルかということも重要視します。そういう意味では「高成長」と「ビジネスモデル」と「割安」、この三つを兼ね備えた銘柄狙いと言えるかもしれません。
──その三つに順位をつけることはできますか。
一に「高成長」、二に「ビジネスモデル」、三に「割安」、ですかね。
──つまり、その順番で企業分析を行い、投資するかどうかを決める?
まずは財務諸表などから売り上げの推移や営業利益率などをチェックします。売り上げが停滞していたり、営業利益率が10%を切るようだったら、そこで見切りをつけます。加えて好業績により純資産の部が積み上がっているか、営業CF(キャッシュフロー)は利益と連動しているかなどを確認します。
──まずは本当に成長しているのかどうかを検証するわけですね。
はい。ただし、今現在成長しているからといって今後も成長が続くとは限りません。何かの弾みで一時的に売り上げが伸び、すぐに下降線をたどるようなこともありますから。そこで次にチェックするのがビジネスモデルです。その会社のIR資料などをもとに、継続的に利益を上げられる仕組みができているかどうか検証します。
──そして最後に割安かどうかを確認する?
はい、PERやPBR、それから配当利回りやROE(自己資本利益率)などもチェックします。その中のどれを重視するかといわれたら、僕の場合はPERです。
──PERの目安は?
低ければ低いほどよいわけですが、年15%を上回るくらいの急成長を見込めるならPER 20くらいでもよしとします。年5%以下くらいの成長しか見込めない場合はPER 10前後が購入するかどうかの目安になります。
──それら3つをクリアする企業となると限られますか。
それはそうですね。まあ、そういう企業が山ほどあったら、それはそれで目移りして困るかもしれませんが(笑)。
「アフタービジネス型」と「プラットフォーム型」に着目!
──「高成長」と「割安」についてはある程度、数字で判断できると思いますが、「ビジネスモデル」はそうはいかないですよね。「ビジネスモデル」のところをもう少し詳しくお伺いできますか。
どういう企業が伸びるかと聞くと、多くの人は商品力や技術力、マーケティング力などを挙げます。もちろんそれらは重要な要素です。しかし、優れた商品や技術を有していれば高収益をあげられるかというと、必ずしもそうとは限りません。
例えばかつてビデオテープの規格をめぐり、ベータ陣営とVHS陣営が激しい攻防戦を繰り広げました。結果はVHS陣営が圧勝するわけですが、では、ベータよりVHSのほうが製品として優れていたかというとそうではありません。むしろ技術的にはベータのほうが勝っていたと言われます。それでもVHS陣営が勝利できたのは、競争の中盤でシェアがベータを上回ったことでいわゆる「ネットワーク効果」が追い風になったからです。一度シェアが上になると、街のレンタルビデオ屋さんなどもVHSしか置かなくなり、ベータは買いづらくなります。そしてVHSのシェアが増えるとさらに追い風になるという循環に入ったのです。このネットワーク効果は想像以上に強力で最終的にVHSとベータのシェアは100対0になりました。
──ビジネスの世界ではそういうことが往々にしてあると。
そう。ですから商品力や技術力だけで判断するのは危険ですね。
──では、どのようなビジネスモデルをもつ企業が強いのか、いくつか例を挙げてもらえますか。
僕は企業経営のプロではないので、参考程度に聞いてほしいのですが、一つは「アフタービジネス型」。つまり、売って終わりではなく、売った後も何らかの形でお金が入ってくるビジネスです。本体を売った後もインクで稼げるプリンター、通信料で稼げる携帯電話などが挙げられます。
──定期的なメンテナンスが必要な商品なども当てはまりそうですね。
おっしゃる通りです。とくにエレベーターなど特殊な機械の場合、製造元または関連業者でないと、点検や修理ができません。だから、販売会社は強気な販売戦略ができるわけです。
──労せずともお金が入ってくる仕組みが出来上がっている?
そういうことです。この手のビジネスモデルを持っている企業はほぼ例外なく利益率が高く、営業利益率は10%を超えるのが普通です。
──ほかには?
もう一つ挙げるとしたら「プラットフォーム型」です。ウェブサイト上などに不特定多数の人々が集まる場を設け、さまざまなサービスを展開することによって顧客の囲い込みを図るというもので、例えばECサイトなどが当てはまります。もちろん、顧客の囲い込みが進まないと頓挫することもありますが、一度軌道に乗ると、どんどん顧客が増え、それ自体が大きなアドバンテージになるため、そのまま1社独占状態に突き進むこともあります。そうなれば、当然、価格決定権を持てるので、大きな利益をもたらします。
──すぽさんご自身も「プラットフォーム型」企業に投資してます?
もちろんです。一つ例を挙げると日本株に切り替えた当初、インフォマートという銘柄を保有していました。ここは当時、フード業界をメインにBtoBプラットフォームビジネスを展開していたのですが、顧客の囲い込みに成功すれば大化けすると思い、主力の一つに据えていました。当初は思ったように株価が上がってくれなかったのですが、それでも信じて持ち続けていたら、あるとき上昇に転じ、大きな利益を得ることができました。その後、売却しましたが、僕にとっては思い出深い銘柄になっています。
──「アフタービジネス型」も「プラットフォーム型」も探せば見つかりそうですね。
はい、ぜひ探してみてほしいですね。
テンバガーを狙える銘柄探しの注目ポイント
──ところで、すぽさんは中長期投資というスタイルを取っていますよね。中長期とは具体的にはどれくらいを指すのですか。
ざっくり言えば3年から5年くらいです。3年から5年で2倍になるのを目指すというのが基本スタイルです。
──逆に言えば3年から5年で2倍になりそうな銘柄を購入する?
そういうことです。
──10年先のことまでは考えない?
それはないですね。もちろん10年後5倍になり、20年後10倍になればそれに越したことはありません。実際、運がよければそういうこともあるでしょう。でも、10年後、20年後となると、市況も含めて予測するのは困難ですよね。いまは盤石と思えるようなビジネスでも、10年経てば時代遅れのシロモノになっている可能性もあります。そういう意味では10年、20年先を見据えて投資するのは考えにくいですね。
──一方で、短期間で5倍、10倍になる銘柄もあるじゃないですか。すぽさんは2倍を目指すとのことですが、5倍、10倍になればもっとうれしいわけで、そういう銘柄を見つける術はありませんか。
それは僕も知りたいですね(笑)。
──そうですよね(笑)。
ただし、どういう場合に大化けするか、ある種の傾向はあるかもしれません。
──たとえば?
一つはもともと利益率が低かった企業が、利益率の高いヒット商品を生み出して急成長するパターンです。それによって営業利益が1%から10%に跳ね上がれば、株価も10倍になったりします。少し前だと、日本ライフラインという会社がそうでした。もともと商社だったのですが、自社製品を開発して大ヒットし、株価が急騰しました。あと、美容健康機器や電子機器の製造販売を手掛けるヤーマンという会社もこれに当てはまります。特にヒット商品もなく、長い間株価も低迷していたのですが、2~3年前美顔器が爆発的に売れ、一気に値上がりしました。
──なるほど。
あと、飲食チェーンや小売りチェーンにもわりとよく見られます。チェーン展開している企業の場合、一気に多店舗化を進める時期があります。当然、店が増えれば売り上げが急増しますから、その時期にぐんと株価が上がることが多いんです。最近だと「ペッパーランチ」や「いきなりステーキ」を展開するペッパーフードサービスや、「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングスなどが有名です。
──前者の場合、ヒット商品を出しても一発で終わってしまったら株価は下落するでしょうし、後者の場合も出店ペースに人材の育成が追いつかず業績悪化を招くなんてことがよくありますよね。
そう、だからこの手の銘柄はどのタイミングで手放すかが重要になります。これはまあ、どんな銘柄でも難しいわけですが。
──では、次回は売りのタイミングからお伺いします。
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