先週の日経平均は、1週間で1,026円上昇して、16,848円となりました。原油先物の上昇をきっかけに世界的にリスク資産を買い戻す流れが出る中、日本株だけ円高を嫌気して下落していましたが、先週は、円高一服をきっかけに、外国人投資家から出遅れの日本株を買い戻す動きが出たと考えられます。

ただし、今週の日経平均は反落の可能性があります。ワシントンで4月14・15日に開催されたG20(財務相・中央銀行総裁会議)の議論がドル安(円高)容認に傾いたことを受け、今後さらに円高が進むリスクに注意が必要です。反発が続いてきた原油先物が、反落するリスクも想定されます。

(1)ワシントンG20の議論は、ドル安(円高)容認に傾く

麻生財務大臣が先週、ワシントンG20開催が近づく中で、「必要な措置(急激な円高への対抗策)は、G20の合意内容に沿って行える」と、日銀による為替介入をほのめかす発言をしたことから、先週はじりじりと円安が進みました。4月15日には、一時1ドル109.74円をつけました。ところが、G20の議論がドル安(円高)容認に傾いたため、4月15日の海外市場で1ドル108.71円まで円高が進みました。

ドル円為替レート:2016年1月1日―4月15日

ワシントンG20の声明文で、為替に関する部分は、2月に上海で開催されたG20の声明文とほぼ同じでした。「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済・金融の安定に悪影響を与えうる」という認識のもとで、「通貨の競争的切り下げの回避」すべきとしめくくっています。2月の上海G20では、日本や欧州を名指しはしなかったが、マイナス金利を導入して通貨安を誘導する動きをけん制する狙いがあると考えられました。

最近、急激な円高が進んでいることを受けて、麻生財務相は「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済・金融の安定に悪影響を与えうる」という上海G20の合意に基づいて、「日銀が円売り介入をしても正当化される」と考えました。

ところが、ルー米財務長官がG20後の記者会見で、「最近は円高が進んだが、為替市場の動きは秩序的だ」と、日本の為替介入をけん制する発言をしました。米国がドル安容認の姿勢であることを強調した形です。これで日銀の為替介入がやりにくくなったと解釈され、円高に反転しました。

(2)17日からカタールのドーハで始まった?? OPEC・非OPECの主要産油国会議にも要注意

増産凍結で合意できることを、事前に織り込んで、原油先物が1バレル40ドル台まで上昇していました。それが、世界的にリスク資産が買い戻される流れを作るのに、貢献していました。イランが増産凍結に納得していないことが、問題となっています。イランに一定の増産を認めつつ、合意を達成させようという動きが見えています。無事、合意できても、すぐに原油の供給過剰が解消するわけではないことを考えると、最近、上昇が続いてきた原油先物には、反落のリスクがあると考えています。

(3)「熊本地震」の株式市場への影響

熊本県を震源とした地震は、大分県に広がり、家屋や、道路・鉄道・上下水道・電気などのライフラインに甚大な被害が発生しています。国土強靭化で手を打ってきたにもかかわらず、直下型の地震に弱い地域がなお多く残ることがはっきりしました。緊急に、ライフラインの復旧と、被災者への支援が必要となりました。

株式市場への影響として、しばらく、建設・土木株が上昇することが予想されます。1995年1月17日の阪神・淡路大震災の直後も、2011年3月11日の東日本大震災の直後も、建設・土木株が一時的に急騰しました。

ただし、1995年阪神・淡路大震災のころは、まだ建設不況の最中でした。建設株の上昇は一時的で、後で、急落しました。2011年の東日本大震災のときも、建設業界は、低収益が続いていました。建設株の上昇は一時的で、後から株価が下がりました。

今回は、建設業界の収益環境が、当時とは異なります。建設株は、前々期(2015年3月期)から、利益の回復が続いています。前期(2016年3月期)も、利益の回復が続きました。建築・土木の粗利が予想以上に改善し、期中に利益予想を上方修正する企業がたくさんありました。

今期(2017年3月期)もリニア新幹線・東北復興・東京再開発など仕事量は豊富で、増益基調が続くことが期待されています。人手不足で人件費が上昇し、工事の進捗が遅れ勝ちになるというマイナス要因はありますが、それゆえに、選別受注ができるようになり、建築単価が上昇している効果が出ています。最近も、清水建設(1803)や鹿島(1812)が前期利益見通しの大幅上方修正を発表して注目されました。円高や海外経済の不安の影響を直接は受けないことも、株価に追い風となります。

日本の景気悪化で、政府は景気対策を実施する検討を始めています。従来型の公共投資の上積みに、賛同が得られにくい状況ですが、九州の災害の復旧が緊急の課題となったことを受け、迅速に対策をとっていくことになるでしょう。直下型地震に弱い建物がまだ多い課題が認識されたことで、日本全国で、再度防災のためのライフライン強化がはかられていく可能性もでてきました。

建設・土木株への投資で注意すべきことは、以下の2点です。

  • 震災後の株価上昇は一時的となる可能性もあること。円高で日経平均が下がる場合は、早めに手じまい売りが出る可能性もあります。
  • 3月期決算発表がもうすぐ始まります。前期は好調ですが、建設業界は、今期(2017年3月期)の業績(会社予想)を低めに出す傾向があることに注意が必要です。後から上方修正される可能性が高いと考えられる場合でも、期初予想が低いと短期的に嫌気されるリスクがあります。

建設株についての、さらに詳しいレポートは以下を参照ください。
「3分でわかる!今日の投資戦略」のバックナンバーより

3月2日「日経平均の反発続く 内需株への投資アイディア」

3月24日「建設・土木株の投資判断」

3月25日「東北復興の現場を見て考えたこと」