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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米景気は「ほど良い湯加減」?急激に冷え込む不安も。どうなる日本株?

 つい数週間前まで、いつまでも暑いことが話題になっていましたが、急激に冷え込む不安もあります。ほど良い暖かさを維持できるでしょうか…?

 気候の話ではありません。米景気の話です。今日は、米景気の現状と日本株への影響について解説します。

米景気ソフトランディング期待で日米とも株が急反発

 先週11月6日から10日までの日経平均株価は618円上昇して3万2,568円となりました。2週連続で大幅に上昇した理由として、二つあります。

【1】米ソフトランディング期待が復活:米長期金利が低下、米国株が反発
【2】日本のファンダメンタルズ良好:発表中の7‐9月決算が好調

日経平均週足:2023年1月4日~11月10日

出所:楽天証券MSより楽天証券経済研究所が作成

 日経平均は、米金利上昇を嫌気して、2番天井をつけて下げる「弱い形」から、3万1,000円割れを3回トライしましたが、いずれも短期間で反発しました。先週の急反発によって、3万1,000円は下値支持線として機能していることが確認されました。

 日本株を動かしているのは外国人投資家ですが、米長期金利の低下で、外国人の投資スタンスがポジティブに変わった影響が大きいと考えられます。

 11月に入ってから米景気減速を示す指標の発表が続き、米長期金利が低下しました。そこで、米景気がほど良く減速し、米インフレ・米長期金利が低下する「米景気ソフトランディング期待」が復活し、米国株が急反発しました。

 米景気はなお堅調ですが、消費に減速感があることから、「熱すぎず寒すぎず」良い湯加減の景況が続くと解釈されました。その流れで日本株も上昇しました。

米ナスダック総合週足:2023年1月3日~11月10日

出所:楽天証券MSより楽天証券経済研究所が作成

米長短金利(10年金利とFF金利)の動き:2021年末~2023年11月10日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

米景気減速。急激に冷える不安も

 11月に入って発表された10月の米景気指標には、景気減速を示すものが増えました。10月の米ISM景況指数は、9月に比べて製造業・非製造業ともに低下しました。持ち直しつつあると見られていた米景気が再び失速する懸念もあります。

米ISM景況指数:2018年1月~2023年10月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 米景気の強さを象徴してきた雇用統計も、10月はやや軟化しました。

米雇用統計、完全失業率:2014年1月~2023年10月

出所:米労働省

 10月の完全失業率は3.9%でした。実質完全雇用に近い状態が続いていますが、4月の3.4%と比較すると0.5%ポイント上昇しています。

 10月の非農業部門雇用者は、前月比15万人増と、増加幅が縮小しました。米景気好調とみなされる「20万人増」を少し割り込みました。

米雇用統計、非農業部門雇用者数(前月比):2021年1月~2023年10月

出所:米労働省

 米雇用指標は、わずかに軟化しただけで、まだ十分に強い状況です。ただし、ここから悪化が加速するという見方も一部にあります。コロナ禍で形成された米国消費者の「過剰貯蓄」が底をつきつつあり、これまでしぶとく好調だった消費が、これから減速してくるとの見方につながっているからです。

どうなる日本株?

 結論は、いつも述べていることと同じです。日本株は割安で長期的に良い買い場と考えます。以下の通り、好調な企業業績が続くと見込んでいます。

東証プライム上場、3月期決算主要841社の連結純利益(前期比%):2020年3月期~2024年3月期予想

出所:楽天証券経済研究所が作成

 米景気はソフトランディングに向かうと予想していますが、米金利上昇・米景気減速にからむショック安で、一時的に株が下がることはこれからもあると考えています。したがってリスク管理は大切です。

 時間分散しながら少しずつ割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。

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