日銀短観DI、9月は製造業・非製造業とも改善
日本銀行が2日午前8時50分に発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業の景況感を表すDI(業況判断指数)が、製造業・非製造業とも改善しました。
大企業・製造業DIは+9で、前回(+5)よりも4ポイント上昇しました。3月まで世界的な景気減速を受けて製造業DIの低下が続いていましたが、3月以降は円安・米景気堅調の恩恵もあり、自動車など改善が続いています。
大企業・非製造業DIは+27と高水準です。前回(+23)よりもさらに4ポイント上昇しました。宿泊・飲食サービス業が+44と非常に好調で、前回(36)からさらに8ポイント改善しました。コロナからのリオープン(経済再開)を受けて、サービス産業全般が非常に好調です。
日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2023年9月
世界景気にはさまざまな不安がありますが、9月の日銀短観は、日本経済の好調さを再確認させる内容です。製造業と非製造業を合わせた、大企業DIは+17と日本の景況「好調」が明瞭です。
大企業DIを業種別に見たのが、以下です。好調・不振の業種がよく分かります。
大企業・製造業の業種別DI
業務用機械・鉄鋼・食料品が好調です。国内で設備投資が回復していること、原材料高に対応して価格転嫁・値上げが進んでいることが分かります。実際、今回の短観で示された大企業の設備投資計画は、製造業前年比+20.0%、非製造業+10.1%と好調です。
大企業・非製造業の業種別DI
非製造業は極めて好調です。宿泊・飲食サービス・情報サービス・不動産などが高水準です。非製造業でマイナスの業種はありません。
米国は景況低迷
日本の景況が好調なのに反して、米国は景況が低迷しています。8月から持ち直していますが、水準は低いままです。今週発表される9月の景況指数でさらに持ち直すか注目されます。
米ISM景況指数の推移:2018年1月~2023年8月
米国は2021年にコロナ禍からのリオープンによる消費爆発があり、消費が過熱して深刻なインフレが起こり、今はその反動で消費減速中です。一方、日本は、リオープンが遅れ、長らく低迷していた消費が今、やっと盛り上がりつつあるところです。リオープンのタイミングの差が、景況の差に表れています。
日本の景況が米国不振でも好調な理由
「米国がくしゃみをすると、日本は風邪をひく」と言われたこともあるくらい、日本の景気は米国の影響を色濃く受けてきました。今年、米国が不振なのに日本が好調というのは、極めて珍しいことです。日本独自の好調要因が重なっているからです。
以下、四つの要因が日本好調の背景にあります。
【1】リオープン
日本は、欧米に遅れて今、やっとリオープンによる消費回復が起こり始めています。
【2】インフレ復活→名目GDPの伸び加速
日本のコアコア・インフレ率(生鮮食品とエネルギーを除いたCPI(消費者物価指数)の前年比上昇率)が4%台まで上昇しています。インフレが復活、国内で値上げが通り始めています。名目GDP(国内総生産)の伸びが加速し、企業業績・株価を押し上げる効果が期待されます。
【3】資源高一服
ロシアによるウクライナ侵攻後に急騰した原油先物は、いったん大きく下がりました。足元、原油先物は反発してきていますが、それでもウクライナへの侵攻直後と比べると、エネルギー価格上昇によるコスト高は一服しています。
【4】円安効果で設備投資が活性化
世界の半導体大手が一斉に日本で工場をつくることを表明しています。円安効果もあり、国内で設備投資が盛り上がってくる見込みです。
これから始まる7-9月決算発表に期待
9月の日銀短観DIが良好であったことから、これから発表が始まる2023年7-9月期決算も良好と考えられます。
9月の日銀短観の大企業DIは、これから始まる9月決算の先行指標として注目しています。製造業・非製造業DIとも改善しました。7-9月決算発表もおおむねその通りとなるでしょう。 大企業の経営陣が、9月時点の現状と先行きの景況感を回答したのが、大企業DIで、7-9月の企業業績を先取りする傾向があります。
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