※この記事は2021年8月3日に掲載されたものです。
FIREという新しいライフスタイルに憧れはするものの、今の暮らしに慣れてしまい、現実的なイメージがわかない人も多いのではないかと思います。
そこで、世間によくありがちな、25歳シングル、30歳既婚子供なし、35歳既婚子供ありの、3人の人物像を設定。FIRE後から老後まで、資金不足にならずにやっていけるのかを、ファイナンシャルプランナーの横田健一さんに試算してもらいました。
FIREした後、ぜいたく三昧で暮らせば、あっという間に資金が尽きてしまいます。今回は、あくまでも現時点での生活水準をベースにして、「自由な生き方を模索する」ということを意識して、試算していただきました。
どのようにライフプランを組めば、より長く、より不安なく、FIRE後の生活を送ることができるのかが、よく分かるシミュレーションとなっています。無理しすぎることなく、実現できるFIRE方法と、FIRE後、安心して暮らす資金プランニングをなぞってみてください。夢をかなえた後の生活費、収入、暮らし方などが、よりリアルに見えてくるはずです。
▼試算してくれた人 株式会社ウェルスペント 横田健一さん ファイナンシャルプランナー。大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。YouTube「資産形成ハンドブック」も人気上昇中。Twitter @ken1yokota でも情報発信中! |
横田さんより補足
4:結婚などのライフイベントや大きなケガ、病気などは追加的に発生しない、という仮定で試算しています。人生の途中で大きなイベントや方向転換があった場合、その時点で、変わった条件に合わせてシミュレーションをし直すことが必要なため、スタート時の条件で試算しています。
5:年収・支出は固定としていますが、年収が上がるにつれ、支出も増える可能性が高く、どれくらい支出がアップするかは環境や個人的趣向により変わるため、今回は、収入・支出ともに将来も一定という仮定で試算しました。実際、私が相談者のシミュレーションを行う際も、その時点での収入・支出額で、固定して試算することが多いです。
※実際の人生はそんなにシンプルなものではありませんが、あくまでシミュレーションのためということでご理解いただければと思います。
Aさん 年齢25歳
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B夫妻 年齢:30歳
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C一家 年齢:35歳
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家族:シングル 現在の仕事:国内メーカー中小企業の営業職 現在の手取り年収:248万円 現在の年間生活費:211万円 現在の金融資産:銀行預金150万円 Aさんのシミュレーションを見る!>> |
家族:既婚 現在の仕事:ダブルインカム 夫は公務員、妻は看護師 現在の手取り年収: 691万円 (夫375万円+妻316万円) 現在の年間生活費:480万円 現在の金融資産:銀行預金600万円 B夫妻のシミュレーションを見る!>> |
家族:既婚、子供あり(5歳) 現在の仕事:夫は金融機関勤務、妻は専業主婦 現在の手取り年収: 447万円 現在の年間生活費:360万円 現在の金融資産: 銀行預金700万円 |
●35歳の片働き(金融機関+専業主婦)夫婦Cさんの場合
Cさん |
年齢:35歳 家族:既婚、子供あり(5歳) 現在の仕事:夫は金融機関勤務、妻は専業主婦 現在の手取り年収: 447万円 現在の年間生活費:360万円(教育費を除く)、教育費は大学卒業まですべて公立と仮定 現在の金融資産: 銀行預金700万円 |
このCさんが、「トウシル版・FIRE3タイプを分析。HappyになれるFIRE型はどれ?」で分類した「リッチ型」、「サイド型」、「節約型」それぞれのFIREを目指す場合、どのように実践していけばよいのかシミュレーションしてみます。
Cさんの場合、現在お子様が5歳(年中)ということで、これから教育費負担が増えていく時期に入っていきます。今回のシミュレーションでは、お子様の教育費は大学まで含めてすべて公立、今後必要となる教育費は約1,000万円という前提で計算します。
また、現在奥様は専業主婦ですが、お子様が中学生に上がると同時にパートで働き始め、中学生の間は年間60万円、高校生以降は年間84万円の収入で働いていくという前提でシミュレーションを行います。
では、さっそく計算していきましょう。
リッチ型の場合、58歳、総資産額は4,146万円でFIRE達成
Cさんのリッチ型FIREライフプラン
FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(360万円)=87万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。58歳時点で資産が4,146万円となり、リッチ型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:58歳
FIRE達成時の資産は?:4,146万円
FIRE後の暮らしは?:現在の生活水準をキープ
FIRE後の収入は:働かず、財産収入で暮らす
老後は?:85歳時点で、金融資産が1,671万円残っている。
まずリッチ型FIRE=FIRE前と同じレベルの生活水準をキープするというケースでは、FIRE後の年間生活費は現在と同じ360万円。Bさんご夫婦の手取り年収は447万円ですから、年間の黒字は教育費を差し引く前で87万円となります。
この場合、資産収入だけで生活していき、85歳でも約1,671万円の資産維持が可能になるFIRE達成は58歳で、その後も生活水準を落とすことなく、働く必要はなくなります。
家計収支は次のグラフのようになり、子育てから手が離れた時点から、奥様のパート収入で補うものの、お子さんの教育費負担も増加していくため、資産形成のスピードを上げるのはなかなか難しい状況になっています。
58歳でFIREした後、公的年金を受け取り始めるまでは大きな赤字になりますが、65歳からはご夫婦二人分の公的年金収入268万円/年を受給しますので、赤字幅は小さくなります。
そして資産残高の推移を確認すると次のようになります。
資産残高のピークはFIRE達成時点の58歳で約4,146万円となり、その後は金融資産を取り崩しながら生活していくことになりますが、85歳時点においても金融資産は約1,671万円残っています。
計算上はこのようになりますが、お子様の教育費について、現実的には高校や大学では私立に進学される、受験準備で想定以上にお金がかかるといったことも十分考えられます。
Cさんご夫婦の考え方にもよりますが、FIRE実現とお子様の教育のどちらにどの程度の優先順位を設定するか、子どもにはできれば良い教育を受けさせたいというお考えの方も多いと思いますので、このあたりはFIRE実現に向け大きな不確定要因になるかと思います。
もちろん奥様の働き方をパートではなく、フルタイムに近い形にするなど家計としての収入アップを図れればFIRE達成確率を上げたり、達成時期を早めることは可能ですので、そういった選択肢も含めてプランニングしていくとよいでしょう。
Cさんがリッチ型でFIREする場合は、58歳で約4,146万円の資産を保有することで達成できるわけです。片働き子持ち家計ということで、教育費負担が増大していく時期を迎えることもあり、リッチ型FIRE達成は58歳と遅めになります。
次にサイド型FIREを達成する場合を考えてみたいと思います。
サイド型の場合、46歳、総資産額は3,531万円でFIRE達成
Cさんのサイド型FIREライフプラン
FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(240万円)=207万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。46歳時点で資産が3,531万円となり、サイド型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:46歳
FIRE達成時の資産は?:3,531万円
FIRE後の暮らしは?:FIRE後は現在の2/3(約240万円)の生活水準で生活する
FIRE後の収入は:FIRE後は生活費240万円の1/2、120万円を勤労収入(1人あたり60万円/年)で、残りの120万円を財産収入で賄う。
老後は?:85歳でも約1,392万円の資産が残っている。
サイド型の場合、現在の生活水準の2/3、つまり今回は教育費を除くと約240万円での生活をしていくわけですが、そのうち半分、つまり年間120万円分(1人あたり60万円/年)はアルバイトやパートなどの勤労収入(個人事業も含みます)で確保していきます(今回は64歳まで働くと仮定)。
この場合も厚生年金保険には未加入となりますので、ご自身で国民年金保険料等を支払っていくことになります。
収支の推移は次のようになります。生活費の半分を働いて稼ぎ、残り半分を資産収入および取り崩しで暮らしながら85歳でも約1,392万円の資産維持が可能になるFIRE達成は46歳、リッチ型と比較すると12年ほど早く、始めてから11年で達成できることになります。
公的年金収入は二人合わせて年間231万円となり、社会保険料込での生活費250万円との差が小さいことから年間収支はわずかな赤字に収まります。
資産残高のピークは、次のグラフのように46歳で約3,531万円と、リッチ型より少し低くなります。
リッチ型と比較すると、そもそも生活水準が低めであること、サイド型の場合、資産収入でカバーする必要があるのは生活費の半分であることから、このように相対的に少ない金額でのFIRE達成が可能になっています。
この場合、高齢期においては公的年金収入と生活費で考えると年間19万円の赤字になりますが、資産収入がそれを上回ることが期待されるため、資産は少しずつ増加していき、85歳時点で金融資産が約1,392万円となっています。
最後に節約型FIREについて確認していきます。
節約型の場合、45歳、総資産額は4,024万円でFIRE達成
Cさんの節約型FIREライフプラン
FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(180万円)=267万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。45歳時点で資産が4,024万円となり、節約型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:45歳
FIRE達成時の資産は?:4,024万円
FIRE後の暮らしは?:FIRE後は現在の時点の生活水準の半分(360万円の1/2=約180万円)で生活する。
FIRE後の収入は:生活費の全額を資産収入および取り崩しで生活。
老後は?:85歳でも約1,480万円の資産が残っている。
節約型は現在の生活費をトコトン見直して、生活費を半分にしますので、今後の生活費は教育費を除くと約180万円となります。住居費をいかに低く抑えられるかがポイントになります。
生活費を現在の半分にし、それを全額資産収入で賄いながら85歳でも約1,421万円の資産維持が可能になる節約型のFIRE達成は45歳と、サイド型とほぼ同じ時期となります。
シミュレーション上はこのような結果になるものの、節約型FIRE達成時期はお子様が高校、大学と最も教育費がかかる時期に入っていくため、状況によっては、少しでも働くことでサイド型へ移行するなど、柔軟な選択肢も考えておいた方がよいでしょう。
年金受給が始まるまでの20年間を資産収入のみで生活していくのは、心もとないかもしれません。
また、年金受給開始後は、そもそも生活費を年間180万円程度と低く抑えているため、公的年金収入約228万円の範囲内で十分生活していける形になります。
資産残高のピークは45歳で約4,024万円となり、サイド型よりも高くなります。サイド型は勤労収入があるため少なくても大丈夫ですが、節約型の生活費は低いものの、資産収入のみに頼ることになるため、より大きな資産を準備しておく必要があるわけです。
FIRE達成時期は、サイド型とほぼ同じ45歳と、10年ほどでの達成となります。
45歳でFIRE達成後は、資産運用を継続しながら生活費と教育費を取り崩していくため資産が一本調子で減少していく形になります。
そして年金受給直前の64歳では437万円まで落ち込むものの、65歳から公的年金を受給し始めると、公的年金受給金額(約228万円)が生活費(約190万円)を上回るため、資産は増加に転じ、85歳時点では約1,480万円まで回復する形となります。
計算上、お金の面ではこのようになるわけですが、一つ大切なポイントは、お子様が高校、大学といった時期にご夫婦ともに無職になることです。節約型の生活水準で食べていくことができるとはいえ、ご夫婦ともに無職の状態というのはお子様がどのような印象を受けるか、事前に考えておく必要があるかと思います。
45歳でFIRE達成後、平均余命を考えると40年以上働く必要はなくなりますが、その空いた時間をどのように過ごしていくか、ぜひしっかりと考えていただければと思います。
最後に
35歳片働き子持ちのCさん一家がFIREを目指すとしたら、FIRE後の生活費や収入減がどう変化するのかをシミュレーションしてみました。
シミュレーション時点では、お子様がまだ幼いということもあり、奥様が早くから働きに出るのは難しいかもしれませんが、お子様がある程度大きくなったら、教育費負担をカバーするためにも、年間60万円程度はパートで働くことがFIREを達成するためには必要になってきます。
お子様が私立学校に進学したり、2人目、3人目が生まれたといった場合には、支出の見込みが大きく変わってきますので、プランの大幅な見直しが必要になります。お子様の教育やご夫婦の働き方など、優先順位をしっかり話しながら実行していくことが、FIRE達成に向けて重要になります。
FIREはあくまでライフスタイルの1つですが、必ずしも非現実的な話ではないということがご理解いただけたのではないでしょうか。
今回のシミュレーションでは考慮していませんが、ご両親様からの相続により、少しでも資産を相続できると老後のさらなる安心につながりますので、場合によっては頭の片隅に入れておくことも大切です(それを頼りにする形のプランニングというのはおすすめしませんが)。
今回は大きなケガなどのトラブルや高齢期において要介護になるといった負担は発生しないという少し楽観的な前提になっているところもある一方、今後の勤労収入も上昇しないという保守的な前提にしている部分もあります。
実際にこのようなライフプランを立てて実行していく場合には、このようなシミュレーションを年に1回など定期的にアップデートしながら確認していくことが重要です。
他の2例のライフプランシミュレーションをチェック!
Aさん 年齢25歳 |
B夫妻 年齢:30歳 |
C一家 年齢:35歳 |
家族:シングル |
家族:既婚 |
家族:既婚、子供あり(5歳)
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