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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
今年で終わる「ジュニアNISA」をしっかり活用したい。「新NISA」活用の前に

新NISA待ち望まれるが、その前に、ジュニアNISA活用を

 毎日のレポートで繰り返し述べている通り、私は、日本株は割安で、長期投資で買い場を迎えていると判断しています。短期的な波乱は続くと思いますが、時間分散しながら、コツコツと割安な日本株(または日本株に投資する投資信託)に投資していくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

 長期の資産形成は、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」など、非課税口座を活用してやっていくべきと考えます。将来、投資で100万円のリターンが得られるとして、課税口座(分離課税)ならば20.315%(20万3,150円)の源泉税を差し引かれます。非課税口座ならば100万円そっくり受け取れます。その差は大きいです。

 2014年にNISA制度が始まってから今年でもう10年目ですが、現行制度は今年までで終わり、2024年から新しいNISA制度が始まります。新NISAでは、年間投資枠が360万円に拡大、生涯投資枠1,800万円が導入されます。非課税で投資できる金額が大幅に拡大する2024年が待ち望まれます。

 ただ、新NISAが始まるまでに、まだ4カ月あります。2023年は、現行NISAで投資する最後の年となります。残り4カ月は、現行NISAのメリットをしっかり使いたいと思います。中でも注目できるのは、2023年末で終了することが決まっているジュニアNISA制度です。

「終了する」とは、ジュニアNISA口座内で新規に投資できるのは2023年までという意味です。2023年までに投資しておけば、お子さまが18歳になるまでジュニアNISAで非課税の運用が続けられます。

 今日は、まずジュニアNISAの概要を解説し、その後、読者からいただいた二つの質問に回答します。

*ジュニアNISA口座の新規開設は2023年9月末までとなっております。楽天証券ではWeb上、郵送などで締め切り日が異なりますので、詳細はこちらからご確認ください。

ジュニアNISA概要

 以下が2023年のジュニアNISA概要です(出所:金融庁「ジュニアNISA制度の概要」より作成)。

【1】利用者(口座開設できる人):国内に居住する*未成年者
【2】非課税対象:株式・投資信託等への投資で得られる配当金・分配金や売買益
【3】非課税投資枠:上限80万円(2023年末に投資する必要がある)
【4】非課税期間:利用者が18歳になるまで
【5】運用管理者:口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等)
【6】払い出し制限: 2024年以降は払い出し可能

*口座を開設する年の1月1日現在で0~17歳の方

ジュニアNISAのメリット・デメリット

 主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット【1】お子さまが18歳になるまで非課税で運用できる

 2023年にジュニアNISAを使うメリットは、お子さま(または孫)が18歳になるまで、上限80万円の非課税での運用ができることです。0~17歳のお子さまが対象です。0歳のお子さまにジュニアNISA口座を開いて80万円投資すると、18歳になるまで18年間の長期にわたって非課税での運用ができるメリットがあります。

メリット【2】2024年から払い出し可能

 ジュニアNISAはもともと、利用者が原則18歳になるまで払い出しができないというルールでしたが、2024年以降は18歳未満でも払い出しが可能になります。今年0歳のお子さまでジュニアNISAをスタートすれば、18歳になるまで非課税での運用を続けることもできるし、急にお金が必要になれば2024年以降、払い出すこともできます。

デメリット【1】途中で投資銘柄を入れ替えることができない

 もしジュニアNISAで保有している銘柄を全て売却してしまうと、それで非課税投資のメリットは終わりになります。18歳になるまで、長期にわたって非課税での運用を続けるためには、最初に買った銘柄をずっとそのまま持ち続けなければなりません。

 値動きの激しい個別銘柄よりも、幅広い銘柄に分散投資して長く持ち続けられる投資信託やETF(上場投資信託)の方が良いかもしれません。

デメリット【2】損益通算できない

 もう一つのデメリットとして知っておくべきは、売却損を出した時に「損益通算」ができないことです。課税口座(特定口座)で10万円の売却益と10万円の売却損を出せば、「損益通算」されます。売却益と売却損が相殺され、ネットで売買損益は出ていないので、所得税はかかりません。

 ところが、課税口座で10万円の売却益を出し、ジュニアNISAで10万円の売却損を出した時は、損益通算ができません。10万円の売却益に対し、分離課税を選択していると、2万315円(20.315%)の税金(所得税および住民税)がかかります。NISA口座で10万円の売却損を出しても、払った税金は戻ってきません。

 損益通算できないのは、ジュニアNISAに限った話ではありません。一般NISAも含め、非課税投資口座全てに共通するデメリットです。非課税投資口座で投資すると、利益に課税されないメリットがある代わり、投資の損失は損益通算できないというデメリットがあります。

 以上が2023年のジュニアNISA概要です。以下、読者からの二つの質問に回答します。

ジュニアNISA、贈与に活用できる?

 読者の方から、「ジュニアNISAにかけた元金、利益は全て贈与税なしで、子供に渡せるのでしょうか?」と質問をいただきました。

 以下の通り、回答いたします。

 ジュニアNISA口座を開設できるのは、0~17歳の未成年者です。ただし、その両親または祖父母が資金の出し手・運用管理者になることができるという点で、とても使い勝手の良い制度です。

 両親からお子さまへ、または祖父母から孫への贈与とすることもできます。年間の投資額は80万円で、贈与税の基礎控除(年間110万円)の範囲内ですから、同じ年に他の贈与がなければ、投資元金に贈与税はかかりません。元本が贈与されていれば、元本から生まれる投資収益にも贈与税はかかりません。

 ただし、ジュニアNISA口座に資金を入れただけで贈与が自動的に成立するわけではありません。一般の贈与と同じで、贈与の事実が証明できないと、まれに贈与が否認されることもあります。贈与の証跡を残しておいた方が良いこともあります。詳しくは、税の専門家に相談してください。

ジュニアNISA、今からでも駆け込むべき?

「子供が15歳と13歳なのですが、今からでもジュニアNISAに駆け込むべきですか?」という質問をいただきました。

 投資をするための余裕資金をお持ちでしたら、利用できる「非課税投資制度」は最大限、活用すべきです。税制上の損得だけを考えるならば、回答は「はい、今からでも駆け込みでジュニアNISAをやるべき」です。今年中にジュニアNISAで投資すれば、お子さまが18歳になるまで非課税での運用が継続します。

 ただし、ジュニアNISAをやるべきか否か考える上で、もう一つ、重要な判断材料があります。

ジュニアNISAを通じて15歳・13歳のお子さまに生きた投資教育を

 ジュニアNISAは、両親または祖父母からお子さまへ、1人最大80万円の贈与になります。同じ年に他の贈与がなければ、贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内なので、贈与税はかかりません。

 ただし、そのような大金をお子さまに渡すことには賛否両論があります。ただお金を贈与するだけでなく、ジュニアNISA口座で投資信託・株式への投資を経験させることにもなります。その点についても賛否両論があります。

 まず私の意見を述べます。私は、生きた投資教育として、たとえ5万円でも10万円でもいいので、ジュニアNISAを通じて、お子さまに投資を学ばせたら良いと思っています。利益が得られればうれしいし、損をしても「損することもある」という現実を学ぶ意味があります。

 日本にはこれまで、子供にお金について学ばせる習慣があまりありませんでした。子供にお金の話をするのは、良くないこととする風潮もありました。そのため、中高年になってもお金について人生設計ができない方がいます。

 そこにつけ込んで、老後の不安をあおりつつ、高額な手数料を取るビジネスがはやります。そうならないように、若いうちに少額でも良いので投資で損する経験ももうかる経験もするべきと、私は思います。

 ただし、今でも、子供に投資をさせることに反対する声も聞きます。以下のような声です。

「学生時代は、勉強やスポーツに集中してほしい。株でもうけたり損したりすると気が散る」

「時給1,000円のバイトを頑張っている学生に、簡単に大金を渡すべきでない」

 皆さまは、どう考えますか?

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