8月のビットコインイベント
8月2日 | ライトコイン半減期 |
8月17日 | スペースX、保有BTC売却 |
8月29日 | グレースケール、SECに勝訴 |
8月31日 | SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断延期 |
*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た9月見通し
8月の振り返り
8月のビットコイン価格(円)とイベント
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大きく下落
8月のBTCは大きく下落。
3万ドルで上値を押さえられると失速。200日移動平均線を下抜け、6月の上昇のほぼ全戻し水準となる2万5,000ドル台で下げ止まった。
7月にリップル裁判でのSEC(米国の証券取引委員会)敗訴で、年初来高値を更新したBTCだったが3万2,000ドルを前に上値を押さえられていた。8月に入ると、フィッチの米国債格下げ、Moody’sの米銀10行格下げ、アルゼンチンペソ切り下げと法定通貨への懸念が浮上、BTCは3万ドル台に乗せるも上値の重い展開が続いた。
やはり3万ドルアッパーは2021年から塩漬けになっているロングポジションのやれやれ売り(相場が戻るのを待ち、戻ったときに、早く利益確定してしまうこと)が湧いてくることに加え、夏枯れ相場で出来高が減少してくると供給が一定のBTCには売り圧力がかかりやすいことも上値を重くしたか。
また7月の部分勝訴で急騰したXRPや半減期を通過したLTCの反落も相場の重しとなった。
以前から経営不振がささやかれていた中国の不動産大手恒大が米国で破産法15条を申請、ついに中国の不動産バブル崩壊か、とリスクオフ気味にBTCは値を下げると、イーロン・マスク氏率いるスペースXが保有BTCを売却していたことが判明、BTCは200日移動平均線を割り込み2万5,000ドル台まで急落した。
注目のジャクソンホールでのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長講演は、ほぼ事前の予想通りの内容となったが、米債や為替市場では、年内追加利上げを示唆しているタカ派と受け取り、金利上昇・ドル高となる一方、米株市場ではいずれにせよ利上げの出口が見えたとしてリスクオンで反応するなど、各市場がまちまちに反応する中、BTC市場は上下どちらにも反応できず2万6,000ドルを挟んでのもみ合い推移が続いた。
するとグレースケールの現物ETF(上場投資信託)申請をSECが拒否したことを不服とする裁判で同社が勝訴、SECに判断を無効として再審査を命じた。これを受けて、現物ETFが承認される可能性が高まったとして2万8,000ドル台までBTCは上昇した。
しかし、半値戻しの水準で上値を押さえられると、ブラックロックらの申請分のETF審査が延期されたことを嫌気して一時2万5,000ドル台に反落、グレースケール分の上昇をほぼ打ち消した。
法定通貨への不安
8月は9月と並びBTCのパフォーマンスが良くない月だ。というのは発行量が一定のBTC市場においては、参加者が減って出来高が枯渇するとマイナーの売りに押され価格が低下しやすくなる。株などとは反対に「閑散に買いなし」となりがちだ。
そうした中、案の定、BTCは値を下げたが、静かなはずの夏相場の割に材料・イベントの豊富な月だった。
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BTCの需要、すなわち誰が、何のためにBTCを買うのか、という面で考えると、先月、いみじくもブラックロックのラリー・フィンクCEOが指摘したように、BTCには政府の関与がない新たな「お金」という側面があり、米ドルなど法定通貨の減価に対するヘッジと認識されている。
このストーリーの真偽や、個人的に信じるか否かはともかく、世界最大の投資会社のCEOがそう言っているのだから、そう考えて行動する投資家が多いわけだ。
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そういう観点でいえば、8月は法定通貨の減価を連想させるヘッドラインが続いた。
月初にはフィッチが米国債を格下げした。続いてMoody’s が10行の米銀を同時に格下げ、他にも大手行などもネガティブウオッチとし、金融不安が払拭(ふっしょく)されていないことを印象付けた。
さらに月中にはアルゼンチンでペソ廃止派の大統領候補が予備選で勝利、ペソを切り下げる動きも見られた。極め付きはBRICS首脳会議での加盟国拡大だ。2024年からサウジアラビア・UAE・イラン・エジプト・エチオピア・アルゼンチンの6カ国が加盟、11カ国体制となることになった。
BRICSは域内の貿易決済を自国通貨にする方針となっており、この結果、サウジ・UAE・イラン・ロシアの原油を中国・インド・ブラジル・アルゼンチンなどが購入する取引が米ドルでなくなる可能性が浮上、米国が守ってきた原油取引は米ドルに限るとするペトロダラー体制が瓦解することが決定的となった。
米ドル覇権体制がすぐに崩壊する訳ではないだろうが、2023年はそのスタート地点として歴史に刻まれるだろう。しばらくは各国が米ドルに代わるものを模索する期間となりそうで、BTCもその恩恵を受けると考える。
米金融政策の軟化
BTC/JPYと米金融政策
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米ドルからの逃避需要という意味では、FRBの金融政策が重要となる。前回のブームでは、2020年のコロナショックに対する無制限緩和に不安を覚えた米投資家がBTCにヘッジ買いを入れ、2021年11月の金融緩和の縮小、すなわちテーパリング開始を機にピークアウトした。
そして、2022年11月のボトムも利上げ幅の75bpから50bpへの縮小をきっかけに下げ止まっている。その後、利上げ幅が50~25bpに縮小され、さらに利上げペースが、毎会合から2回に1回ペースに鈍化、BTCはボトムからほぼ2倍の水準まで上昇した。
米実質金利(FF金利-CPI)
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そこで次は利上げの打ち止め時期が重要となるのだが、現段階での市場の織り込みはほぼ半々だ。すなわち、2回に1回ペースであれば、次回利上げは11月になる。しかし、金融政策が転換期を迎え、FRBは毎会合の利上げの有無をデータ次第としている。
個人的には、今年4月ごろに政策金利がCPI(消費者物価指数)を上抜け、すなわち実質金利がプラスに転じ、そこから引き締め効果が効き始め、明らかに景気後退を示す指標が増えてきたと考えており、すでに利上げは7月で打ち止めになったと見ている。
ただ、FRBがデータ次第と指摘するように11月の利上げの有無は10月発表の雇用統計とCPIを見てみないと分からない。従って、9月中に分かることは9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げをスキップするか否かで、それに関しては見送りがコンセンサスだ。
20日のFOMCまでにCPIの発表があるが、これで多少弱い数字が出ても、その先のことはまだ分からないので、利上げ打ち止めでBTCが大きく買われる可能性は低いと考える。
逆に、これがサプライズで上昇し、9月も利上げすることとなった場合は、BTCはもう一段の下げが予想される。
現物ETF承認期待
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そしてBTCの現物ETFの承認可否が8月の相場を大きく動かした。
SECは2021年10月にCME(シカゴ先物取引所)の先物ベースのETFを承認したが、現物ETFの申請は20件以上あったがいずれも認めていない。ちなみにETFが承認されたらBTCが上昇する理由については7月見通しをご参照いただきたい。
その理由としてSECは現物市場における価格操作の恐れを挙げている。6月にブラックロックがETFを申請、今までSECに取り下げされていた他社も再申請に踏み切った。ブラックロックはコインベースと監視協定を結び、価格操作を取り締まることとしており、他社もそれに続いた。
ちなみに、元々のSECのロジックで言えば、この仕組みでSECの懸念をクリアできるかは微妙だ。
CFTC(米商品先物取引委員会)の管理下にあるCMEの先物市場では市場操作が禁じられているが、BTCの現物市場で風説の流布や見せ玉、なれ合い取引といった典型的な不正取引を取り締まる公的なルールが整備されているのは小職が知る限り日本だけだ。
コインベースが監視すると言ってもあくまで民間企業の努力というだけで、公権力による規制がかかっている訳ではない点で不十分という指摘は可能だ。
ところが、8月29日にグレースケールがSECに勝訴したとのニュースが飛び込んできた。同社は私募のBTCファンドを組成してその株式を店頭市場で売買するGBTCという商品を販売しているが、これをETFに切り上げる申請をした。
運営側としてはGBTCの価格不振を脱し、人気を取り戻す切り札として、投資家からすれば価格上昇に加え手数料が2%から1%に引き下げられるとして双方から承認が期待されたが、SECはこれを拒否、同社がこの判断を不服として裁判所に訴えていた。裁判所は同社の訴えを認め、SECの拒否を取り消し、SECに再審査を命じた。
裁判所は判決で(先物と現物価格はほとんど同じなのに)先物は認めて現物を認めないSECの判断は「恣意(しい)的できまぐれ」と切って捨てた。この結果、SECは現物ETFを認めない根拠を失った。
さらに、ゲンスラーSEC委員長の前任で、価格操作を理由にETF申請を拒否し続けていたクレイトン前委員長まで、先物と現物とを永遠に別扱いすることはできないとまで言い始めた。
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昨今、ゲンスラー委員長は政治色を強め、それ故にかたくなで強権的な姿勢を強めていると先月の本レポートで指摘した。その委員長といえども、ウォール街、投資家、裁判所、前任者にそっぽを向かれ、四面楚歌の状態に陥っては万事休すではないだろうか。
判決の直後に第一回回答期限が到来したブラックロック分については早ければ第2回の回答期限である10月半ば、最終回答期限となる来年3月半ばには承認される可能性が高まった。
テクニカル面で見たBTC相場見通し
BTC/USD(パターン分析)
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BTCは6月の安値と7月の高値の半値押しとなる2万8,300ドル近辺でサポートされたが、これを割り込むと6月の安値手前で下げ止まった。いわゆる「半値戻しは全戻し」のパターンだ。
ここから切り返したが、この半値押しのサポートがレジスタンスとなり跳ね返された。200日移動平均線もレジスタンスとして控えている。
これを見ると下方向は6月安値程度まで下値余地がありそうだ。上方向は200日移動平均線の2万7,000ドル台半ば、さらに2万8,300ドル辺りは強めのレジスタンスとして機能しそうだ。
BTC/JPY (一目均衡表)
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一目均衡表は雲を下抜け、転換線(黄)が基準線(赤)を下回り、遅行線(緑)がローソク足を下回る、3役逆転の売りサインが点灯中だ。一目の雲が下がって9月後半に、上値を押さえられるか、雲の中に戻れるかが焦点となりそうだ。
BTC月別騰落一覧
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恒例の月別の騰落率で見ると、9月は1年で最もパフォーマンスが悪い月。さらに陰線が2カ月続いた16回中、実に10回が翌月も陰線となっている。足元でも6年連続で陰線が続いており、あまり強気になれない状況だ。
まとめ
まとめると、9月のBTC相場安値圏でのもみ合い推移が続きそうだ。
材料的にはドル離れの進展、米景気の悪化、現物ETFの承認可能性と強気材料がいくつも見られる。しかし、そのいずれも9月というよりは10月以降の買い材料となりそうだ。
ドル離れはもう少し長いスタンスの話だし、9月の利上げが見送られても市場の焦点となっており11月の利上げの有無は10月の数字を見てみないと分からない。現物ETFも次の回答期限は10月半ばだ。なお、9月13日のCPIが強く、9月に追加利上げないし11月利上げの織り込みが上昇すれば、6月の安値程度までもう少し売られても不思議はない。
テクニカル的にはパターンで見ても一目で見ても上値は重そうで、6月の安値までまだ若干下値余地がありそうだ。アノマリー的にも9月のパフォーマンスは芳しくない。ただ材料的にはすぐには効かないが先行き明るいものが多く、2万5,000ドルを割れたところではサポートされると考える。
こうした中、9月のBTCは底堅いが上値の重い展開が続きそうだ。
2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)
7月13日 | リップル、SECに部分勝訴 |
7月6日 | ブラックロックCEO、BTCは国際的資産 |
6月15日 | ブラックロック、BTC現物ETFを申請 |
6月6日 | SEC、コインベースを提訴 |
6月5日 | SEC、バイナンスを提訴 |
5月23日 | 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道 |
5月22日 | ビットコイン・ピザデー |
5月8日 | PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止 |
4月25日 | コインベース、SECを提訴 |
4月24日 | ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明 |
4月19日 | SEC委員長、下院公聴会で批判集まる |
4月12日 | ETH上海アップデート |
3月27日 | CFTC、Binanceを提訴 |
3月22日 | コインベース、SECから訴追予告受け取る |
3月22日 | SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴 |
3月12日 | シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ |
3月8日 | シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表 |
2月23日 | ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性 |
2月13日 | パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止 |
2月9日 | クラーケン、ステーキング停止 |
1月19日 | ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請 |
1月17日 | 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕 |
*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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