「ジュニアNISA」を駆け込みで利用すべきか、読者から質問

「子どもが15歳と13歳なのですが、今からでもジュニアNISAに駆け込むべきですか?」という質問をいただきました。

 投資をするための余裕資金をお持ちでしたら、利用できる「非課税投資制度」は最大限、活用すべきです。税制上の損得だけを考えるならば、回答は「はい、今からでも駆け込みでジュニアNISAをするべき」です。お子さまが18歳になるまで非課税で運用ができます。

 ただし、ジュニアNISAをするべきか否か考える上で、もう一つ、重要な判断材料があります。それについては、後段で説明します。その前にまずジュニアNISAの制度内容について説明します。

新NISAの前に、今年で終了するジュニアNISA活用を考えたい

 長期の資産形成は、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」など、非課税口座を活用していくべきです。

 2014年にNISA制度が始まってから今年でもう10年目です。現行制度は2023年末で終わり、2024年から新しいNISA制度が始まります。新NISAでは、年間投資枠が360万円に拡大、生涯投資枠1,800万円が導入されます。非課税で投資できる金額が大幅に拡大する2024年が待ち望まれます。

 ただ、新NISAが始まる前に、まだ5カ月あります。2023年は、現行NISAで投資する最後の年となります。2023年は、現行NISAのメリットをしっかり活用したいと思います。中でも注目できるのは、2023年末で終了することが決まっている「ジュニアNISA制度」です。

「終了する」とは、新規に投資できるのは2023年までという意味です。2023年末(受渡ベース)までに投資しておけば、お子さん(またはお孫さん)が18歳になるまでジュニアNISAでの非課税で運用は続けられます。

ジュニアNISA概要

 以下が2023年のジュニアNISA概要です(出所:金融庁「ジュニアNISAの概要」より作成)。

【1】利用者(口座開設できる人):国内に居住する未成年者(0~17歳)
【2】非課税対象:株式・投資信託などへの投資で得られる配当金・分配金や売買益
【3】非課税投資枠:上限80万円(2023年中に投資する必要がある)
【4】非課税期間:利用者が18歳になるまで
【5】運用管理者:口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母など)
【6】払い出し制限: 2024年以降は払い出し可能

ジュニアNISAのメリット・デメリット

 主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット【1】お子さまが18歳になるまで非課税で運用できる

 2023年にジュニアNISAを使うメリットは、お子さま(または孫)が18歳になるまで、非課税で運用ができることです。0歳から17歳のお子さまが対象です。0歳のお子さまにジュニアNISA口座を開いて80万円を投資すると、18歳になるまで18年間の長期にわたって非課税運用ができるメリットがあります。

メリット【2】2024年から引き出し可能

 ジュニアNISAはもともと、利用者が原則18歳になるまで引き出しができないというルールでしたが、2024年以降は18歳以下でも引き出しが可能になります。今年0歳のお子さまでジュニアNISAをスタートすれば、18歳になるまで非課税運用を続けることもできるし、急にお金が必要になれば2024年以降、引き出すこともできます。

デメリット【1】途中で運用銘柄を入れ替えることができない

 もしジュニアNISAで保有している銘柄を全て売却してしまうと、それで非課税の運用は終わりになります。18歳になるまで、長期にわたって非課税で運用を続けるためには、最初に買った銘柄をずっとそのまま持ち続けなければなりません。

 値動きの激しい個別銘柄よりも、幅広い銘柄に分散投資して長く持ち続けられる投資信託やETF(上場投資信託)の方が良いかもしれません。

デメリット【2】損益通算できない

 もう一つのデメリットとして知っておくべきは、売却損を出した時に「損益通算」ができないことです。課税口座(特定口座)で10万円の売却益と10万円の売却損を出せば、「損益通算」されます。売却益と売却損が相殺され、ネットで売買損益は出ていないので、税金はかかりません。

 ところが、課税口座で10万円の売却益を出し、ジュニアNISAで10万円の売却損を出した時は、損益通算ができません。10万円の売却益に対し、分離課税を選択していると、2万315円(20.315%)の税金(所得税および住民税)がかかります。NISA口座で10万円の売却損を出しても、払った税金は戻ってきません。

 損益通算できないのは、ジュニアNISAに限った話しではありません。一般NISAも含め、非課税投資口座全てに共通するデメリットです。非課税投資口座で投資すると、利益に課税されないメリットがある代わり、投資の損失は損益通算できないというデメリットがあります。

 以上が2023年のジュニアNISA概要です。

ジュニアNISAを通じ、お子さまに生きた投資教育を

 節税の観点だけ考えるならば、ジュニアNISAは使った方が良いと言えます。ただし、ジュニアNISAをするべきか否か考える上で、もう一つ、重要な判断材料があります。

 ジュニアNISAは、両親または祖父母からお子さまへ1人最大80万円の贈与になります。同じ年に他の贈与がなければ、贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内なので、贈与税はかかりません。

 ただし、そのような大金をお子さまに渡すことに賛否両論あります。ただお金を贈与するだけでなく、ジュニアNISA口座で投資信託・株式への投資を経験させることにもなります。それにも賛否両論あります。

 まず私の意見を述べます。私は、生きた投資教育として、たとえ5万円でも10万円でも良いのでジュニアNISAを通じて、お子さまに投資を学ばせたら良いと思っています。利益が得られればうれしいし、損をしても「損することもある」現実を学ぶ意味があります。

 日本にはこれまで、子どもにお金について学ばせる習慣があまりありませんでした。子どもにお金の話をするのは、良くないこととする風潮もありました。そのため、中高年になってもお金について人生設計ができない方がいます。

 そこにつけ込んで、老後の不安をあおりつつ、高額な手数料を取るビジネスがはやります。そうならないように、若いうちに少額でも良いので投資で損する経験ももうかる経験もするべきと、私は思います。

 ただし、今でも、子どもに投資をさせることに反対する声も聞きます。以下のような声です。

「学生時代は、勉強やスポーツに集中してほしい。株でもうけたり損したりすると気が散る」
「時給1,000円のバイトを頑張っている学生に、簡単に大金を渡すべきでない」

 相談者さんは、どう考えますか?

 最後に、贈与の成立について、一点だけ注意があります。ジュニアNISA口座に資金を入れただけで贈与が自動的に成立するわけではありません。一般の贈与と同じで、贈与の証跡がないとまれに贈与が否認されることもあります。詳しくは、税の専門家に相談してください。

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