ナスダック100連動型ETFは日経平均をしのいできた
東京市場では、日経平均株価が33年ぶりの高値をつけ「日本株の復調」を印象付けました。4月に著名投資家ウォーレン・バフェット氏が来日したのを機に高まった「割安感」と、欧米市場と比較した経済環境の安定感で、外国人投資家の買い越しが続いたことが背景です。
一方、東証に上場されているナスダック100指数に連動する円建て上場投信(1545)も、5月19日に過去最高値を更新。その長期パフォーマンスが日経平均をしのいできたことにも注目したいと思います(図表1)。
約10年前(2013年初)を起点とすると、日経平均は10年で約3倍となりましたが、ナスダック100連動型上場投信は同時期に約8.4倍となりました。このナスダック連動型上場投信は、原則として為替ヘッジをしないインデックスファンドであることで、ナスダック100指数の復調に加え為替のドル高・円安(為替差益)が寄与しています。
米国市場では、GAFAM(アルファベット、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)に加え、エヌビディアやテスラなどビッグテック(時価総額が大きなハイテク企業群)の株価が堅調トレンドとなっており、ナスダック相場の復調をけん引しています。
S&P500種指数の年初来上昇率が+7.1%にとどまっている中、ナスダック100指数の同上昇率は+24.4%となっており、日経平均の年初来上昇率(+17.6%)をしのいでいます(5月24日)。
<図表1>ナスダック100連動型ETFは過去最高値を更新した

ナスダック100の上位構成銘柄を「ビッグ・セブン」と呼ぶ
ナスダック100指数は、時価総額加重平均指数(金融を除くナスダック上場銘柄100社で構成されている)で、時価総額の大きなビッグテック銘柄の値動きから大きな影響を受けます。図表2は、ナスダック100指数を構成する時価総額上位10社の年初来騰落率を比較したものです。
エヌビディアやメタ・プラットフォームズの株価が年初来で倍になっているほか、GAFAM銘柄が総じてナスダック100指数より優勢となっています。
ここで、時価総額が80兆円以上の銘柄を「ビッグ・セブン」(大手7社)と称して分類すると、その年初来騰落率の平均は+57.7%となっています(5月24日)。
これらビッグ・セブンの株価堅調の背景としては、(1)「対話型AI革命」の進展がエンジンとなりインターネット系プラットフォーマーが物色されている、(2)ビッグテックは財務基盤やキャッシュフローが盤石であり金融不安に対する耐性が見込まれている、(3)CPI(消費者物価指数)やPPI(生産者物価指数)の前年同月比伸び率が10カ月連続で減速し、期待インフレ率の低下で債券市場金利が比較的安定しているなどが挙げられます。
なお、こうしたビッグ・セブン(時価総額順:アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ)全ての銘柄を1株ずつ購入して分散投資ポートフォリオを構築するとしても合計投資金額は1,460ドル程度にとどまります(24日時点の終値で試算)。
もとより米国株式は1銘柄1株から売買することが可能です。ナスダック100に連動するETF(上場投資信託)に投資する方法以外に、時価総額上位7銘柄を買い付けることで比較的手軽に「米国市場のビッグテックに集中分散投資することが可能である」との点に注目いただけると思います。
<図表2>「ビッグ・セブン」は相対的に買われている
シンボル | 銘柄名 | 直近 株価 :ドル |
時価 総額 :億ドル |
時価 総額 :兆円 |
年初来 騰落率 :% |
---|---|---|---|---|---|
NDX | ナスダック 100指数 | 13,604.48 | 163,318 | 2,273.22 | 24.4 |
AAPL | アップル | 171.84 | 27,028 | 376.21 | 32.3 |
MSFT | マイクロソフト | 313.85 | 23,336 | 324.82 | 30.9 |
GOOGL | アルファベット | 120.90 | 15,397 | 214.32 | 37.0 |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 116.75 | 11,979 | 166.74 | 39.0 |
NVDA | エヌビディア | 305.38 | 7,552 | 105.12 | 109.0 |
META | メタ・プラットフォームズ | 249.21 | 6,387 | 88.89 | 107.1 |
TSLA | テスラ | 182.90 | 5,797 | 80.69 | 48.5 |
AVGO | ブロードコム | 679.53 | 2,833 | 39.43 | 21.5 |
ASML | ASMLホールディング | 666.79 | 2,688 | 37.42 | 22.0 |
PEP | ペプシコ | 184.89 | 2,547 | 35.45 | 2.3 |
(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年5月24日) |
ナスダック100の業績見通しは底入れから上向きへ
なお、ナスダック100が最近復調を鮮明にしているもう一つの理由として「先行きの業績底入れ観測」が広まっていることが挙げられます。GAFAMは、昨年より大規模なリストラ(人員削減)を実施。経営体質や利益率の改善面で先んじてきました。
その結果、年後半に見込まれている景気停滞を乗り越えてナスダック100の業績見通しは底入れから復調が見込まれるようになりました。
図表3は、2020年初を100としたナスダック100指数ベースの予想EPS(一株当たり利益)(12カ月先予想EPSを巡る市場予想平均)とS&P500ベースの予想EPS(同)の推移を示したものです。利上げの累積効果に伴う景況感悪化を乗り越え、S&P500ベースの予想EPSも底入れ感を示していますが、ナスダック100指数ベースの予想EPSは復調傾向をみせています。
株価はPER(株価収益率)とEPSの積で計算されますが、予想EPSの復調傾向は株価の堅調トレンドに追い風となりそうです。
米国市場では当面、地銀の経営破綻に伴う金融不安、くすぶる景気後退観測、6月に向けたリスク要因とされる公的債務上限問題などで株価が上下動を繰り返す可能性があります。
株式相場が下落する局面では、ハイリスク・ハイリターン特性のあるナスダック100指数連動型インデックスファンドや大手テック銘柄で構成される「ビッグ・セブン」への集中分散投資を実践するには良い機会かと考えられます。
「第4次産業革命」の進展を見込みつつ、長期目線を前提に市場平均(S&P500)を上回るパフォーマンスが期待できる分散投資を構築したいと思います。
<図表3>ナスダック100の予想EPSは底入れから復調傾向

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