世界株式の上値は総じて重くなった

 世界市場では、株価が上値の重い動きとなっています。来週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に見送り感が強い中、米地方銀行の経営不安が再燃したことが売り材料となりました。一方で、ユーロ圏の株価は年初来騰落率で優勢となっています。ユーロ圏にはラグジュアリー(高級ブランド)株が多く、相場の堅調をけん引しています(後述)。

 米国市場では第1Q(1-3月期)の決算発表が続いています。S&P500種指数を構成する500社のうち188社が決算を発表した4月26日時点では、売上高総額が前年同期比6.2%増収、純利益総額は同1.3%減益となっています。売上高総額は事前予想平均を2.2%上回り、純利益総額も事前予想平均を6.6%上回るポジティブサプライズ(Bloomberg集計)で株式市場の下支え要因です。

 ただ、エコノミストの予想平均によると、米国の四半期別・実質GDP(国内総生産)成長率は、年後半(第3Qと第4Q)にマイナス成長入りが予想されています。景気後退不安がくすぶる中、当面は個別企業によるネガティブガイダンス(業績見通しの下方修正)が株価を揺らすリスクに警戒を要します。

 図表1は、米国、欧州、日本、世界の株価パフォーマンスを期間別に比較したものです。短期的なブレ(リスク)は避けられないものの、3年前比、5年前比、10年前比の騰落率を振り返ると「長期投資」の効果や意義がみてとれます。

<図表1>内外株式の期間別パフォーマンス比較

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年4月26日)

米国市場のセクター別業績動向をチェック

 S&P500の年初来騰落率が+5.6%に減速した一方、図表2で示したように「11大業種別株価指数」の騰落率をみると好調と不調は濃淡が分かれています(4月26日)。

 年初来騰落率で最も好調な業種のベストスリーは「IT(情報技術)」(アップル、マイクロソフトを含む)、「コミュニケーションサービス」(アルファベット、メタ・プラットフォームズを含む)、「一般消費財・サービス」(アマゾン・ドット・コムを含む)となっており、この3業種の年初来騰落率のみがS&P500を上回っています。

 IT(情報技術)やコミュニケーションサービスの業績は2023年に低調が予想されているものの、2024年には15%を超える前年比増益への回復が見込まれています。一般消費財・サービスの2023年と2024年の予想増減益率をみると、17~18%の増益が続く見通しとなっています。

 一方、2022年に大幅増益を計上した「エネルギー」は、2023年と2024年に連続減益を余儀なくされるとみられています。

 また、銀行株を含む「金融」の2023年の業績は減益(▲7.5%)が予想されています。なお、2023年に最も厳しい減益率が見込まれているのは「不動産」です。商業用不動産市況の低迷に加え、銀行の融資姿勢が厳しくなる(貸し渋りが強くなる)ことが懸念され株価は低調となっています。

 なお、図表2の最下段に示したS&P500ベースの業績を見ると、2023年の減益(▲2.6%)を経て、2024年は二桁増益(+10.1%)への回復が予想されています。2024年の増益転換を本格的に市場が意識し始めると、2023年後半に米国株が復調傾向をたどる可能性が高いと考えています。

<図表2>業種別の増減益率予想には濃淡がある

*予想PERと予想増減益率はBloomberg集計の市場予想平均EPSに基づく
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年4月26月)

世界的なラグジュアリー株が優勢を鮮明に

 今年になってパフォーマンスの堅調が目立ってきているのが欧州を中心とする世界のラグジュアリー(高級ブランド)株です。図表3は、2022年10月初を起点としてS&Pグローバルラグジュアリー株指数とMSCI世界株指数の推移を比較したものです。S&Pグローバルラグジュアリー株指数は24日に年初来高値を更新しました。

 同指数をけん引している銘柄として、欧州のLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(フランス)、エルメス・インターナショナル(フランス)、クリスチャン・ディオール(フランス)、米国のインター・パフュームズやラスベガス・サンズなどが挙げられます。特にLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは株価上昇で世界の時価総額上位10社に食い込んできました。

 こうしたラグジュアリー株堅調の背景となっているのは、中国における経済再開に伴う個人消費支出の回復です。14.2億人超の総人口を抱える中国では富裕層数が増加しており、需要拡大の恩恵を受ける銘柄として高級ブランド株に選別買いが入っているとみられます。

 なお、欧州の主要50社で構成される株価指数のユーロSTOXX50指数やフランスのCAC40指数もラグジュアリー株がけん引して21日に過去最高値を更新しました。3月にはクレディ・スイス・グループの経営不安を受け一時下落しましたが、反転してきました。

 世界の富裕者数はインド(総人口は中国と同様に約14.2億人)でも増加傾向で、高額でも差別化に優れた高級ブランドに対するアジア需要は着実に増加すると予想されています。日本でも資生堂、三越伊勢丹ホールディングス、高島屋などの株価が堅調となっています。内外で旺盛なラグジュアリー需要に注目したいと思います。

<図表3>世界のラグジュアリー株が優勢となっている

 (出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年10月初~2023年4月26日)

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